55実は研究家?
「お前も体が疲れてるはずだ。もう少し休んでていいぞ。私はその間調べ物があるからな」
テルト達3人をベットに寝かせて暇を持て余しているとトルアがそう声をかけてきた。
しかし目が冴えていて何かしてないと落ち着かないのだ。
そこでトルアの調べ物を覗くことにした。
「お前も気になるのか?これはかなり昔の時代の古文書だな。これを解読すれば馬鹿共の研究がわかるのでは無いかなとな調べているのだよ。ほれ暇なら眺めてみるといい」
トルアは無造作に一冊の本を投げてよこした。
投げて寄越されても俺字が読めるのか?
表紙の文字は擦れてわからなかったがペラペラとめくってみると…「こっこれは…」
なぜか読めて頭に入ってきた。
そこには魔法の原理とは違う事が色々書かれている。
その形態は俺もよく知っているもので自然現象とか自然科学と呼ばれる内容だった。
「これ…俺知ってる」
「何!?お前私にもわかるように説明してくれないか!」
トルアが血相を変えて近づき胸ぐらを掴まれ詰め寄られてしまった。
「これは魔法が無い世界で起きた現象をずっと観察して、何をしたら必ず起こるかを纏めたものですね」
「魔法が無いだと!?しかしこれなどは大魔法を行使したような絵では無いか!」
「それはですね。この火種に横から回転するように風が流れると火は上昇気流って空気を上に上げる性質があってそこに風が流れて回転すると火の竜巻になっちゃうんですよ」
「なんだと!?では下級の火の魔法と風の魔法を駆使すれば、火の上級魔法が生み出せてしまうということか!!」
「そうなりますね」
「ではここに載っている上級魔法は伝承が途絶えて再現不能な物もお前の知識で再現が出来るのか?」
「俺が出来るかはわかりませんよ。でも知っていることで効率を上げることは出来るかもしれませんよ」
「何か試してくれないか?」
「それじゃ〜ここに水の入った桶を用意してここに超高温に熱した物を中に入れると『ドーン』水蒸気爆発って爆発現象を起こせます」
「素晴らしい!!長年の悩みが消えるようだ。もっと読み解いて教えて欲しい!」
トルアが勉強の鬼に変体したようだ。
科学って結局たくさんのデータ収集で見つかった共通点だから、それが取り込めれば効率はいいのだろうけど…
俺、なんとなくでしか知らないのも多いよ?
それでもお構いなく、トルアが気になるものを次から次へと…
でもこれ見てて魔法で自然の力を取り入れてやればすごいのが出来そうな気がしてきたから、ついでに魔導の書庫に暗記させていった。
それでも俺の能力を解明するような事は見つからなかったんだ。
なんでこの世界に連れてこられたのか。帰る方法はあるのかなどは見つからなかったんだ。
やっぱりタイムマシンとか載っていれば近い内容で何かわかるかと思ったけどそんなのはなかったね。
もちろんハサミを空飛ばして切るなんてどんな力で成り立ってるのかさっぱりわからないよ。
ま〜そんな悩みを悟られる事なく、興奮したトルアの声でテルトが起きてきた。
そこからは3人でトルアが疑問を持ったものを俺が解説して、テルトが再現を繰り返していった。
テルトもそのおかげで炎が蒼炎にランクアップ、風を操って雷を発生、土を細かく見極めてメタル状の岩を生み出したりと4属性の上級を操るまで力を戻してきた。
これによりテルトの尻尾は5本になった。
前は4属性の下位と上位の8本と無属性で9本あったが4属性の統合と無属性の5本に進化したようだ。
「お前はあれだけ魔法に詳しいなら転移とかも出来るのではないか?」
「いやいやそれはさすがに無理でしょう。例えば普通この部屋に入るとしてドアを開けますよね。それで向こうのドアを開けて次の部屋に行くのですが転移ってのは最初のドアを開けたら部屋を飛ばして次のドアが開いちゃうみたいなのが転移じゃないですか?魔法陣のはダンジョン脱出で使ったけど俺にはそれ作れませんよ」
「それなら召喚の原理を逆手に取り開いた扉を通って別の場所の入口を開けて移動すれば転移したって事になるのか!?なるほど興味深い試してみよう」
「それ出来たら便利よねぇ〜私もやりたいわぁ〜」
「そうだね。それ出来たらいいよね」
「それより次だ!答えが見えた事は置いといて次の疑問だ!」
困りました。完全に火がついてるようです。
ま〜検証過程で新しく使えそうな魔法は見つかったんだけど、結局は魔素を集合させて具現化させてそれが溜まると魔石になり高純度の魔玉が生まれる。
魔石や魔玉が媒体になればいろいろ使えるらしい事もわかった。
今回はテルトがかなり力を戻せたようだ。
まだ倒れている二人も胎内持っている魔玉の純度が上がったようだ。
俺自身も飲み込んだ2つの魔玉(分類的には魔玉になった)が統合されより魔力へスムーズに変換がなされ効率よく自然現象の再現が出来るようになっていた。
その1つがサイクロンとダウンバースト。ドライヤーの発想で2つの強風が再現できそうだ。
これをきっかけに雷雲が呼べるようになるのかな?
「おい!この兵器の原理はお前はわかるのか?」
ちょっと待てトルア!
こんなもんどこから探してきたんだ!
というかなんでこんなもんが古文書として残ってんだよ!?
せめて最低限銃が先だろう。
なんで飛び越えてレールガンなんぞが存在するんだよ!
いやここだからこそ再現は可能か?
魔法で雷が生み出せれば電流が作り出せる。
それなら電源装置無く運用が可能って事か?
これは研究の余地があるな。
そのためには材料を集めないと…。
「トルアどこか希少鉱石取れるところ知らないか?」
「それなら王国の北の山脈地帯になるね。この神樹の根にもたまに絡むけど大した事ないね。あとはキングランドワームの生息地に行く手もあるよ。今のお前なら平気だろう」
確かに…この世界いきなりで倒していろいろ鉱石仕入れたからなそれも面白そうだな。
「どこにあるんだ?」
「ここから南の石切場のさらに奥だね湿地帯とまではいかないけど少し足場は悪いね。あとは少ないけど大森林の東の平原地帯だね」
なるほどどうせなら遭遇率が高そうな方がいいもんな。南に行って石切場でついでに建築用の石も切り出すか。
ちょっとした目標が出来たから生き甲斐が増したね。
古文書に載ってる科学の再現とか面白そうだしね。
二人が目覚めるまでは魔導の書庫に覚えさせて俺自身でも研究しとかないとね。




