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城から戻った俺は、昼食をいただいてから外出することにした。
馬車を捕まえてギルドに寄ってもらい、都市の出入りの門まで乗り、門を抜けて森まで風魔法でひとっ飛び。
森の中でエルフの指輪をはめて、ハクを呼び出した。いつものように空間がぐにゃりと歪み、エルフのユニコーンのダイハクリョクが飛び出してきた。
「ハク〜〜〜。」
でれでれしながら顔を撫でまくり、リンゴやオレンジをいくつもあげる。
ハクはキョロキョロしている。いつもと違うのが気になるみたいだ。最近はずっとシェアハウスのメンバーが一緒にいたからな。
「ああ。今日は皆で移動しないんだよ。久々にふたりだけだ。」
座りこむハクのお腹にもたれかかり、ギルドでもらってきたマップを見る。ビンスタスの中の一覧と、この辺りのダンジョンも載っているものだ。
「おーい、アド。」
『はーい、なんですか』
「お、今日はノリが良いね。なんか良いことでもあった?」
『エイトが浮かれすぎなのでは。久しぶりのおひとり様時間を満喫してるんじゃないのですか?』
「いいじゃん、アドと話したかったんだよ。悪い?」
何故か黙りこむアド。調子に乗りすぎたか?
「ごめんごめん。あのさ、エルフのダンジョンで見つけた奇跡の妙薬を使っちゃったけど、あれで良かったんだよな?」
『別にいいんじゃないですか?それが必要だったなら』
「アドはさ、俺のやることに口を挟まないよな。それって自由にしてくれてるってこと?それともそれすら筋書きなのか?」
『……別にクエストを攻略する以外は、エイトの自由でいいんじゃないですか?』
なんか煮え切らないな。まあアドはいつもこうか。
「ん、分かった。ありがとうアド。」
『どういたしまして』
俺は座りこんだままのハクの背中によじ登って、かばっと抱きついた。あーあたたかくて気持ちいー。
そうだよな、ストーリーはだいぶ進んだ。ドワーフの国に入れる目処までついたんだ。その後、ドラゴン攻略まではそんなに遠くないと思う。
この世界に引きずりこまれて、もう1年近くになるんだろうか。季節の変化が元の世界とは違うので分かり辛いけど。本の中の世界だから、その辺りはいいかげんなものかもしれない。
俺は同じゼミの仲間たちを思い浮かべた。
やつらはもう就活初めてるだろうな、早いやつは内定ももらっただろうか。俺は戻ったらどんな会社に就職するのかなー。
今度は今一緒に旅をしているシェアハウスの面々を思い浮かべた。
彼らは自分たちの未来に向けて、一生懸命行動している。貪欲に勉強し、いつも生き生きとして。俺は学生時代、あんな風じゃなくて、周りに流されてダラダラしてた。
もしかすると、今の経験は俺に必要なもので、これをクリアしたらなんでもできるという自信になるんじゃないだろうか。
「よし、頑張るか。」
その俺のひとりごとに反応して、ハクがぶるると鼻を鳴らした。
「ハク、リンゴもう1個食う?」
ハクにリンゴをあげて、俺もリンゴを皮ごとかじる。
でも今日は、あともうちょっとだけ、ハクとダラダラしていよう。




