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俺はリヴァリエルの皆様と、城の会議室に居た。
ダルメル国王は正妃を伴って現れた。
ぎろり、と鋭い眼光を向けられる。怖いよ〜。
「勇者エイトよ、まずは礼を言う。」
深々と頭を下げてくる王。ええっ、王たる者がそんなに簡単に頭下げていいの?おろおろするが周りは静観している。
「いいえ!恐れ多いことです!」
ばっと頭を下げる俺。とりあえず王に合わせておこう。
「もう、エイト殿が困っているではないですか。本当、あなたは言葉足らずなんですから。」
正妃は呆れたように言い、俺に向き直った。
「エイト殿。この度は第八妃をお救いくださり誠に感謝いたします。マイレウス・リヴァリエルの帰郷にそなたが同行していたこと、奇跡としか言い様がございません。」
正妃に言われて気づいた。そうか、これもこの本の強制力なんだ。俺がここで妙薬を使って彼女を救うこともストーリーの中にあったんだろう。
「いえ、エルティアナ様が助かって本当に良かったです。」
俺がそう言うと、正妃はにっこり笑った。えくぼが可愛い人だな。いかにも優しくてたおやかな感じだ。
「おかげ様で、母子ともに大丈夫だと、医師が申しておりました。後宮を管理する身としても嬉しく思います。」
アルトから聞いたところによると、後宮には50名近く妃が居るそうだ。エルの第八妃というのは順番ではなく、魔導家から嫁ぐ妃は第八妃、と決まっているとのこと。
しかし、これって王も正妃も大変だな…たぶん。
リヴァリエル卿が発言した。
「これでエルティアナ様は半月後には無事に出産されるでしょうな。めでたいことです。」
俺はちらりと向かいに座っているマイルを見た。好きだった女性に子どもが生まれるんだよな。マイルはただ微笑んでいて、アルトもそんなマイルを見ていた。
「こほん…ところで、勇者エイトはマイレウスと旅をしているのだな。」
話にはいる隙を伺っていたらしい、王が話しだした。
「あ、はいそうです。マイル、いやマイレウス様が学業の為にフィルマルト王国に出張されるので、その護衛として雇われております。」
「そうか。予も昔、冒険者と旅をしたことがある。奴の粗暴さに呆れたが、まあ楽しくもあった。」
「そうなのですね。」と相槌を打つ俺。
「ちなみに、今のバルマス国王だ。」
ぶっ!あの気前の良い元冒険者の王様か!国王ネットワーク半端ないな。
思わず咳き込む俺に、正妃はクスクス笑っていた。
「この人はね、貴方が良い事のために来るとイグナに聞いてから、バルマス王にもどんな人物なのか事前に尋ねていたのよ。結構小心者なの。」
「イグナの言う事に間違いは無いが、どんな奴なのかくらい気になるだろう!」
なんだ、ダルメル王は思ったほど怖い人じゃないんだ。
「あの…イグナというのは、イルー島のおばばですよね。俺、しばらく前に会いに行ったんですよ。」
「そうか、会えて良かったな。イグナの葬儀は先日終わったばかりだ。本人の意向でひっそりとだが。」
会うのは最後になると言うのは本当だった。最後まで外さない預言者だったな。
しんみりした俺に、王が語りかけてきた。
「ところでだ。予はそなたに、エルティアナが助かればなんでもすると言った。何でも褒美を取らせよう。何が良い?金か?宝石か?家でも女でも好きなだけ言うがよい。」
王は、言い方が露骨!と正妃に肘鉄くらってた。
うお!痛そう。
「いや…俺は別に……」
そういえばなんでもするとか言ってたな。突然言われても思いつかないし、今は特に欲しいものもないような気がする。
「陛下。恐れながら発言をよろしいでしょうか。」
マイルだ。突然何だ?
「勇者エイトに、ドワーフの国との自由通行証を発行していただけませんか。彼はドワーフの国に行くことを希望していると、前に話しておりました。」
俺は以前、マイルからシェアハウスの決まりを聞いている時に、雑談でそういう話をした。1カ月滞在して、ホロウサやこの国を周り、その後ドワーフの国に行くと。
「ドワーフの国?そんなところへ行きたいのか。」
「ええ、俺はドワーフの国に用事があって、会いたい人もそこにいるはずなのです。」
まだどんな奴かは分からないけど、俺のドラゴン攻略パーティーの仲間になる奴がそこには居るんだ。
「ふむ、ドワーフの国には買い付けの商人しか立ち入らせるなと言ってくるが……分かった。ドワーフの国王に交渉して、特別に通行証を発行するよう取り計らおう。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ああ、旅の帰りに立ち寄ると良い。その時に渡せるようにしておこう。」
やった!これでドワーフの国に大手を振って入れる!神妙な顔をしながら内心めちゃ喜んでいる俺に、王は更に語りかけてきた。
「ところでエイト。お前は酒は好きか?」
「え…あ、はい。そんなには呑めないですけど。」
「そうか!呑めるんだな。実はエルティアナの回復祈念で酒断ちをしておったのだ。では今から病が治った記念の飲酒再開に付き合え。アルティウスもマイレウスもな!」
「あなた!まだ朝ですよ!全く浮かれちゃって何言ってるんだか。」
楽しげに笑う王はまた正妃に肘鉄をくらい、今度はまともに決まったらしく脇腹を押さえて痛そうにプルプルしていた。
隣の席のリヴァリエル卿は俺にこっそり「いつものことです。」とすまして耳打ちしてきたので、もう我慢できずに吹き出してしまった俺につられて、皆笑い声をあげていた。
「エイト殿、申し訳ありません。こう言ってるから今夜少しだけ付き合ってあげてください。」
頭を下げる正妃に快く了承した俺は、その夜笑い上戸な王に、遅くまで付き合わされる羽目になるとはまだ思いもよらなかった。
ちなみにアルトとマイルのふたりは上手く逃げた。裏切り者〜!
リヴァリエルの館に戻る馬車の中で、リヴァリエル卿が俺に尋ねてきた。
「ドワーフの国に会いたい人がいると仰ってましたが、それは黒魔導士のホーデンのことでしょうか?」
ドワーフは魔導士にはなれないから絶対違うけど、誰のことだろう?
「いいえ、違います。ホーデンという人が居るのですか?」
「ええ、ホーデンは相当変わり者でしてね。ありとあらゆる剣の研究をしており、ドワーフの剣作りの技術を知りたいと強引に住み着いているのですよ。もし会ったら、一度戻って報告するように伝えていただけますか?」
なんか面白そうだな。
俺は分かりましたと答え、馬車の窓から見える外の賑やかな光景を見ていた。




