第7話【シズク】アンドロイドは剣を持つようにできていない
side:シズク
人間の身体は不便だ。
腹が減る。水が要る。幸いにもこの村の水はなんと無料だ。
アクアロード社の天然水には、生きるためのミネラルが含まれている。
飲めばなんとなく体の調子がいいと言われる奇跡の水。
だがこの井戸水に同じ効果があるかはわからない。
安全性を確かめるため指からセンサーを出そうとしたが、当然、人間の指からは何も出ない。
「何やってる。早くポーション瓶に必要な量を入れろ」
「あ、ああ。わかった」
筋肉ダルマ……ビリーに急かされて、不思議なポーション瓶の口を、井戸水に当てた。
瞬く間に、桶の水が吸い込まれた。
腹の音を認識した。
俺は今汲んだばかりの水を無心に飲んだ。
水は命の源だ。
「シズク、腹の減りを水で癒すな。ウチに来い。飯くらい出してやる」
「す、すまない」
ハッカーになる前、俺はメディカルアンドロイドだった。
人間の体の構造は理解してる。規約より優先すべきこともな。
俺がこの世界で生きるためにできるのは、構造の欠陥を教えることと、医療の知識を広めることだと思った。
だがビリーは言った。
「この村は最果てだからな。商業ギルドも冒険者ギルドもない。医療はポーションで全て解決するから必要ない。まずは適当に狩りでもして飯を自分で作れるようになりな」
この世界には本物の奇跡の水……ポーションがあるらしい。
ビリーは鍛冶屋だ。
俺の身長に合う一番スタンダードで安価な剣を手渡された。
肩が外れるかと思った。
剣先は地面に落ち、硬い音を立てる。
「おいおい。これも持てないなら、お前戦えないぞ」
「俺は、情報戦専門なんだよ」
ふと、飾られてるものの中に、妙に惹かれるナイフがあった。
手に取って鞘から抜こうとすると、その隙間から覗く刃先が俺の視界を真っ白に染めた。慌てて戻す。ビリーは野太い声を張り上げた。
「おい、喜べ。お前は魔法使いだ」
魔法?!アンドロイドの俺が超常能力?!
俺はとりあえず水を飲んだ。




