凱歌の響き、金髪の姫将軍
「来たぞ! サウザーの軍勢だ!」
ディラー城下町の広場から、地を揺るがすような大歓声が沸き起こった。
ハルト大臣の活躍で「ネズミ一網打尽」の報によって、すでに城内と街の士気は天を突くほどに跳ね上がっていた。
そこへ追い風を吹かせるように、南の強国サウザーの精鋭部隊が、ついにこのディラー国へと到達したのだ。
雲一つない青空のもと、白亜のディラー城の巨大な大テラスには、新国家の象徴である第一王子キィールをはじめ、裏の司令塔サジィール、絶対王カイル、側近のゾイル、精度を増したハルト大臣ら、主だった首脳陣がずらりと顔を揃えていた。
キィールは、中央の特等席から静かに城下を見下ろしている。
その佇まいは、昨夜サジィールとリンから「皇帝の在り方」を説かれたことで、迷いのない、どっしりとした絶対的な威厳を放っていた。
城門をくぐり、大通りを真っ直ぐにパレードしてくる軍勢の先頭。
ひときわ美しい白馬に跨り、陽光を浴びて 眩しく輝く銀の甲冑を身にまとった少女の姿があった。
サウザー国の姫将軍、シオンである。
南国の眩しい太陽をそのまま溶かし込んだような、美しくきらめく金髪。
健康的に引き締まった美しい褐色肌。
亡き兄エドワ王子の遺志を継ぎ、サウザーの全軍を率いる彼女の姿は、まるで戦場に舞い降りた女神のように凛々しかった。
「シオン様ー!」「サウザーの英雄よ!」
沿道を埋め尽くしたディラーの民から、狂わんばかりの歓声と、歓迎の花吹雪が嵐のように降り注ぐ。
普段は一軍を率いる厳格な将軍であるシオンだったが、この温かく熱烈な大歓迎には胸を打たれたのだろう。彼女はふっと、年相応の可憐な笑みをこぼすと、集まった民に向けて優しく、大きく手を振り返した。きらきらと揺れる金髪が、民の歓声に応えるように光を放つ。
パレードの列はゆっくりと城の内庭へと進み、大テラスの真下へと整列した。
サウザーの精鋭たちが一糸乱れぬ動作で槍を立て、ガシャンと甲冑の音を響かせて直立不動の姿勢をとる。
静寂が場を支配する中、シオンは白馬からしなやかに飛び降りると、大テラスへと繋がる大階段を一段ずつ、確かな足取りで上ってきた。
彼女の副官であるアルパや、元英雄バルドの副官ロダンら、サウザーの将たちもその後ろに厳かに従う。
テラスの最前線。黙然と立つキィールの数歩手前で、シオンはピタリと足を止めた。
そして、キィールが放つ本物の王者の気迫に一瞬だけ圧倒され、内面では憧れのカイル王の前ということもあってバクバクと緊張に心臓を脈打たせながらも、彼女は完璧な『姫将軍』としての演技と敬意を以て、静かにその場に膝を突いた。
深く頭を垂れ、その美しい金髪を揺らしながら、シオンは凛とした声を響かせる。
「サウザー国国王アレフが娘、シオンにございます。亡き兄エドワの遺志、精度ある我が国の誇りを懸け、陛下が掲げる新たなる大義の盾となるべく、精鋭三千の兵を率いて参陣いたしました。これよりは我が剣、我が軍のすべてを、大いなる皇帝たる御身へ捧げます」
一言一言に、一切の迷いのない強固な意志が込められていた。
キィールは一歩前へ出ると、ひざまずくシオンの前に静かに立ち、優しく、しかし全軍に響き渡る通る声で言葉を返した。
「よくぞ来てくれた、サウザーの誇り高き美しき将軍シオンよ。これほど過酷で長い行軍の道のり、さぞや苦労したであろう。見事な軍勢だ。そなたたちの参陣、新国家の未来を担うすべての民の命に代わって、心から歓迎し、その忠義を労う」
キィールがそっと手を差し伸べると、シオンは顔を上げ、その手を取って静かに立ち上がった。
仮面の奥のキィールの瞳は、心優しくも力強い光で満ちており、緊張していたシオンの心をそっと包み込んで解きほぐす。
王と将軍が固い同盟の絆を結んだその瞬間。
見守っていたサジィールやカイル王、ハルトたちが満足そうに深く頷く。
「うおおおおおおおッ!!」
「
ディラー! サウザー! 万歳!!」
テラスの下から、 街の隅々から、二つ
の国が名実ともに一つになったことを祝福する、地を割るような大歓声が再び沸き起こった。
降り注ぐ花吹雪と民の熱狂のなか、キィールとシオンは並んでテラスの前に立ち、共にその歓声に応える。金髪と褐色肌の凛々しい将軍の姿は、民の目に新しい時代の希望として焼き付いていた。




