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朝一にマイルの講義が始まった。
植物学を専攻し、教授の手伝いもしている彼は、朝のこの時間しか咲かない花を見せる為に皆を叩き起こしたという訳だ。
マイルから、このワマカン村のキャンプ場の周りにはたくさんの花が自生しており、珍しい植物もあるとの話は聞いていた。
「エイトさん、僕のブルーのバッグを出していただけますか?」
マイルから預かっているそれを、俺のマジックバッグから出して渡した。彼はそのバッグから太めの試験管のようなボトルを取り出し、そこに生えていた草の一本をそっと入れていた。
なるほど、この大量のボトルはその為だったのか。
…っていや、分からん。
「これは大事なサンプルです!」
真剣な眼差しでマイルは言うが、正直俺にはどの草も全く一緒に見える。
「ま、マイルと旅なんてしたらこうなるわな。」
「私たちはマイルのお仕事に便乗してるだけだもんね。」
「ヒマリはお花好きだから、教えてもらえて嬉しいよ。」
「楽しそうでいいですね。」
皆、口々にそうつぶやきながら、草の入ったボトルを掲げるようにしてキラキラした目で眺めているマイルを温かく見守っていた。
朝は持参したパンとチーズの簡単なサンドイッチに、キャンプ場の担当さんがトマトを差し入れしてくれたので、ジェリコはそれでトマト入り野菜スープを作ってくれた。
「今日はまず、隣の村まで歩いてみよう。1時間くらいだから、皆、大丈夫だよね?」
マイルは皆に地図を見せながら言った。この辺りは風景が良く、いくつかキャンプ場もある。ハクや馬車移動だけではなく、歩いて周囲を観察しようという話だ。
「結構歩くからね。リュックの中に重い物持ってる人いたら俺が預かる。」
そう言ったら、ヒマリのリュックからあのエルフに関する分厚い本が出てきた。
「あの本は図書室に返したから、ヒマリ新しく買ったの。」
「ヒマリったら昨夜も寝るまで読んでたのよ。ほんっとエルフのこと好きよね。」
メイリンの言葉に真っ赤になるヒマリ。あれ、もしかして?
「はい!エイトさん、これ預かっててください!」
何故か勢いよく突き出された本を預かって、俺のマジックバッグに入れておいた。
遠くの山の風景を見たり、川のせせらぎを聞いたり、森の中にある小さな泉の、清涼な水を飲んだり。
森に駆け込んでいって、そこにいたスライムを踏みそうになり悲鳴をあげていたメイリン、なんてこともあった。
目的地にしていたキャンプ場のある村に到着し、そこで休憩を取った。
この辺りは豆の生産が盛んなので、俺はたくさん買っておいた。フライパンで炒るだけで美味いんだよな。ジェリコは豆の粉を眺めながら、何に使えるか悩んでいるようだ。
「ジェリコ、これでお菓子作ってよ。身体に良さそうだし、ジェリコならきっと美味しく作れるから。」
マイルにそう言われて、まんざらでもない様子の顔をしながら彼はこう言った。
「マイルがお腹壊しても、責任持ちませんから。」
あ、これは前にマイルがジェリコに言ったやつだ。思わず吹き出した俺に、メイリンたちはキョトンとしていた。
村の案内板を見に行っていたユアンが戻ってきて言った。
「次のキャンプ地まで周遊の乗合馬車があるようです。それに乗っていきませんか?」
「わぁ、ユアンよく見つけてくれたね。ヒマリ、歩くのはちょっと疲れたから、馬車に乗れるの嬉しい。」
ユアンがちょっと赤くなったのは、馬車が好きだからか、それとも褒められて照れたのか。
乗合馬車の時間まで、事前に決めたオリエンテーションのひとつとして、各自で村の散策をしたのだった。




