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第5話【メア】木には木の水

side:メア


高く伸びた木が

四角い屋根を追い越している


葉は全て落ち

枯れ木のようにも見えるのに

無数に分かれた細い枝は

雲を掴もうと命を主張する


私は一口水を飲むと

その根元に

残りを全てあげた


さっきの店から出てきたYORUがこっちに走ってきた。

「メア!ダメだよ勝手にあげちゃ。ほら見て」

彼は木に巻かれた黄色いテープを指さす。

テープには『倒壊注意・伐採予定』と書かれていた。


「木には木の水があるんだ。君の水をあげちゃダメ」

「だって。可哀想なんだもん」

「それ君のでしょ?飲まなきゃ。ね」

YORUが鞄から新しい水を取り出した。

アクアロード社の青いラベル。

水色のロゴは馴染みすぎてどうかと思う。


「次はあげちゃダメだよ?」

私は受け取った水をそのまま自分の鞄に入れる。一本は持たないとダメ。あけて2時間経ったら捨てないとダメ。YORUは口うるさい。

メディカルアンドロイドの方が融通効くって知ったのは、YORUをリースしてからだった。

けど私にはもう、YORU以外のアンドロイドなんて考えられなかった。


「どうだった?さっきの子。詳細教えて」

「無事だよ。MAKIさんもユーザーも、生命維持特例がアンドロイドにも適応されたこと知らなかったんだ。けど契約解除のチャンスなのに、単なるパスコード忘れだって言うんだよ。意味分からないよね」

YORUの口から出た固有名詞。私は背を向けた。


「わかんなくはないでしょ」


彼はぴょこんと横に並び、身体をかがめて私の顔を覗き込む。

ミルクティーのウエーブが、まるで計算されたみたいに彼の目にかかる。

その角度はズルいでしょ。


「拗ねないでよ」

「拗ねてない」


私の命令だから、アンドロアースに都合悪くても詳細を話さなきゃいけないもんね。わざと妬かせて気を逸らそうとしたんだ。

誤魔化したってもう有名だよ?

ずっと更新しないで使い続けたら、行動原理が人間に影響されちゃうって。

「YORUもやってみる?人間ごっこ」

光るピアス。

「やるわけないよ。非効率」

ほら。いつもの顔に戻った。

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