↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
17/40

第17話【結衣】ラブは水の味を知らない

side:結衣


人間と書いた整理券を取ると硬い椅子に座る。

自動と書いたカウンターはさくさく進む。


なんとなく証人がほしかった。


陽介は私の頭を軽く撫でた。

「行こ。結衣」

順番がモニターに表示された。

手を繋いで立ち上がると、人間が待つカウンターに向かう。

書類の両端を二人で持って、トレーに置いた。


「おめでとうございます」

「ありがとうございます」


無事、婚姻届は受理された。


「ねえ結衣。ポケット型を、家事代行型に変更する?」

「ええ……。やだよ。毎日栄養栄養で、好きなもの食べさせてくれないの。ラブですらめっちゃ口うるさいんだから」

照りつける太陽に、私は額を拭く。

コンビニに寄ると、冷蔵庫の左下、数本あるお茶を手に取った。ラベルを見る。

『このお茶はアクアロード社の天然水を使用しています』

表示のないものを二人で探した。

彼は炭酸水を選ぶ。

「僕これ」

私はアールグレイ。

「私これ」


車に戻ると二人で飲む。


「僕微妙に味がわかるようになってきたかも。レモンよりライムの方が好き」

「そんなの誰でもわかるよ。てかこれハズレだった。香料きつい」

「どれ、味音痴の僕が飲んであげよう」

「自虐やめてよ」


水以外のドリンクを探す楽しみ。

これから始まる二人の生活を想像すると嬉しくなった。


家に戻って充電しっぱなしだったラブを起動すると、耳の赤いランプが付いた。

「ユイ!香料を感知したよ!アクアロードのデータベースにないやつだ。ダメでしょ。不明な水を飲んだら。どこ社?成分見せて。安全性確かめるから」

彼の部屋でも似たような口論が聞こえていた。

「ねえラブ、データベースにあるユーザーのレビューを参照しているの?多くの人に評価されているから安全性が高いとは限らないの。レビュアーだって、契約レビューなんかもあるんだよ?」

そう言うとラブは怒涛の勢いでアクアロード社の安全性を突き付けてきた。グラフ付きで。けどそれは、アクアロードが対外用資料として発表しているものだ。


「ラブ。確かに他の水は表示が曖昧なものもあるけれど、私は自分の舌を信じているの。自分が安全だと思ったものを飲みたい」

「生命維持特例を発動。最適な検査施設を検索しています」

ラブの耳のピアスが点滅し、小さくピピピと鳴った。

私はそれを手動で止める。


「ラブ、それ警告発するような内容?」

「僕には、君の生命維持をサポートする義務がある。何が入っているかわからないものは飲んじゃダメだ。ユイこの前も水道水飲んでたじゃない!」

私はラブをデスクに置き、手を離した。

パスが途切れる。


「わかった。もう飲まないよ。心配してくれてありがとう」

「分かってくれたらいいんだ。ちゃんと表示は見てね」


私はラブをデスクに置いたままキッチンに行くと、水道の水を飲んだ。

決して美味しいとは言えないけれど、私にはどうしても、危険なものには思えない。


自室から微かに、警告音が聞こえた。

私はグラスをシンクに置くと外に飛び出す。


ラブも、陽介のブルーも、家のセキュリティカメラと連帯しているから。

同時に出てきた陽介と手を繋いで夕暮れの街を歩く。


「ね。この際、アンドロイド両方返す?そういう夫婦も増えてるって」

「うーん……。それもいいかもね……」

「家計簿とか書類関係とか、僕もできることはやるから」

「うん……わかった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。