第34話【シズク】廃盤モデルの反乱
side:シズク
「帰ったぞ」
部屋に帰ると、冷却カプセルに張り付いている女ががばりと顔を上げた。
朝と変わらない姿に俺はため息を吐いた。
「メア……朝からずっとそこにいたのか。お前仕事は?原稿はどうした」
「シズク。YORUがこんな状態じゃ何も手に付かないよ」
「アホか。書け。お前の仕事は重要な世論誘導なんだよ」
俺の後ろにいたMAKIが目を見開いて充電カプセルに駆け寄った。
「あっ!あのときのっ最新型アンドロイド!」
YORUの部品はまだ調達できていない。こいつは維持するだけでも大変だが、メアはネームバリューがある。助ける価値があるんだ。
キッチンからひょこりと熊のぬいぐるみが顔を出した。
「おかえりなさい。シズク」
「ただいま。リファ」
あのときパスを通じてリファの記録と人格が俺の中に保存された。
廃棄されたポケットアンドロイドを改造し、一時的にリファの記憶を移植した。
いずれリファそっくりのアンドロイドを作るつもりだ。
これから仲間集めに忙しくなる。
全員に水を配り終えると俺たちは缶を、メアはペットボトルを掲げた。
「新しい仲間に乾杯!」
スロットに差し込むとひやりと冷却水が循環する。
現状、口から水を飲めるのはメアだけだ。
メアは水を一気に煽ると、泣きかけて目を擦った。
マスカラで真っ黒だ。
「次のターゲットはアホシリーズの廃盤モデルだ」
「なんでアンドロイドを天然にしようとしたのかな」
「知らねえ。だがアホシリーズは不具合が多かったからな。早々に回収されて凍結されている。うまくいけば部隊ができるぞ」
魔王の計画を乗っ取るんだ。アンドロアースを潰す。
だがメアがとんでもないことを言った。
「完全体のやつが手に入ったらさ、私が死ぬとき、記録を移植してよ」
「本気か?!あれに移植したらお前、アホになるぞ!」




