3人の話し合い2
そこにまたしてもエレナが
「もし、その側室でいいって言ってきた姫君が、私たちよりもそういうことに詳しくて、しかも年上で魅力的な人だったらどうするの……?」
エレナのさらなる言葉に、部屋の空気は一気に緊迫した。
自分達には、容姿には自信があっても、まだまだ女の色香には自信が無いどころか、色香が無い。
サーシャやエレナは、そうした年上の妖艶な色香に迷わされた男の話しは良く聞いていた。
「キィール様だって男だもの誘惑に負けるかもしれないわ。そんな年上の大人の色香に惑わされて、あっさりと……っ」
「そ、それは……!」
サーシャの顔が再び強張り、リンもごくりと唾を呑んだ。
自分たちは大人の真実を聞いただけで顔を真っ赤にして逃げ出すような、うぶな子供だ。もしも、男のあしらい方を熟知した年上の魅力的な女性がライバルとして現れたら、太刀打ちできるはずがない。キィールがその色香に絆されてしまうのではないかという現実的な恐怖が、三人の胸を締め付ける。
「あ、あの……!」
そこで、リンがハッと何かを思いついたように声を上げた。
「そういえば、ゾイル様の奥方様は……その、元は高名な娼館の出身だと伺いました。ご自身に情愛の経験は無いとのことですが、今まで本当にたくさんの、色々な人々を見てこられたはずです。もしかしたら、そういう大人の女性への対抗策を……」
そこまで言いかけたリンの言葉を、サーシャが鋭く遮った。
「リン、そんな言い方は失礼よ」
きっぱりとしたサーシャの口調に、リンは
「あ……」
と口を噤んで俯いた。
「いくら過去の経歴がそうだからといって、今のゾイル様の奥方様に対してそのような邪推混じりの呼び方をするのは、礼儀に反しますわ」
サーシャは厳しく諭した。しかし、彼女はそこで言葉を区切ると、ふっと視線を落として少しだけ頬を赤らめ、小さな声で続けた。
「……でも、多くの方を見てこられた人生の経験者であることは確かよ。男を惑わすような不届きな輩への対処法を、私たちだけで悩むよりは、お知恵を借りに行くというのは……悪くない選択かもしれませんわね」
厳格なサーシャまでがそう折れるほど、三人は追い詰められていた。
自分たちのサウザー国や部族を守るため、そして何より、見かけによらず強いキィールを年上の誘惑から守るため。
恋という感情はまだ分からない。けれど、未知の「大人の色香」という脅威に対抗するため、三人の少女はゾイルの妻へ相談に行くという、思いもよらない次の一手を決意するのだった。




