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断罪された悪役令嬢は契約で国を買い取る ~支配ではなく市場で無双します~  作者: 朝凪ことは


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第23話 価格戦争の開幕

 王都市場は、三日で崩れた。


「半額……?」


 クラリッサの声が、かすれる。


 王都中央取引所の速報。

 触媒価格、四割下落。

 医療結晶、三割下落。

 魔導補助素材、軒並み暴落。


 理由は明白だった。


 ヴェルナー商会が、市場に大量放出したのだ。


「採算は?」


 グラントが、静かに問う。


「度外視でしょう」

「赤字覚悟です」


 私は、数字を見つめる。


 冷静に。

 感情を排して。


「ダンピングですわね」


 予想通り。

 だが、規模が想定以上。


 ヴェルナー商会の資金力は、やはり桁が違う。


「このままでは」


 カイルが、低く言う。


「契約領が揺れます」


 揺れた。


 その日の夕方、最初の書簡が届く。


 リュッカ領。


 封を切る。


 内容は丁寧だが、明確だった。


 ――市場価格が大幅に下落したため、一部契約の見直しを希望する。


 実質、減額要請。


 クラリッサが、唇を噛む。


「裏切り……ですか」


「いいえ」


 私は、首を振る。


「合理的判断です」


 市場価格が半分になれば、契約価格は高く見える。


 揺らぐのは当然。


 その夜、王都。


 レオンハルトは、広い執務室で報告を受けていた。


「在庫放出、第一弾完了」

「市場は完全にこちら主導です」


「良い」


 彼は、ワインを傾ける。


「ヴァルデンはどう動く?」


「まだ反応なし」


「沈黙か」


 彼は、薄く笑う。


「焦っている証拠だ」


 王太子からの使者も来ていた。


「殿下は、迅速な解決を望んでいる」


「当然だ」


 レオンハルトは、即答する。


「王国経済は、私が守る」


 その頃。


 ヴァルデンでは。


 市場価格の変動が、波紋を広げていた。


「南部小領も、問い合わせが増えています」


 グラントが報告する。


「契約破棄の可能性は?」


「ゼロではありません」


 沈黙。


 クラリッサが、珍しく声を荒げた。


「このまま価格を下げるのですか?」

「対抗しないのですか?」


 視線が集まる。


 私は、ゆっくりと首を横に振る。


「下げません」


「ですが――」


「価格は、信用です」


 私は、静かに言う。


「一度下げれば」

「戻すのは難しい」


 レオンハルトは“力”で市場を押している。


 だが、価格戦争は体力勝負。


「耐えられますか」


 クラリッサの声が、わずかに震える。


 私は、帳簿を閉じる。


「三ヶ月」


 全員が、息を呑む。


「三ヶ月なら、耐えられます」


 備蓄。

 固定契約。

 内部留保。


 計算は済んでいる。


「問題は」


 一拍置く。


「三ヶ月の間に、どれだけ“揺らぐか”ですわ」


 翌日。


 王都新聞が一面を飾った。


 ――ヴァルデン商圏、崩壊か。


 市場心理が、さらに悪化する。


 問い合わせが殺到する。


 値下げ要請。

 契約再交渉。

 様子見宣言。


 広場の空気も、どこか重い。


「……不安が、広がっています」


 クラリッサが、小さく言う。


「ええ」


 私は、遠くを見る。


「それが狙いです」


 価格を下げることが目的ではない。


 信用を揺らすこと。


 それが、レオンハルトの戦略。


 そして。


 彼は、まだ本気を出していない。


 その夜、追加の報告が届く。


「ヴェルナー商会、第二弾放出準備中」


 グラントの声が、低く響く。


 価格は、さらに下がる。


 市場は、さらに揺れる。


 クラリッサが、私を見る。


「……怖くありませんか?」


 私は、少しだけ微笑んだ。


「ありますわ」


 正直に答える。


「ですが」


 視線を上げる。


「恐慌は、必ず反動を生みます」


 市場は振り子だ。


 振り切れれば、戻る。


 その瞬間を、待つ。


 だが今は。


 ヴァルデンは、追い込まれているように見えた。


 価格戦争は、まだ始まったばかり。


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