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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第2章 新たな日常と変わらないもの
25/111

日常は遠く

2回目の更新です。

 倖楓との言い合いの後、俺はそのまま生徒会室で昼食を食べた。茉梨奈さんからは特に何か言われることはなく、時間が来たので解散になった。


 俺は生徒会室から、まっすぐ教室へ戻る。教室に入ると、すぐに槙野がこっちに寄ってきた。


「ちょっと水本」

「なに?」

「こっち来なさい」


 そう言うと廊下に連れて行かれた。なぜか槙野だけじゃなく、以前から倖楓に謎のエールを送っていた女子で、赤坂さん、紺野さん、長谷川さんの3人だ。


「で、あんた何したの」


 槙野がしかめっ面で問いただしてきた。他の3人も同様に顔が険しい。


 俺は心当たりがあったが、とぼけて答える。


「何の話?」

「…あんた本気?」


 さすがに厳しかったみたいだ。槙野の目が一層鋭くなった。


「倖楓ちゃんが戻ってきたところを、私が捕まえて一緒にお昼食べたんだから」

「遊佐さんに水本君はどうしたのか聞いても暗い顔をするだけで答えてくれないんだよ?」

「「うんうん」」


 紺野さんの言葉に赤坂さんと長谷川さんが頷いて同調している。おおよそのことはわかっているみたいだ。これは観念した方がいいか。


「ちょっと言い合いになったんだよ。そんなに深刻じゃない」


 俺がそう言うと槙野が語気を強くして怒った。


「バカ!十分深刻よ!あの倖楓ちゃんがあんたと口論になるなんて、よっぽどに決まってるじゃないの!」

「そうだよ、遊佐さんが水本君の話をする時は毎回笑顔なんだから!」

「「うんうん」」


 さっき散々言われたバカが、今は良く刺さる。自分も悪いことを自覚しているので尚更だ。それにしても口論と呼べる程の内容じゃなかったと思う。


「わかった。ちゃんと解決するから心配せずに待っててほしい」

「急がないとダメだからね?明日は休みだし、明後日は球技大会でほとんど一緒にいれる時間ないと思うし、それ逃したら連休で取り返しつかなくなるわよ?」


 ゴールデンウィーク前の最後の登校日は球技大会が1日通して行われる。男女で別れていて同じ男子の中でも3グループで別の種目をやることになるので、槙野の言う通りなかなか一緒にいるタイミングは無いかもしれない。


「なんとかする…」


 俺がそう言うと少しは納得したのか応援隊の3人が教室に戻った。槙野も戻るかと思ったらまだ話は続いた。


「橘先輩のとこ行ってたの?」

「サチに聞いたの?」

「勘」


 さすがは槙野。こいつが勘で外す事があるのか知りたい。


「そうだよ、2人で生徒会室に行った」


 すると槙野が大きなため息をついた。俺が何事かと思っていると槙野が口を開く。


「ほんっとバカ」


 一応まだ勉強には付いていけてるんだけどな、と思いながら2人で教室に戻った。


 俺が席に戻ると、隣の席の倖楓がこっちを窺ってるのがわかった。俺が倖楓に顔を向けると、すぐ目を逸らされた。これはなかなかタイミングが難しいかもしれない。そう思っているとチャイムが鳴ってしまったので問題は後回しになった。




 まずい、もう放課後になってしまった。休み時間も俺から話しかけることなんて今まで無かったから、囲まれてる倖楓に声をかけられなかった。


 意を決して隣の倖楓に体を向けると、そこにはもう倖楓が座っていない。どこ行ったのかと見回すと、槙野のところにいた。そのまま教室を出ようとしているので、どうやら一緒に帰るらしい。今日部活はないのだろうかと思っていると、明希がこっちに来て疑問が解消される。


