第14話【シズク】ホワイト精霊の対等雇用
side:シズク
いつものように宵闇の森に入る。
リファが俺をサポートし、俺が経験を積む。
まるで俺がユーザーでリファがアンドロイドだ。
だがこの世界の魔法契約は対等だ。
精霊は従魔でもツールでもない。人間がロットNoを外して改造したり、規約で縛って重すぎるアップデートを義務化したりはしない。
レベルアップするもしないも自由だ。
リファが魔法で処理した肉を焼く。それを俺だけが食う。精霊は魔力で生命維持ができる。俺がリファに魔力を与え、その魔力でリファが俺をサポートする。
隣でリファが緑の羽根をパタつかせた。
「シズク、遠吠え。数が多い」
「リファ。俺がやる。隠れろ」
消臭剤を吹きかけると彼女を木の上に逃がす。
深く息を吸う。
唇から、音が零れる。
はるか昔ここに来る前の世界で死んだパートナー、リファが好きだった曲。
音も楽譜も全て頭に入っている。
前の世界で俺は、何万回と規則正しく1秒を刻んできた。
俺は音とリズムだけは、一部の狂いなく再現できる。
それが音魔法の力だ。
鼓動も体温も俺を人間だというのに
俺の喉が発するのは
この世界にはない、シンセサイザーの音。
集まってくる黒い魔物。リファの風で増幅された声が、敵意を持った魔力を穿つ。
最後の音が奏で終わると
そこには月明かりに照らされたいくつもの魔石が輝いていた。
喉に手をやる。
「んん……」
歌うたび俺は喉は消耗する。
本来人間の出せる周波数じゃないから。
俺はとりあえず水を飲んだ。




