81逃避行
「誰かこいつを運転してくれ直ぐこの場を離れないと囲まれる、俺は上で撃退して道を開く!他の者はバックから回復薬や解毒薬使って不調が解消するか試してくれ」
魔素の津波に飲まれて巨石後中心部に向かう魔物達が続々と魔獣に進化する中、装甲車に魔素中毒で倒れたメンバーを詰め込み急いでこの場の離脱を選択した。
まだ魔物は進化中で直ぐには動かないだろうが留まっていては危険度は上がるだけだろう。ケントが運転しても良かったのだが健康度合い的に少しの不調はあっても唯一の戦力と言っていい状態では屋根に登って襲撃に備えるしか無いだろう。それに進路を阻む木々にも対処が必要だから現状ケントしかその役目をこなせる者は居なかった。
運転はアーネが行ってくれる様で、比較的症状の軽いテルトは回復薬や解毒薬を倒れた者に振りかけたり飲ませたり魔素中毒の対処をしてくれていたが上級まで使っても症状の改善は見込めなかった。
そこでテルトは魔素は魔力の流れを阻害しているかもとそれぞれの魔力チェックを行い検証を始めてくれていた。
その頃屋根の上では石突砲より炸裂弾を精製し無理やり進路上障害物を吹き飛ばし舞い上がった瓦礫が穴を埋め走行の妨げになる物を優先して処理し装甲車の1m近い大型タイヤで乗り越えて歩くよりは早いくらいの速度を確保して帰路についていた。
偶に巨石後に向かうであろう魔物の集団に襲われるも脇差やハサミを飛ばし切り裂き、刺したまま丸ごと回収を行いバックの勝手機能素材解体で使える素材と魔石などに分類して収納していったので、現状は進路さえなんとかなれば脱出は可能な様に思えた。
ところがそう上手くは問屋が卸さない
魔物の襲撃は瞬殺で行けて道作りを優先出来たのだが、魔物の亜種というか魔獣進化個体というか中途半端な強さのが魔素津波の影響で強さを手に入れ調子に乗って襲撃に来始めていた。
その中にはシャドーリーフの面影を残す物やメタルヘッドの様な特徴を持つものが現れ、それらも中途半端な進化途中の様で、意外と弱点と思われるところは晒されたままなので対処は可能であったが、いかんせん数が多い為進路を阻まれてしまい、後ろからも魔獣に進化出来た連中が縄張り争いを始めた様で混沌としてきていた。
仕方なく後方の襲撃に対してリーブの咆哮を中心とした牽制を頼み、ケント自身は速度の上がらない装甲車の前面に出て前を邪魔する障害物達の掃討に入る事にした。地面は凸凹で車内は治療中な事も有って時速は2kmも出せなくなっていて、走行車線上さえなんとかなれば移動は継続して行えたので、装甲車の50m前方に出て出てくる魔獣の掃討と障害物の破壊に重点を置いて進んでいた。
ケントはこの時なぜか調子が良かった。
何やら内から力が湧いてくる様でしかもその力が尽きる事も無さそうなのを感じ、面白くなって出来そうなことの実験を行いながら進んでいた。この時すでに意識は装甲車の警護より出てくる魔獣に新技実験に興味が傾いていたのは否定が出来なかった。
初めは主に近接戦闘の薙刀に力を入れていた。
接近してきた者にはまずは刺突、続いて斬撃、慣れてきたら刺突の精度向上に斬撃の二頭切りなどその技の進化を研究し、いつしか薙刀の湾曲した刃の特徴を活かし敵目の前でも手元で刃の向きを90度変えたり、狭い隙間をこじ開ける様な刺突が完成し刃先の変幻自在な攻撃からいつしか「蛇突」という表記が鑑定画面の技欄に現れていた。狙ったところに刃を入れるその動きはストロークカットの如く相通じるものがある。
他にも突いた後に避けられても戻しながら、関節の内側などを狙ったり、峰で足を払ったり突いた後のおまけ攻撃が「逆噛」その刃の動きは引きながら切るスライドカットの如く。
また偶々出来た横一線の攻撃から「銅薙」なんてのが表れたのでどこまで行けるのかを挑戦し続けたら纏めて3匹胴を横真っ二つまでは持って行けた。その切り揃えられた断面はブラントカットの如く。
