38開拓村先行隊
「ケント早速ですまんがどこまで調べたか教えてくれないか?」
「なんか嫌な予感するから帰っていいか?」
「何を言う!探査距離と内容によって報酬が決まるのだからそこは依頼のうちと思って報告をしてくれ」
スルピーノさんの剣幕に圧され仕方なく1m四方くらいの紙をもらいメガネに行った範囲の地図を大体の縮尺で合わせて、メガネに表示された地図をなぞる様に川など主だった部分を書いていった。
そこに途中出会った魔物と危険度の高そうな魔獣を見かけた辺りを記入し自生の植物なども入れて仕上げていった。
ここは森があってここを向けると平地が続くが川が二本あって渡るには段差があってこの上流はカニとザリガニが対決してて、後はこの方向にいた虎の魔獣はかなり強そうで、この辺りに沼があって、崖も存在してこれを回り込んでるうちにここの平地を見つけたと。
こんなところかな?
「スルピーノさんこのくらいでいいか?」
「………」
なぜか絶句して固まっているスルピーノさん。仕方ないのでもう一度声をかけることにした。
「お〜〜い!聞こえてる?」
すると再起動したのか目をパチクリして動き出した。
「ちょっと時間をくれ!その間に素材買取あるなら先に出してもらってもいいぞ。 おい!誰かいるか?」
慌てて動き出したスルピーノさんは職員を呼びつけ何やら指示して職員は走り去っていった。
そこで素材を出そうとしたがバックがなかった…
諦めておとなしく待つ事1分。
バターン!
突如扉が蹴り飛ばしたように勢いよく開き、入ってきたのは案の定カイル様だった。
はぁ〜これで面倒ごと押し付けられるの確定かな?
カイル様は軽く挨拶して、早速俺が書いた地図を覗き込んだ。
しばし2人は何やら話し込んだ後俺に問いかけてきた。
「ケント、実際に見てきたものとして新たに開拓村を作るならどこが良いと思う?」
「私はここがいいと思うのだが」
示してきたのは川の中洲
確かにそこでもいいとは思うが一度大雨が降り川が氾濫すれば被害は大きいだろう。
しかも上流はカニとザリガニが大量にいたのだ。
いくら海沿いで魔物が弱いとはいえリスクがでかいだろう。
しかし橋をかける都合を考えれば1つの拠点としては使えると思うがそれには金がかかるだろう…
カイル様とスルピーノさんは俺の中洲の危険性の考えを聞いてまた悩みだした。
2人の世界に入ってしまってるので、せっかく作った地図を見ながら俺が住む予定の場所周辺を眺めていた。
その様子を見ていたお茶を持ってきた職員が何気無く聞いてきたので、つい懐かしい雰囲気があって住む予定地だからとつぶやいてしまった。
ガバッ!
音がしそうなほど急激に後ろへ振り向いた2人は詰め寄ってきた。
「カイル様1つの懸念が消えましたな。」
「そうだなスルピーノそこまで行くなら馬車の休憩所程度で構いな。であればケント!その方すぐ行くのか?2日またぬか?
いや1日時間をくれぬか?お前の護衛で人を運んでくれまいか?」
「いや〜普通の馬車ならたどり着けませんよ?」
「土地の調査官を派遣して拠点となるギルドを作ってそこに集う冒険者向けに商売する者を集めようと考えていたのだがどうだ?」
ふむ〜ギルドがくる分には楽になって良いのだが誰が面倒見るの?俺?いやいやいやそんなに面倒な事やらないよ?
もうぶっちゃっけるか?ま〜ゴルドが付いてくる事は伝えないといけないし大人数では困る事を言わないといけないし、自給自足な旅は確実だからその事を伝えると、わかってくれたようだがそれでも早急な輸送路を作るとかで先にキャンプ地が欲しいらしく、そこに来る商人や宿屋などの警護を依頼されてしまった。
そうなると家開けて探検できないじゃん…やはり他で護衛を雇って貰おう。
俺は縛られたくない!自由が欲しいんだ!
言い合う事数分
「では先遣隊として護衛の騎士5人ギルド管理者2人冒険者1グループと宿屋食堂従業員で8人ほど農業者4人を先遣隊として護衛道案内という事で良いか?」
「冒険者はおそらく今売り出し中の者を当てようと思うがケントには良くしてくれる連中だろう。そこは心配しなくて良いのを選ぶから安心しろ。荷物もお前が運べるなら人の移動用馬車だけで済む」
「は〜。ま〜しょうがないですね…馬車だと5日の行程ですか…ストレス溜まりそう…」
最後は妥協に妥協を重ね、時空バックの情報を二人だけに公表し荷物分の馬車を無くさせて、人の移動だけと移動する人の護衛は騎士がメインとする事で話がついた。俺はぐったりとしてギルドを後にするのであった。
その後ガックリ肩を落としたまま歩きゴルドの家の前に着くと…
「ケントぉ〜増えちゃったぁ〜」
そう言ってテルトと共に出てきたのは雑貨屋のマーサだった。
どうやら開発され過ぎて素材の生息地が潰されて売り物が作れなくなったらしい。
ここに居ても生活出来ないならとゴルドの引越し姿を見て自分もとなったらしい。
ま〜マーサさんなら良いか〜
こっちも連れて行く人数説明したらま〜そうなるよねって納得してたし…
ただ出発が1日延びたので寝具だけ出してゴルドの家でお泊りになったので、ついでにちょっとした改造道具の製造を頼んでおいた。みんな荷造りと仕事で忙しくしているので、その間に暇な俺はレホの村周辺の大森林内にある立派な木を回収していった。
こちらの木は間伐されてないが切って問題ない物が多い。それを上手く利用してどんどん木を集めていき何事もなくその日を終えた。
翌日
この時空バックってどこまで入るんだろう…ちょっと怖くなってきた…
ギルドに行ったら脇に山積みの荷物が置いてあった。馬車でいけば30台分くらいはあったのではなかろうか?
なぜかそれら建設資材や当面の食料などの大量に積まれていた物をいれて行ったのだが入ってしまった。
というかこんなにどこから用意したんだ?
ま〜そのおかげで移動用の馬車が2つだけで済んだから良いけどさ〜
その移動用馬車もゴルドに昨日頼んだ物で改造してもらって、風魔石擬似エアサス入りにしてもらい車軸の回転を良くするベアリングなんて物を作って貰った。この為衝撃は少ないし少し浮いた状態にしたらしいから軽くできたみたいで、スムーズに動くし馬の負担が少ないから移動も楽になるかな?
そんな事を考えている間に出発準備が整っているのだがまだ出発が出来ない…
まだ冒険者が来ないのだ…
スルピーノさんもさすがに気になったのか先ほど探しに行っていた。
いまだに誰が来るか知らないし、口振り的には知っている人っぽいけど誰だろう?
考えていても仕方ないので騎士の人達と打ち合わせでもしようかね?
今回は全員馬車で騎士が操縦してくれるそうだから、俺たちは1台目に乗り道案内兼警戒役らしい。
もし魔物が接近したら馬車を止め冒険者と迎撃に向かい、村人警護は騎士が受け持つと役割分担で行くそうだ。
「いや〜スマンスマン。準備がなかなか終わらなくて」
「ちょっと〜それ私のせいだって言うつもり?」
どこかで聞き覚えのあるような声に振り向くとそこには、ジャックとシャロルさらにはダンジョンから救出した元冒険者の女の子が何人かいた。
ま〜なんというかなんも言えない…
若干眩暈を覚えながら挨拶をして馬車に乗り込み、ゴタゴタのままお目付役を伴って開拓村へと旅が始まるのだった。




