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第24話【MAKI】緩い傾斜の隣で
side:MAKI
中庭には、車いすを押すメディカルアンドロイドたちが見えた。
彼女らは私に一緒に診察室に入るなと言った。
私が話しすぎると、彼が何も言えなくなると。
私はいつものベンチに座る。隣に水を置いてぼんやりと空を眺めた。
自分を変えるのは簡単だけど人を変えるのは難しい。
彼が『今』を選ぶなら
その緩い傾斜が、数ミリずつ絶望に向かっているとしても、私には何も言えない。
言葉に出せば対立し、行動を縛れば反発する。
それはとても非効率で
いっそ何もしない方が安全かも知れない。
未来は、止められない。
けど、今をやり過ごせば
ずっと、一緒に歩いて、一緒に終われるかも知れない。
私だって行動を縛られるのは嫌だ。
言う通り生きて、それが自分の人生だなんて思えない。
だから彼が今を生きたいのは分かる。
だけど、それと、我慢を放棄するのは、
思考を消して流されるのは違う。
私はもう一度空を見上げた。
「康太……」
ほんとは彼のためなんかじゃない。
結局長生きして欲しいと思っているのは私であって
彼は太く短い人生を歩みたい。
私が受け止めるしかない。
私は、手に取りかけた水を置いた。




