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今日は皆でお出かけだ。
最近首都で流行りの芝居を見に行くとのことで、俺も誘われたのだ。アルトが席を手配してくれた、10人くらいは入れる2階の広いボックス席で鑑賞できるらしい。
この世界の芝居ってどんな感じだろう?中学生の時、学校から劇団なんちゃらのロングラン作品を観に行くというのがあったが、あれは確かミュージカルだったか。
ビンスタスの中央区にある大きな劇場。入ると天井にはシャンデリアみたいなキラキラしたものがいくつも飾られている。派手だなー。
皆はこういうところは初めてらしく、周りを見回しながら、そろりとアルトの後ろをついていく。
しかし、マイルとアルトが並ぶと目立つな。整った顔立ちがそっくりな上に、今日は上品なデザインの色違いの服。マイルが白で、アルトは緑だ。
「お揃いにしたい!」と駄々をこねるアルトにマイルが折れたらしい。
実は俺たちもいつもと違う服を着ている。こちらも全てアルトが用意してくれたものだ。
メイリンは黒茶のロングヘアーをアップにし、赤のチャイナドレスっぽいものでキリッときめている。
ヒマリは明るい茶髪のツインテールにピンクのリボンを飾り、服もピンクでスカートがふんわり広がってる。
ユアンとジェリコと俺は、髪を整え、紺のスーツ風と言ったらいいのか、所謂フォーマルな感じの服だ。
ジェリコは「わー着慣れないな。」と窮屈そうにしているが、ユアンはちょっと嬉しそうだ。俺は高校の制服もまあ似たような感じだったから、そう窮屈でもない。
皆で3列になっているボックス席の好きなところに座る。女性陣は当然のように最前列を陣取った。
ジェリコ、ユアン、俺は2列目、マイルとアルトは3列目だ。
ストーリーはコメディ仕立てで、恋愛あり笑いあり涙ありの、学生たちにも分かりやすいものだった。
俺も大いに笑って、ユアンなんか笑いで手が震えてジュースをこぼしそうになっていた。
芝居の終りに口上を述べる人が出てきて、朗々と、まるで歌うように語り出した。
「さあ、皆様、本日の公演はお楽しみいただけましたか。とある不運な青年が、本の世界に取り込まれ、言われるままに翻弄されるこの喜劇。剣を手に入れ姫を救い、次の舞台はフィルマルト。さあて何が起きるのか、乞うご期待にございます!」
えっ、アイツは何を言ってるんだ!?
芝居の内容なんかじゃない、これって俺のことじゃないか!
思わず立ち上がり身を乗り出すようにしてステージを見ると、その男は俺を見上げてニヤリと笑った。
あの顔は…あのダンジョンで出会った魔族!?
その瞬間、その姿は普通の男性に変わり、締めの挨拶で観客を笑わせていた。
「エイトさんどうしたんだ。急に立ったりして。ビックリした。」
ジェリコの言葉に、ふっと緊張が解けた。かなり身体が強張っていたらしい。
「ううん、なんでもないんだ。あの口上の人が知り合いにそっくりだったからビックリしたんだ。」
「そうなのね。あー面白かったー。良い感想書けそう。」
メイリンが伸びをして話してる。
「皆、たくさん笑ってお腹が空いただろう。この劇場のレストランを予約しているから食べに行こうね。」
アルトがそう言ってウインクした。うーん、嫌味のない紳士さだ。
とりあえず、今はさっきのことは忘れよう。皆楽しんでいるんだ。俺は皆と一緒にレストランへと向かった。
そのレストランはビュッフェ形式で、好きなものを選んで食べるものだった。
これってほんと性格でるよな。
米と肉ばかり食うジェリコとか、実は麺類好きなんだなと思うユアンとか。メイリンは割とバランス良く食べつつ「もっと緩い服装にすれば良かった…」と言っているし、ヒマリはおかずいろいろをニコニコしながらちまちま食べている。
俺はリゾット、焼いた肉、スープとサラダ。実はオカンが一汁一菜派なので、一度にいろいろな種類を選べなくて、つい定食っぽくなってしまうんだよな。
「エイトさん、この辺りはシーフードですよ。いかがですか?」
おかわりを取りに立った俺に、後ろからマイルが話しかけてくる。
「あ、シーフード良いね。少し取ろうかな。」
魚やエビを見ながら選ぶ俺に、マイルは静かに言った。
「エイトさん、もし疲れているならゆっくり休んでくださいね。僕たちはいつも騒がしくしているから、迷惑になっていたら言ってください。」
俺はマイルを振り返った。
「さっき、少し様子がおかしかったので。無理はしないでください。護衛の依頼のことは気にしないで。」
「マイル、ありがとう。疲れてなんかないし、俺は皆と居て楽しんでるよ。」
「そうなら良かったです。あ、この貝も美味しいですよ。お勧めです。」
「あ、じゃあそれにする。」
マイルの気遣いがありがたかった。
うん、俺は大丈夫だ。
今度はデザートを制覇する!というジェリコとすれ違いながら、俺たちは皆が居るテーブルに戻った。