「悠斗、今日部活休みだから久しぶりに帰らないか?」

「いいよ」


 目的は果たせそうにないので諦めて帰ることにした。


 2人で昇降口まで来て明希が俺にずっと思っていたのであろう質問をしてくる。


「遊佐さんと何かあったのか?」

「ちょっと言い合いになって、売り言葉に買い言葉で止まらなくなった」

「大丈夫そうなのか?こう言ったらなんだけど、ちょっと予想外だ」

「言い合いになったきっかけも内容も大したことないから大丈夫だよ。連休入る前にはなんとかする」




 俺たちは敷地を出て駅までの道を歩く。ふと明希に聞きたいことが出来た。


「なぁ、槙野と気まずくなったりしたことないの?」

「んー、香菜がものすごく怒ることはあるけど大体俺が先に謝るかなー」

「参考にならないな…」

「普通にメッセージ送って謝ればいいだろ?」

「まあそうなんだけど、面と向かって言い合いになったからさ。直接言いたいかなって」

「悠斗も変なとこで頑固だからなぁ」


 明希が笑って言う。他人事だからって軽く言わないでほしいと思う。




 俺は明希と駅で別れてマンションへの帰路に就いた。そういえばこの道を1人で通るのは随分と久しぶりな気がする。そういえば最近イヤホンをして歩くことも無くなっていた。


「慣れってすごいな…」


 思わずそんなことを口に出す。俺は思い出したかのようにイヤホンをしながら歩き始め、そのまま部屋まで1人で帰った。






 翌日。今日は祝日だがバイトがあるので朝から早起きして『ルピナス』へ向かう。


 店に着き深呼吸をしてから扉を開けると、すでにウェイトレス姿の倖楓がいた。ドアベルに反応して倖楓がこちらを向くがすぐに顔を背ける。まだまだ解決の道は通そうだ。


 店内をよく見ると開店準備が全部終わっていた。おかしい、俺は遅刻していない。それなのにすでに終わっているということは―――


「もしかして、早く来て1人で終わらせたの?」

「…」


 無視されている。完全に聞く気がないらしい。


「営業中も会話しないつもり?」

「…公私混同はしません」


 今度は答えてくれた。やっと会話できた。これは今がそのタイミングかと思って俺が改めて話をしようとすると裏から海晴さんが出てきた。


「あ、悠斗くんおはよう!今日は倖楓ちゃんが早くから来てくれてね、もうやる事なくなっちゃったの」

「…みたいですね」


 完璧なタイミングだと思ったのにどうやら違ったらしい。すると海晴さんが不思議そうな顔をする。


「どうかしたの?」

「いえ、大丈夫ですよ」


「…大丈夫なんだ」


 海晴さんとの会話に倖楓が反応した。小さい声だったがよく聞こえた。


「いや、サチ。そういう意味じゃ…」

「知らないっ」


 倖楓が早歩きで裏に入ってしまった。また失敗したらしい。


「えっと…、もしかして今なんかまずい状況だったりするの?」

「ちょっといろいろありまして…。バイト中は別ってさっき本人から言われたので問題は無いと思います」

「それは心配してないんだけど…。なんとかできそう?言ってくれたら協力するからね」

「ありがとうございます。でも自分でなんとかしないといけない気がするので、もう少し頑張ってみます」

「うん。2人ならきっと大丈夫だよ」




 とは言ったものの、全く会話が無いままディナータイムも終わり、片付けすら終わってしまった。お昼休憩も倖楓が離れた席で食べるし、その後もすぐディナータイムの準備を始めてしまって話しかけるタイミングが全く見つからなかった。


「えっと…。2人ともお疲れ様!もうすぐゴールデンウィークだけど2人はどこか行く約束してたりしないの?」

「えっとー…」

「…ゆーくんが嫌がると思うのでありません」


 ダメだ、たぶん完全に意固地になってるパターンに入ってる。


「…海晴さん、お疲れ様でした」


 倖楓が店を出ようとするが、それを見た海晴さんが慌てて止める。


「倖楓ちゃん!さすがに遅いから悠斗くんと一緒に帰って!」

「…ゆーくんが嫌じゃないなら」


 倖楓が恨めしそうな目で俺を見ながらそう言った。俺は断る理由もないので引き受けることを伝える。


「嫌じゃないよ。それにどうせ同じマンションなんだから別々に帰る理由もないだろ?」

「…いつも学校から帰る時は先に帰ろうとするくせに」


 痛いところを突かれた。しかも言い方のせいで余計に刺さる。


「そ、それじゃあ気を付けて帰ってね…?」


 海晴さんが気を使って、帰る流れを作ってくれた。これに乗らない手はない。


「じゃあ帰ろう」

「…(コクン)」


 無言で頷くだけだが、さっきよりはマシだった。とりあえず俺は扉を開けて2人で店の外へ。俺が歩き出すと少し後ろから倖楓がついて来る。俺は頭の中でどう話を切りだすか思考を巡らせた。しかし、どのパターンを考えても悪い方向に行く気しかしなくてなかなか話かけられない。


 もうエントランスに着いてしまった。結局何も言えないまま、エレベーターに乗る。倖楓が降りる階なんてあっという間で、ついに倖楓は降りて行ってしまう。


「なにやってんだ俺は…」


 1人残ったエレベータ―の中で、俺は自分に呆れることしか出来なかった。

明日も2回更新です、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく見させてもらってます^_^ 倖楓が可愛い [気になる点] ユウがなぜあんなに嫌がるのかはこれからわかっていくんだと思うんですけどさすがにひどく主人公に魅力をあまり感じません あ…
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