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page.103

「エイトさんは、なんで冒険者になったんですか?」


テントの中でジェリコが問いかけてきた。


いや、俺は普通の大学3年生であって、勇者なのはこの本に引っ張り込まれただけなんだよね。

どうしよう…適当にそれっぽく話しておこうか。


「ジェリコ、俺はな…」


「ぐーーーー」


あれ?ジェリコ、寝てる?寝てるな……

一生懸命それっぽいラノベ的設定考えたのに!


まあ、今日は皆、徒歩移動を頑張ったから。

あの後乗合馬車で次の村へ行って、その後、隣の村までまた歩いて。最後にハクの馬車でここまで移動したんだ。


馬車の中で、ハクの背に飛び乗る為に出力を操れるよう練習した風魔法を使い、皆に風を送って涼んでもらった。なんだかエアコンか扇風機になった気分だ。


「エイトさんの言ってたこと、嘘じゃなかった…疑ってごめんなさい!」


ジェリコが謝ってきたけど、俺も完璧にできるかどうか分からなかったし。万一吹っ飛ばしたらどうしようかと。




なんとなく眠れないのでテントを出て伸びをした。

あれ?マイルがいる。彼もテントから出てきたのか。


明るい月明かりの下、テント傍らの岩の上に腰掛けていたマイルに声をかけた。


「どうした、マイル。眠れないのか?」


マイルは俺の声に少し驚いたようだった。俺はマイルの近くの岩に腰を下ろした。


「エイトさんこそまだ起きてたんですか?明日にはビンスタスに着きますよね。行くのは久しぶりです。」


「帰るのは、じゃないのか?」


「え……」


俺は先日から気になっていたことを聞いてみることにした。


「マイルはもしかして、あのリヴァリエル家に関わりがあるんじゃないのか?俺たちのテントに、個別に長時間の結界を軽々と張れるなんて、本家の血筋の持つ力なんだろ?」


魔道士は生まれつき強い魔力を持つ。

この世界には三大魔導家があり、魔導士は例外なくそのいずれかの家の血を引いている。

そしてビンスタスにあるのがそのひとつのリヴァリエル家だ。


「そうです。僕はリヴァリエルです。あの家を出て10年近く帰っていないですけどね。」


マイルは、ふっと遠くを見るような目をしてから、俺を見て言葉を続ける。10年って13歳の時じゃないか。


「ちょっと居辛くなったので、遠い親類のいたクヌルギで好きな勉強をすることにしたのです。シンラ教授はその親類の友人なんですよ。」


「でも、家を継ぐ必要は無いのか?」


「ああ、それは、双子の兄が継ぐことになっているので、僕はそれなりに自由なんです。まあ、僕がリヴァリエルと言うことは秘密にしているというより、わざわざ吹聴するようなことではないからですね。」


そうなんだ、何か複雑な事情でもあるのかと思ったけどそうでもないのか。


「明日は僕の家に泊まれるよう、一応連絡はしてあります。ゲストハウスとして別館がありますから、皆で数日ゆっくりしましょうか。」


うお!さすが3大名家!別館付きか。


「ありがとう。ここのところ、ほんと宿が見つからないからな。」


「それはエイトさんがひとりで宿泊するからかも。ファミリー用だと意外に空いていたりするんですよ。今度宿を探す時は聞いてみたら?ひとり部屋よりは割高でしょうけどね。」


「なるほど、それは気づかなかった。また旅に出る時は聞いてみるよ。」


しかし三大魔導家か。魔導士と仕事をしたことはあるけど、彼らも本家に行くことはなかなかないと言ってたな。


「マイル、そう言えばセバスチャンって魔導士知ってる?結構高齢で、大魔導士レベルだと思うんだけど。」


「セバスチャン?……いいえ、そんな名前は聞いたことはありませんね。どこの血筋か分かりますか?」


「うーん、いや、分からなければいいんだ。」


ま、いいか。フィルマルト王国に行った時に分かるかもしれないし。



雨がぽつぽつと降りだしてきたこともあり、そろそろ寝ようかと、俺たちはそれぞれのテントに戻った。


明日は雨なんだろうか。一応全員の雨具もあるけど、雨の中を今日みたいに歩くのは無理だな。この世界、日本の梅雨や夏みたいに湿気が強くないのは助かるけど。

まあ起きてから考えるか。


雨粒がテントに当たる音とジェリコのいびきを聞きながら、俺は眠りに落ちるのだった。




起きるとまだ小雨が続いていた。

俺はマイルと相談して、ハクでビンスタスに移動することにした。テントをたたむ前にハクを呼び出す。


「ハクー!おはよー!!」


メイリンたち3人がハクに声をかけながら馬車に乗り込んでいる間に、俺とマイル、ジェリコは手早くテントを畳み馬車に積みこんだ。

この世界の冒険者用テントは、しばらくすると勝手に乾くからほんとに便利だ。


俺は御者に行き先を告げて馬車に乗り込み、皆で軽く朝食を取りながら移動を始めた。


いよいよビンスタスだ。

俺は久しぶりのこの国の首都滞在に、少しワクワクしていた。


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