漆黒の諜報戦、放たれた三国の影
夜通し続いた長い軍議がようやく解散となり、城が本当の静寂に包まれ、別室で3人の婚約者達が騒いでた頃。
サジィールとゾイルの二人のソードナイトは、2人揃って
部屋に戻るや否や、休むことなく次なる「見えない戦い」の火蓋を切って落としていた。
カイル王から下された密命――ディラー国を除く、ヨルタン、サンタス、デモンの「三国」の諸侯の動静調査。そして、あの恐るべき最高権力者の動向追跡である。
部屋の明かりを極限まで落とし、漆黒の夜闇に向かって低く、サジィールが冷徹な声を掛けた。
「集まったか」
部屋には、カイル王直属の優秀な密偵たちとサジィールの赤の義賊者達である。
彼らの追う標的は、あまりにも巨大だった。
十六年前、凄絶な謀反を起こしてイオン帝国を完全に乗っ取った男、宰相モーゼス。
奴は王宮で生き残った庶子を『イオン十七世』として玉座に据え、傀儡の王の後ろで実権を握り続けている。
城の誰もが「あの謎の豪商」をモーゼスの手先だとにらみ、その繋がりを暴こうと必死だった。
「これより、ヨルタン、サンタス、デモンの三国の諸侯の動静を完全に監視下に置く。狙うは、城下に深く根を張るあの謎の豪商の正体と、帝国の『宰相モーゼス』の手先の動向だ」
ゾイルは机の上の地図に指を突き立てた。
「奴は私の暗殺に失敗し、今度はリノを使ってスパルタカス殿を消そうとした。
傀儡の背後で帝国を牛耳るモーゼスの息がかかっているからこそ、三国の諸侯どもは恐怖で絶対に従順にさせられている。豪商の正体と資金や密使が、三国のどの諸侯と繋がっているのか、その連絡経路を逆探知しろ。我がディラーの足元を揺るがす怪しい動きがあれば、即座に報告せよ」
「御意」
密偵たちは短く応じると、再び音もなく闇の中へと溶けるように消え去っていった。
ゾイルの張り巡らせる情報網は、蜘蛛の巣のように静かに、しかし確実に三国へと広がっていく。
一方、城の西棟では、カイル王とサジィール、キィールがディラーの精鋭部隊の長たちを前に、地図を広げていた。
ゾイルが裏の情報戦を仕掛けるならば、カイル王、サジィール、キィールの役割は表の「軍事的な包囲網」の構築だった。
サジィールがカイル王に変わって指揮を取る。
「三国との国境付近の監視を極限まで強めろ」
サジィールの鍛え上げられた肉体から、威圧的な覇気が放たれる。
「モーゼスが傀儡の王の名を使って、三国の兵を動かす兆候を絶対に見逃すな。諸侯どもが恐怖で完璧に支配されているのだとすれば、近いうちに必ず、不審な兵の移動や物資の集積が始まるはずだ。奴らがサウザー国と五部族の防衛線を完成させる前に動き出すなら、その前にこちらが叩く」
「はっ!」
サジィールの命令の元、精鋭の斥候たちが夜に紛れて城門を潜り、三国の国境へと向かって馬を走らせた。
カイル王の統べるディラー国という絶対の拠点を背に、ついに開始された三国の広域隠密調査。
彼らはまだ、自分たちが「モーゼスの手先」だと確信しているあの豪商の正体こそが、そのモーゼスすら裏で操る恐怖の存在、デモノその人であるという最悪の真実には辿り着いていない。
しかし、手探りながらも放たれた隠密たちの刃は、傀儡の王と宰相モーゼスが支配する帝国の、そして漆黒の陰謀の核心へと、確実に近づき始めるのだった。
やっと、慣れて来ました。
元々は他で書いてた小説だったのですが、無くなったから、ここに来て書き始めて全然読まれないので、すっと諦めてました。
そんな時に、昔の読者から続きは?と言われてね。
ディラーに来るまでは、同じですが…
その後の展開が自分でもイマイチだったので、話を大幅に変えて書いてます。
昔の続きまでは、まだまだですが。




