↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/40

第15話【幕間】完全食ラーメンの罠

キャンペーンに応募すべく、増えるラーメンの各味を二種類ずつ買い揃えた。

カップに圧縮キューブと水を入れてスイッチを押すとあたたかいラーメンになる。謳い文句は完全食品。栄養素もバッチリだ。

私は赤、彼は青のカップにアクアロード天然水を注ぐ。


「安くて美味しくて最高」

「俺もう一個食べていい?」

「だめだよ。奇数個になっちゃう」

「ケチ!」


最初は家事が減ると喜んだ。けどそれも長くは続かなかった。


私たちは馬鹿だ。

どうして最初に定番の味を全て食べつくしてしまったのか。


ノルマのように麺を啜る日々。

手に持ったカップの感触はいつもの味を期待させた。

だけど香りはトムヤムクン。

毎回違う味は苦痛でしかなかった。

酸辣湯麺、トマトチリに梅しそ。どうして酸味だけこんなに種類豊富なのか。


シンクにスープを流そうとした私に彼は言った。

「おい。スープ飲めよ。でないと栄養分が勿体ない」

「ええ……?でも」

「完全食品の意味がねえ」


私はシンクの前に立ったままスープを飲み下す。辛みと酸味が私を襲う。こんなの舌への暴力だ。

すぐに冷蔵庫から冷えた水を取ると、キャップを開けて口に含む。

ごく、ごくと、喉が動くたびに冷水が体に染みわたる。


次は多めに水を入れてみよう。


次の機会、ゆずラーメンには氷を大量に入れた。冷やしラーメンも良い感じ。

毎日水を飲んだ。

溜まった塩分と、頭にこびりついた酸味を洗い流すために。


酸味には少しずつ慣れた。けどパクチーの香りだけはどうしても慣れない。それでも食べるしかなかった。私たちはもう、あとには引けない。

部屋の片隅には、購買意欲をそそる、古代宝箱をかたどった期間限定ボックスが鎮座していた。


やっとキャンペーンが終了し、当たらなかった悔しさを噛み締めながら焼き肉屋さん『純粋』に入る。


「いらっしゃい。ご無沙汰です」

「久しぶり。夢にまで見たよ」


彼は箸に付けたたれをぺろりと舐めた。


「あれ……?大将。タレの味、変わった?」

「いや。変えてないですよ。うちは創業からずっとこの味です。素材の水分のみ、一切の水を使わず継ぎ足して作っております」


「素材の水分のみ……」

「継ぎ足し……」


衛生面は、大丈夫なのだろうか。

入口にはアンドロイド入店お断りの文字。

帰ったらうちの子に聞いてみよう。


「今日はとにかく食べよう」

「そうだね。せっかくのノルマ明けだ」


とりあえずビール飲んだ。

久しぶりのビールは苦みものど越しもあまり感じなかった。

ホップの爽やかな香りだけが、鼻に突き抜けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。