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82一時避難

ケントの空版ニードルシートによる絨毯爆撃により道を生み出し、リーブの咆哮や熱射線により追撃を回避し、どうやら魔素津波の範囲外に逃げる事に成功した様だった。

ところがこの逃げた方向は北東に向けて進んでいたのだがどうやら途中でずれた様で南東の獣人集落に近い方に出てしまった様だった。


ここまで来てしまっては今からクレセントに向かうより獣人の里に立寄って本格的に治療を行ってから移動をした方が良さそうだから進路を南に向けて空版ニードルシートを連発して道を作りながら移動をし、この辺りの魔物なら大したことがないので装甲車で引いて何事もない様に進んだ。

そのお陰でケントも中に入り、みんなの症状を確認することが出来た。

テルトが言うには昔のケントみたいに魔力を流す道が体内に出来てないそうでそこに高濃度の魔素が体内に入り込んでしまった為処理が出来ずに苦しんでいるのではないかとの見解を示してくれ、しかもこの魔素が質が悪く流れにくさも際立ってテルトでは上手く出来なかったそうだ。

車内の狭さも相まって満足に動けず、それにみんなの体力も限界に差し迫っている様なので、ニードルシートをしないで済むくらい開けた所で運転を交換し、全員休んでもらったらあっという間に床に倒れ込みまるで気分は野戦病院にでも来たのかってくらいに呻き声が車内に充満していた。



話し相手もいない中1人寂しく運転していたがさすがに日が落ち暗闇の中の運転では朝からの連戦激務の後では眠気に抗えなくなってきたので、少し車を停めシートを倒しリクライニングで目を閉じ休める事にし、軽く30分程度のつもりで目を閉じたのだが思っている以上に体は疲れていた様で、ドップリと眠ってしまった。


気づいた時にはなぜか俺の膝枕で寝るテルトが居て、硬い床なのにわざわざここで俺にくっついてくるテルトが無性に可愛く思えてしまい、無理に動かすのも可哀想なのでそのまま腿の上にある頭を撫でてテルトが起きるまではこのままいようと心に決めたのだが、おそらくこれは寝たふりしてると思うがそれでもこちらも気にしないふりで、モフモフの耳と金髪の髪を触り続けるうちにいつしかまた眠りの世界に戻るのだった。



翌朝


まだ日も出ないが薄っすらと空が明るくなり始めた頃、ケントは再び目を覚ました。

テルトは相変わらず膝枕で寝ていたがちょっといたずらで、敏感な耳のさらに皮膚の薄い部分に触雷をかなり弱く静電気というよりは低周波治療器波の弱い刺激を送ってみると、電気刺激に無理やり耳の筋肉が動かされピクピクと面白い動きをしているので、面白くなってしまい調子に乗って色々なところにどんな反応が出るのかやってしまった。


朝っぱらから何やってるんだって話だがテルトも起きているだろうに寝たふりして俺のやりたい様になすがままにされている。絶対に起きてるだろうにアタリどころが悪くて悩ましい声を上げてるのにそれでもまだ起きない。

ここまで来たらもう限界に挑戦!


「聞こえてたら我慢してね、みんなに聞こえない様にね」


一声かけ、何をされるのだろうと期待と不安が入り混じったのか頭の上につく狐耳がピクピク動いていたが気にせず左手に魔力を集め、その手をテルトのお尻の辺りに向かわせ、そこから出るモフモフの尻尾を撫で上げながら一気に触雷を危険レベル下げて、それでも低周波治療器最高レベルで魔力と共に流し込んだ。


「ん〜〜〜〜!」


テルトはなんとか絶叫を押し込め耐え切ったと共に体の力が一気に抜け意識を手放してしまった様だ。


先程より明るくなった窓から差し込む外の明かりでも確認できるほどテルトの顔は赤くなって完全に力が抜けきった状態になり、これは調子に乗ってやり過ぎたか?

でも顔はすげ〜幸せそうでこれはこれで良かったのか?

まあいいか。

このまま運転を再開させて早めに獣人の里にお世話になり休憩をさせてもらうとしよう。

再び魔石回路に魔力を流し、なるべく音を出さず車体を揺らさない様にゆっくりと装甲車を動かして、幸い後ろはみんな爆睡状態だし、メガネ君鑑定で状態異常も睡眠ついてるし、気づかれてはいないから気分は完全犯罪達成者のつもりで運転を再開し、低速だった為その日の夕暮れ時には獣人の里にたどり着けた。


結局みんな起きないもんだからノンストップで走らせちゃって、思った以上に速度も出せるところがありなんとか早めにたどり着けた。


ケントはそのまま1人でレオに挨拶し、何人か看護要員をお願いし、村の一角にモバイル三日月亭を設置させて貰い全員の搬送してもらっている間に魔の森で起きた事を報告ししばらくは奥に行かない様に報告をした。


さて後はレオに任せ俺は三日月亭で魔力の流れをチェックさせてもらう事にして治療法を検討するとしよう。

自分の中に入った魔素は感覚としてもったりとして粘りがないのだがヌルヌルしそれでいてまとわりつく様な魔力が血管内を流れている感じがしたが、俺の練る気とは相性が悪いのかもうほとんど俺の中には残っていなかった。

て事はみんなにこの気を流し込めば意外と上手く行っちゃうって事かな?


?いや待てよ朝方似た様な事を既にしてたよな?て事はだテルトの状態を確認すればもう答えが出ているか?

どっちにしろこの異質な魔力は感じることができるから確認は楽だし、テルトの状態を参考にすれば治りを早くできるよね?

そうと決まれば早速やっちゃうか。


三日月亭に運ばれたみんなはいつの間に付いたのか状態異常、睡眠が付いている。

しかしテルトにはついていないが魔素が邪魔するのか起きてこないのでそれならばと再び邪魔してそうな魔素が留まっている位置に気を流し込んで見る。

イメージは手当!

手を当てて気を流し込むことで治った事から付いたという本当か嘘かわからない理由の手当を信じ、頭に位置する魔素に届く様におでこに手を当てて気を流し込むと抵抗もなくスルスルと入っていく。まるで水の様な日本酒を飲んでる様にスルスルと入る感じだったが調子に乗って入れすぎたのかテルトの表情が苦痛に歪んでいる。

まるで二日酔いの様に辛そうな表情だ。

しかしテルトの中に感じる力はテルト本人の魔力、魔素、俺の気がしのぎを削りだんだんと気と魔素が潰し合い、一部魔力が魔素と気を取り込みそれをきっかけに徐々に同化し、三つが一つに混ざり合った頃テルトの目は薄っすらと開いてどうやら成功の様だ。


これで一つの解決策が見つかった様だ。

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