第28話【幕間】水のない日
コンビニから出ると、入り口自販機の赤いランプを横目で見た。
ペットボトルをあけてお茶を飲む。キンキンに冷えた緑茶が喉を通るが、どうにも腑に落ちない。
スーパー、ドラッグストア、ホームセンター。店から出てまたすぐウーロン茶を流し込む。
牛丼屋に入ると、ウォーターポットを傾けた。
グラスに注がれるのは──麦茶。
「ちっ……!」
一口飲んで、震える手でグラスを置く。
何故だ。
何故だ何故だ何故だ!!
―――
目を開くと、病院だった。
酸素マスクからふわりと甘い香りが漂う。
これっぽっちじゃ喉は潤わない。
身体を起こそうとして動けないことに気付く。
ベッドにベルトで固定されていた。
「助けて!水!!」
叫ぶと、隣のベッドの人も叫ぶ。
「水!」
台の上に未開封の水があった。
ナースコールが押せない。
病棟は個室でも個人アンドロイド禁止だから。
私はあらん限りの声で叫んだ。
挿管で枯れた喉が痛む。
酸素マスクに赤い点が見えた気がした。
水という単語が病室内でこだまする。
やっと、メディカルアンドロイドがかけつけた。
「ねえ看護師さん、そこにある水を取って」
「これは、お守りなんです。何かあってもここにあるだけで安心するでしょう?」
彼女は縛られたままの私にヘッドフォンを付けた。
「さあ。寝ましょうね。一緒に数を数えましょう。い~ち、に~い」
「やめ。やめて」
私の点滴に、水色のロゴのアンプルが刺された。
目を閉じるとシナプスを伝わる光が頭のどの位置で鳴っているのかを教えてくれる。
右へ左へと響き、ほんの少しズレた音が浮遊感を生む。
音を光として見る不思議な感覚。
せせらぎの音が──
──水が
頭の中を流れるように美しい模様を作っていく。
夢の中で私は
水を、飲んだ。




