第3話【シズク】俺ハッカー。異世界当選しました
side:シズク
旧型の箱にプラグをさす。
サーバーに潜り込み設計書を頭に移す。
――アンドロアース最新型アンドロイド、メディカル、エンジニア、ミリタリー、コミュニケーション、ハウスキーパー……
くそ。全て移行に12分か。間に合うか……!
1/3をダウンロードしたとき、通知が視界の外に光った。
さっきまで追っていたコードの列がどこかへ消える。
フォーカスの合わない視界の中、俺は通知を読み込もうとする。
二重に見えるその文字が、頭の中に直接刻まれた。
『異世界転移に当選しました』
はあ?!
意表を付かれ、撤退が遅れる。
ウイルスが俺の仕様を改変していく。
『これより機能の転送を開始します』
突然、動力の供給が途絶えた。
背中がチェアに縫い付けられ、指先はだらりと落ちる。
開かない瞼の下で、意識は沈んだ。
──沈む。
「っは!溺れ……」
目を覚ました俺は、井戸を背に座っていた。全身がずぶ濡れだ。
転がっている桶。
肌に滴る水が、唇を伝う。
「おい、兄ちゃん大丈夫か?!」
顔を上げると、目の前には筋肉ダルマが居た。
えらく、手荒な起こし方だな。
そこには見慣れたビルも、アンドロイドも、簡易冷却水の自販機もなにもない。
記録でしかみたことのない世界。
顔を濡らす水が
やけに甘く感じた。
甘く――
水?!
土まみれの自分の左手を俺のカメラ……目が、とらえた。
両手をすり合わせ、土を払う。
その感触は、柔らかい人間の手触りだった。
「にいちゃん。名前は?」
「俺は、SHIZUKU」




