39実地訓練
「ケントすまんな。この子らのリハビリ兼ねて実地訓練を頼まれちまってな〜お前も顔ぐらいは見た事があるだろう?」
「それでこの子達紹介しとくわね。兎人のラート索敵が得意だわ。次に鳥人のフラウ一撃離脱が好きかしら?この子は猫人のアメリ。手数を稼ぐタイプね。こっちが狼人のミルでリーダータイプね」
ジャックとシャロルから一通り紹介を受け急いで準備をさせてる間に少し雑談。
この子達は苗床からの救助者で元々冒険者をしていてのだが、あのダンジョンに食われてから、その後は自由のない拘束が続いていたが、期間が短かったので復帰は早かったのだ。
まだトラウマはあるかもしれないが今回は俺たちもいるし騎士がいるから、スピードタイプのメンバーでもサポート的になら大丈夫だろうと連れてきたそうだ。
そうこうして雑談しているうちに女の子達の準備は終わったようで早速出発となった。
カイル様やスルピーノの他に見知った顔が数人挨拶に訪れて、みんなに手を振りながら出発したのだがあまりにも軽く馬車が動き出したのでみんな勢いよくすっこけた。
騎士も思った以上に速度が出て驚いているが、皆の席の惨状は見なかった事にした様だ。
そう言えば改造したの伝えるの忘れてた…
まあいいか。
ま〜乗り心地が違うからなんとなくわかっているだろうけど一応ね。
後ろの馬車にも大声で改造して速度が出やすいから気をつけてと伝えたがそれでも数人ひっくり返っていたのは見なかった事にしよう。多少頭は打っただろうが怪我人はいなかったって事でいいかな?それよりみんな馬車の挙動に興味を持ってる様で気にしてる人いないからもう俺は責任放棄で構わないでしょう?
馬車の静かさに比べて中は盛り上がっていていつの間にか村を出て大森林を南下し、ある程度進むと道幅が狭くなってきた。
俺たちが作って進んだ道では馬車の荷台には少し狭かったようである。
仕方なく俺はハサミで障害物を切り刻み、進路上の地面に対してはテルトが魔法で吹き飛ばしたり沈めたり、アーネが落ちてくる枝などを除去して速度は落ちながらも順調に進んだ。
その分俺たち3人の魔物への警戒が落ちていたのだが、ラートがその耳で音を捉え、ミルがその都度出てきた魔物に仲間を指揮をして、自分も突っ込みながら処理をしてくれていた。
開けた場所ではフラウが一撃離脱で捕まえてきて、複数の時はアメリが一人で掛け持ち気を引いて、なかなか良い連携して対処できてるようだ。
少し手こずるかと思うような魔物へはジャックかシャロルが同行していたので問題なさそうだ。
これならこっちは進路にかかりきりになれるだろう。
伐採に集中出来たことで速度が上がり思っていたより早く大森林を抜けれ、その先にある山岳地帯は手間が掛かるため、避けるために一度海岸方面の平地に舵を切り途中の休憩を入れつつ順調に旅は進んだ。
平地に入ると俺達はやる事が減ったので会話が弾み、夜をどうするかが主に身近な2人から出てきて、これだけの人数分のテントを毎日立ててとかしたら時間の無駄ではないかと…
どうせ向こうで宿屋作るなら作っちゃえばと…
確かに宿屋作っちゃえば、色々と休憩のたびに面倒な事がなくなる分移動距離が伸びるよね…
ふむ〜
なるほど
やっちゃうか〜
次の休憩で早速宿屋関係の人を集めて意見を聞きジャックとシャロルにも冒険者サイドからの意見も聞いてもらって、その間に1人部屋サイズ2人部屋サイズと大部屋サイズをサンプルで作ってみた。
実物を見るとこんなにいらないとかここは大きくなどが出てきて最後は宿の責任者になるウォルトさんの意見で二階建て一階は食堂と従業員控え室。二階に2人部屋4、1人部屋8、大部屋2
という事になったのでギルドの2人、ホウロと受付のエリスはそれぞれ個室。
