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翌朝俺たちは、ユアンの父親にホロウサまで送ってもらった。
彼は馬車の部品づくりや、メンテナンスが仕事で、実は俺たちが乗っているのも、修理が済んだ乗合馬車。このままホロウサの業者に納めに行くらしい。
「それっていいのかな〜。怒られませんか?」
乗っていいよと言われて悩む俺たちに、ユアンの父親は笑いながら言った。
「ちゃんと動くかどうか、乗ってみなきゃ分からん。君たちはいわば実験台だ。」
「えっ!実験台って酷い〜。」とジェリコがおどけてた。
馬車で2時間の道を揺られながら、ユアンは父親の背中をじっと見ていた。
ホロウサの門の前で、ユアンの父親はユアンの頭をぐりぐりと撫でて、俺たちに頭を下げた。
「皆さん、こいつをよろしく頼みます。ユアン、せっかくの機会だ。世界は広いってことを見てこい。俺はこの辺りしか知らんから、帰ってきたらいろいろ教えてくれよ。」
「こちらこそお世話になりました。ユアンと一緒に皆で楽しんで学んできます。」
マイルがそう言い頭を下げたので、皆慌てて同じように頭を下げてた。
馬車は通用門から入ってゆき、降りた俺たちは入場門に並んで順番待ちだ。俺の持つギルドからの依頼状と冒険者登録証を受付に見せて、ホロウサの街中に入った。
「わぁ、街だー。」
「ヒマリ、そりゃそうだよ。」
「あの高い建物なにー?」
初めて見る街の景色にキャッキャしている。
俺がギルドに冒険者登録証の提示をするのにも皆でついてくる。ほんとに引率の先生やってるみたいだ。
ホロウサには何度も来ているので、お勧めのパンケーキ屋に案内した。
俺とマイル、ユアンは甘いのと甘くないパンケーキのセット、メイリンとヒマリ、そしてジェリコは甘い3段重ねのフルーツ添えを注文していた。
「いやーん美味しい!」
「ほんと〜ヒマリこれ好き〜。」
「いやーんジェリコもこれ大好き〜。」
メイリンとヒマリの真似をするジェリコに爆笑する俺たち。どうしても笑いを取りたい性格を抑えられないらしい。メイリンに「女子か!」とバシッと腕を叩かれていた。
この後は皆でホロウサの美術館や、停泊しているクルーズ船の内部を見せてもらった。学生証を見せると無料や割引きして貰える。俺は護衛ということで、依頼状で一緒に入れた。
クルーズ船の中を見ていた時、ふっとイルー島のおばばのことを考えていた。
もう会うことはないと言っていたけど、どうしているだろうか……
もっと見学したかったら帰りに立ち寄ることにして、俺たちはハクにお願いして、今夜過ごす村に移動した。
ここはキャンプ場が併設されている大きめの村だ。
今夜利用するのは俺たちだけらしく、学生グループと知った担当は楽しそうねとニコニコしていた。
日が傾き始める前にと、マイルとジェリコが手際良くテントを張っている間に、ここでバーベキューができると聞いた俺たちは、早速その準備を始めた。
炭や食材を買い、俺が火をおこしている間にもう野菜がカットされ、肉も各自で焼けるように各々の皿に分けられていた。さすがシェアハウスで共同生活している仲間たちは役割分担が実にスムーズだ。
「エイトさん!なんでおにぎり焼いたりしてるの!?」
メイリンが目を丸くしていた。そうか、この世界には焼きおにぎりは無かったっけ。
「美味そうだな、俺も焼こう。」とジェリコが言い、我も我もと焼き網の上がおにぎりだらけに。
炭火で香ばしい焼きおにぎりを食べながら、なんでこの世界には醤油が無いんだ!とちょっと悲しくなる。ああ…あの絶妙な香ばしさよ。皆にも食べさせてあげたい。
キャンプ場のシャワーを利用してから、皆テントで寝る準備をしている。女子は当然ふたりでひとつのテント。
俺たち男子4人はどうするか考えて、今日は俺とユアン、マイルとジェリコに分かれた。
マットに寝転び、微かに揺れる魔石ランプの灯りを見ながら、普段はほとんどしゃべらないユアンが話しかけてきた。
「エイトさん、昨日はありがとうございました。おかげで父と母に出かける挨拶ができました。」
「いやいや、ハクのおかげだし。俺たちもすっかりお世話になっちゃって申し訳なかったな。」
恐縮する俺に、ユアンは笑みを浮かべながら言った。
「お父さんは僕が生まれる前から、ずっと馬車の仕事をしてるんです。僕がちいさい時には、毎日のように街道を走る馬車を一緒に見てました。」
「そうなんだ。ユアンのお父さんは馬車のプロなんだな。」
「はい。だから僕も馬車関係の仕事がしたいなと思って、魔石で走る魔導馬車の研究をしています。それとは違うけど、この旅でエイトさんにハクの馬車に乗せて貰って、とても勉強になってるんです。」
そうか、真剣な顔をして馬車の細部を見ていたのはその為だったのか。
「ユアン、勉強になるならいくらでも見ていいよ。って、俺のじゃないけど。」
「はい、明日もそうさせてもらいます!」
俺は頷いて、そろそろ寝ようかとランプを消した。
どこかで微かに虫の音が聞こえる、涼しい夏の夜だった。




