56不穏な影
トルアの元でひたすら研究を重ね魔法の開発を行い、いつの間にかほとんどの書物を制覇していた。
そのお陰か実際に研究をして確かめる作業に移り始めていた。
その一端で素材集めが重要になり、希少鉱石採掘のために南部の石切場付近のキングランドワームを狩猟し消化できなかった腹の中の物を頂いてしまおうとなったのだった。
「それじゃトルアもう行くな」
「ああ。またいつでも来いよ」
「トルア楽しかったわぁ〜また会いましょうねぇ〜」
トルアに別れの挨拶をして歩こうと思ったが結構神樹の周りは間伐されていて木の間隔が広いからバギーを出す事にした。
「ちょっと待て!これはなんだ?」
あっ忘れてたトルアに食いつかれた。
メカフェチになりつつあるトルアにこんなの見せたら興味持たれるよね目が爛々と輝いているしこれは長くなりそうだ。
バギーをトルアに説明するために1時間出発が遅れるのだった。
「ではこれはクレセントって開拓村でゴルドというものが作れるのだな?」
「作れるけど俺が乗って結果を報告して改良するからまだ試作品だよこれでも」
「むむむでは手に入らぬのか(ショボーん)」
物凄い落胆…
ちょっと可哀想になってきた。
「鉱石集め終わったらクレセントに帰るから、その時に話をしとくからさ」
その一言でトルアの目の色が変わった。まずい事言ったか?
まーその辺りは考えないようにしておこう。
再度別れを告げてバギーで出発するのだった。
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バギーは順調に南下をして、森林地帯を抜けると海が見えてきて平地が現れた。どうやらここは半島の様な形状をしているのかもしれない。クレセント方面の海は少々波も高かったのだが、こっちの神樹方面は波も穏やかで遠くに走る船がたくさん見えていた。
中には帆船の帆が一枚の紋章になってる様な貴族が乗っていそうな豪華な船が近くを航行していた。
方向的には神樹の方に向かっていそうだがそこまでして神樹に連れて行き聖女の認定を取りたいのだろうか?
確かにあの結界は実力がないと突破出来ない仕組みらしいがそこまでして聖女になりたいものなのだろうか?
宗教狂いが集まった正教国なるものは有るらしいが自派閥の囲い込みなのだろう。
何か厄介な問題に巻き込まれそうだからなるべく関わらない方が良いのかな?
それでも上まで登っちゃったしトルアに出会ってしまったし、どっぷり浸かってしまってる気もするが当分はばれない様にした方が良いよね?
いやそうしよう。
思考の迷路に突入し自分の世界に入っていると平地はだんだん狭まり行く手左手側に切り立った崖が見えてきた。
まだまだ距離は有りそうだが目標が見えてきたのは喜ばしいがバギーで進める道もここで終わってしまった。
一旦徒歩になり険しい斜面を徒歩で登り始め、軽く登山をしている様な感じで段差が多くなかなか骨が折れそうな道であるが標高にして200m位を登る程度なのだが登っては降り登っては降りを繰り返す羽目になっている。
一旦降りれば海に面した入江の様な場所に出たりはするのだが、何もないのである。使い様によっては隠れプライベートビーチに使えそんなところばかりだが、バカンスは諦めて延々と徒歩にて移動優先している。こんな時に船でもあればよかったと思ってしまった。
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石切場と思わしき場所まで後少しのところまで届いて今夜は夜営を山と言うには低いが山の稜線で平らな所に小屋を出して、のんびり過ごせていた。
ここからの眺めはかなり良く夜でも船の松明の明かりが見えて暗闇の中でも星と松明の明かりがキラキラしていて心が癒され見ていて飽きない。
よく見れば海の反対側に光が集中して輝きを放っている場所もある。
そこは海を挟んで反対側に街が有るのかと思われるが今は関係ない。
この景色の1つのアクセントくらいに思って眺めていよう。
夜も更け辺りに静寂が訪れていたのだが、時折悲鳴の様なものが届いてきた。それは風の向きがコロコロ変わっているので特定の方向の風になった時だけ届いた様だ。
「ケント様いかがいたしますか?」
「今からじゃどちらにしろ見つけられないかもしれないよね?」
「では子蜘蛛に先行して情報を集めさせて、我々は明日動くと致しますか?」
「それしかないよね…でも気になるよね」
谷の合間に強風が吹き込んでその様に聞こえるだけとも思っていたが、なぜか全員気になって起きてしまったのである。
しかし気になったところでこんな時間では動くだけ危険なので、結局は子蜘蛛に探索とテルトに風魔法で音を遮断してもらい、その日は床に着いたのであった。
翌日子蜘蛛からの情報で石切場側の入江に船着場を発見した様なのでその場に向かうことになった。
距離的には徒歩でも夕方には着きそうなので、先に石切場を見てから船着場を目指しそこで夜営をすることにした。
相変わらずの歩きの中だがさすがに慣れてきた様で全員ペースが上がっても平気でついてこれる様になっていた。
そのおかげもあって昼頃には石切場につけたのだがここは命綱一本でぶら下がりノミと金槌で少しづつ削っては切れ込みを入れてある程度の大きさに切り出してから下に降ろし、下ではさらに切り出してから正方形に整えて船に積み込んでいる様であった。
もちろんこんな仕事をさせられるのは奴隷の様で危険な場所で作業させ、たとえ落ちてもそのまま死ぬまで放置している様だ。
石切場の脇には掘建小屋があるのだがそこは監視の兵士と思われる者が住んでいて、その後ろの洞窟に奴隷たちが住んで居そうなのだが落ちた者たちは皆反対の窪地に捨てられる様に重なって呻き声を上げているのであった。
「昨日のはこれっぽいな」
「ちょっと残酷だけどどうにもできないわねぇ〜」
「誰かきたの。隠れた方が良いと思うの」
すると石切場の上部に居たのだが、ここまで見回りと思わしき二人組が話をしながら近くを通って行った。
「まったく砦作るのに石もってこいなんてあの王様の一声でこんな所に送り込まれちまって退屈でしょうがないぜ」
「お前またそれかよ。聞き飽きたぞその話は。」
「いくら奴隷とはいえ使い捨てだぞそれで動けない奴は魔物から逃げるときの餌で生かしたまま捨てないといけないんだぞ。こっちの頭がおかしくなっちまうよ。」
「それを言ったらそうなんだが神に逆らう無法者なんだろ?しょうがないんじゃないのか」
「昔はそうだったが今じゃ上に逆らったやつが奴隷送りだとよ。教会幹部に都合悪いこと言う連中はそれだけで過酷な現場送りだとよ聖教国の一部らしいがひでぇ〜連中がいたもんだ。」
見回りの兵士は聞いていて気分の悪い話を平気でしながら巡回コースを去って行った。
予想外に癌は公権力。そこがダメだから末端の人達に出来ることは何もない。俺たちは無言でその場を去るのだった。