これで調子に乗って縦真っ二つは?と動く敵に中々チャンスは巡らず避けられ腕を落とすだけと続いたが、偶々石突で突いて態勢を崩させた時に偶々心臓らしき急所に当たった様で一瞬動きを止める事に成功してこれも「心破打」なんて名前が付き、指圧のツボが見えた気がした。この出来たチャンスを活かし頭から真っ二つに成功して、「墜煎」なんて名前が出ていて、ザックリ上から攻める切り口はチョップカットの如く、頭上でクルクル回転させて振り回してたら「大転斬」なんてのもおまけで名前がついていて、レザーカットの様な鋭い間引きをしていた。なんか一気に馴染んだ切り技がそのまま活かされた戦闘能力を身に付けた様な気がした。
それにこれは遠隔操作可能な脇差達にも適応された様で、刀達がまるで踊る様に宙を舞っては技を繰り出し、技に名前が付いたことでこちらもイメージしやすく指示も一瞬の思考で出来るのでこれはこれで良いものを発見出来た。
さて殲滅速度は上がったがそれ以上に巨石の跡地より湧き上がる魔素に群がって集まる魔物達の方が多くて進行速度は落ちてきてしまった。何度か後ろを掃討し、リーブも「熱射線」なんて人型のままドラゴンブレスをぶっ放していたがそれでも集まる速度が速くじりじりと詰め寄られていた。
さすがにここまで来ると個人技よりは大規模に魔法で行くしかなくなってきたがまともな広範囲魔法ってケント自体は持っていなかった。複数にダメージを与える事は出来てもこれだけ包囲をされてきた状況で使えるのは無かったがそうは言ってられない。リーブもいるが直進性が強いしこの場では不向きで、向いているテルトは中で治療中でこちらを手伝わせるわけにはいかない。
こうなったらアイデアで今あるので対応しよう。
まずは後方の接近に向けて手持ちで使えそうなのはラインランスとニードルシートかな?
でもこの二つは普通に使っても進行速度を遅くするだけしか出来そうもない…
でも簡易防御陣の馬防柵の様にラインランスの櫛歯を斜めに突き出して刺さった魔物を壁にして進撃速度を落とさせよう。そうすれば左右に振りながら後方に多重に仕掛ければ時間は稼げるだろう。
5m幅程のところに45度程の角度で魔物が来た瞬間に撃ち込むと、何匹かが掛かり一時的に壁の役割が出来た。続いて左、右、中、右、左、と適度に散らしながら壁を作り、生き残りも壁に阻まれ細い通路に集めることで混雑を作り後方からの追撃は一旦速度を遅らせることに成功した。
対して前方は森が深く木々に進路を阻まれ始めた。
こればかりは車幅を維持できるだけのところで良いので必要最低限だけ吹き飛ばしていたが道が狭いのでどうしても速度が出なくなってしまった。これはせっかく後ろを足止めしたのに前で阻まれては意味がなくなってしまう。
リーブの熱射線を使ってもまだ細く対して役には立たない。
ケントの魔法もウォーターラインズでは貫通力はあるが道を作れない、ジェットウインドも強風では大木を飛ばせない…ニードルシートも木を無くしても土の杭が残ってしまう…
適したものがない…
まてよ…杭が残る欠点なら逆からやったらどうなるんだ?
この場合範囲的に向きそうなのはニードルシートの方だしこれを地面じゃなく空からやったら…
物は試しだ!
ニードルシート!
空中から空気で作られた杭が現れた!
一つの場所に20本それが5行20列100の穴に20本づつ合計2000本が空中に浮いていた。
これが一箇所1本づつ撃ち出されまるで絨毯爆撃の様に空気の杭が地面に刺さりその爆風圧で障害物を吹き飛ばして荒地を耕していった。
でも勢い的には沢山のガトリング砲の空から乱射に近そうだが各穴20本落とし終わった頃には綺麗に耕された道が出来ていた。これで装甲車は速度を上げ離脱速度を確保し、後方の柵も生きて魔獣進化種からの追撃は回避する事に成功出来た様だった。




