第27話【幕間】飲水禁止
アクアロードの青いトラックで草原を走っていた。
助手席の窓を全開にして顔を出す。
対向車もなんにもいない。だって草原だから。
空にはとんびとドローンが飛んでる。
気持ちいい。
酸素がめっちゃ濃い。
遠くの方で牛が鳴いてた。
ヤギも鳴いてた。
ヤッホーーーーと叫ぶ。
微かに喉が痛み、手に持った水を飲もうとしたとき、
主治医に起こされた。
手術台の上。体はまだ動かない。
喉が渇いた。
術前からもう何時間水を飲んでいないのか。
口に当てられた酸素マスクから、蒸気がちょっと出ていた。
大きく口を開け、必死で飲もうとする。
口に含まれる水は微々たるものだ。
加湿器には、アクアロードのマーク。
あ。医療にまで出てきてるんだ。
さすが。
この病院の水は、期待できる。
早く飲みたい。水を。
もうそれしか考えられなかった。
遠くの方で看護師さんの
「飲水禁止」という単語が聞こえた。
絶望のままにベッドで運ばれる。
来た時には気付かなかったものが見えてくる。
鮮烈に目に飛び込んでくるロゴ。
そのたびに、胸の中の渇望が掻き立てられた。
だが穴のあいた酸素マスクでは、蒸気を溜めることができない。
自販機はもちろんのこと
献血のポスターにもアクアロード。
部屋の前のアルコールにもアクアロード。
なんでか手すりにも、
消火器にも、
そこかしこにアクアロード。
私を運ぶメディカルアンドロイドのポケットに刺さったペンにも
水色のロゴ。
アースも人間も、水でできている。