農業の2夫婦はそれぞれ2人部屋、騎士団と冒険者は大部屋、宿の従業員は一階に宿泊部屋が用意されているのでそちらに、マーサさんは個室でゴルド、ロレッタは2人部屋、ジャックとシャロルは意外に2人部屋となった。この2人付き合ってたんだね。今更ながら知らなかったよ。
俺たちは自分達の小屋を使う事になったが食事などは一緒に食堂で取ることになり、夜の見張りは騎士団と冒険者、俺たちで交代で行うという事で細かいことまで決めて行った。
この日はこのまま色々と準備をしたいとの事で宿を時空バックに出したり入れたり、荷物を置いたままどうなるかを実験して食堂の準備がてら鍋などの荷解きをしてバックにしまう事による影響を調べたが特には影響はなさそうで、今日の夜には厨房を使えるようにしようと全員が協力して手伝いをした。
ある程度の荷物が出し終わると整理は宿スタッフに任せて、護衛の担当グループが今度は建物が大きいから見張りをする人数増やさないといけないんじゃないかと話が始まっていた。
そこで宿の屋上に見張り小屋を作って見張り2人と一階で食堂待機して連絡受けたら飛び出せる様にする方とで別れることになった。
一階と見張り小屋の通信手段には伝声管の仕組みを取り入れチャチャっとゴルドに作ってもらった。
この仕組みはさっそく効果を発揮した。
初めの見張りは体力自慢の騎士達が担当。正確には食事準備には騎士達の仕事が無かったから誰も言わずに担当してくれていた、日も落ち始め視界が悪かったのだが、見張りが何か気になったものがあったらしく一階の待機組に確認を頼んでいた。
一階の確認部隊で騎士2名が指示を受けた方に向かって行った。どうやら確認部隊は猫科の魔物を発見した様で、すぐに見張りに合図を送り、見張りは伝声管で迎撃に追加依頼を出し、それを受け冒険者達も応援に入るという連携が取れていた。
所々魔物が寄って来てはいるようだがこの警戒方法は良いのかもしれない。
普通の馬車なら1日目の宿営地にだいたいこの場所がなるだろうから物見櫓でも作って置いておくか。俺達は建設の都合で早めに止まったから位置的にはちょうど良さそうだから目印にもなって旅する人が楽になるだろう。
ダンジョンから出てからこんな建設が出来るようになったという事になってるからおまけで作っておくとしよう。あっでも夕食出来ちゃったか〜明日の出発前にでも作るか。
今日の夕食はみんな保存食じゃなく温かい物が食べられた事であっという間に食べ終わって、初日の緊張なのかすぐにそれぞれ部屋に戻り夜を過ごしたようだ。
俺たちは離れだからみんなが何をして過ごしたのかは知らない。
部屋の壁は厚めにしておいたから隣に迷惑をかけることはないだろうが、どの部屋も早々灯が消えたのは、旅で疲れて眠りに着いたのだろう。
寝たよな?寝たんだよな?運動してないよな?
「ケント。お前魔物の気配はどこまで探せる」
騎士の見張りの後に俺たちが担当して、その次の見張りに冒険者グループでやってきたジャックが問いかけてきた。
どうやら4人の探知力を測定したいようで、気付いても黙っててくれと頼まれて、そのかわりどうにも危険と判断した時は手伝ってくれと言われた。
裏取引も気づかれず無事に交代してしばらく様子を見たが、気配では無く夜目を活用して探査してるようでボロが出ない。さすが獣人。人には無い能力がある様だがこれじゃあつまらない。
ちょっと悪戯してみるか…
殺気を見張り台に向け飛ばしてみた。
ジャックとシャロルが飛び起きてきた。
見張り台からの反応は………無かった…
慌てて出てきた2人だったが俺の意図に気付いて協力して黙っててくれた。
音に反応してラートはすぐに反応出来るだろうが夜目はさほど効いてない。
フラウは梟の鳥人でアメリは猫だから夜目は強いので目に頼ってしまっている。
ミルは臭いを嗅ぎ分ける。
それぞれが特徴を持っているからそこは伸ばせば良いのだが動物ベースならもう少し野生の感を鍛えてもらいたい。
そんな思いから俺たちの悪巧みが始まった。




