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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第2章 新たな日常と変わらないもの
24/111

スイッチ、オン

本日の更新は2回あります

 先延ばしていた茉梨奈さんとの再会を果たしてから2週間が経った。怒涛の忙しさだった4月も、残すところ今日を入れて3日。しかも明日は祝日なので、あと2回学校へ行けば待ちに待ったゴールデンウィークだ。


 そんな残り2回の内の1回な今日も登校するために、俺は早起きをして弁当を作ろうと準備を始めようとしたのだが―――


「弁当箱がない…」


 洗って置いたはずの場所に存在しない。弁当箱の予備なんて買ってないので、どうするべきか考える。


「今日はコンビニでいいか…」


 諦めは肝心だ。それにしても、どこにいったのか。


 弁当を作るための時間だったが、無くなったのでゆっくり仕度をする。それでも時間が余ったので、俺はソファに腰を下ろしてコーヒーを飲みながら登校の時間を待つことにした。


 こんなにゆっくりした時間を味わうのはいつぶりだろうかと思って平穏のありがたみを改めて実感した。


「あー、このまま時間止まらないかな…」


 現実逃避の独り言を呟いてしまった。自分で無理もないと思う。なにせこの2週間、心が休まる時なんてほぼ皆無だったからだ。登下校は倖楓に待たれて、休み時間も倖楓が以前に増して話しかけてくるし、昼休みも1人でどこかへ行っても絶対に倖楓に見つかって一緒に食べることになる。たまに茉梨奈さんも加わる時もあって、その時は倖楓が普段よりも騒がしい。1人の時間なんて記憶に残らないほど印象が薄くなっていた。




 気が付くと、もう出なければいけない時間になってしまった。息を大きく吐いてから立ち上がって玄関へ向かう。俺はドアの前にいるであろう人物に気を使って、ゆっくりと開けた。


「ゆーくんおはよう!」

「…おはよう」


 今日も倖楓がそこにいた。


「元気ないね?」

「まあ、いろいろあって」


 主に原因は倖楓だけど、そうは言えない。俺がいつも通りエレベーターに向かおうとすると倖楓が自分のバックの中から、()()()()()()()()()()()()()()()()を差し出してきた。


「はい、お弁当♪」

「お前が犯人か…」


 それは俺の弁当の包みだった。つまり、布の中身も俺の弁当箱だろうと簡単に想像出来た。


「犯人なんて人聞きの悪い言い方しないでよー」

「人の部屋から黙って持ち出すのは罪だろ」

「ゆーくんと私ならセーフだと思います」

「アウトだし、レッドカードだよ。弁当作るために早起きしたのに物が無いんだから困ったんだぞ」

「時間に余裕が出来て嬉しかったでしょ?」


 たしかにゆっくり1人の時間を堪能したけど、それとこれは話が違う。


「そういう問題じゃない。次は怒るからな」

「けちー」


 最近、倖楓の行動が過剰になってきているのは気のせいだろうか。こんなにわかりやすく支障が出て困らせるようなことは今までしてなかったように思う。まあ、あと数日経って連休に入れば少しは落ち着いてくれるだろうと期待をして、俺は止めていた足をまた動かしはじめた。






 同日の昼休み。4時間目の終わりを告げるチャイムが鳴ってすぐに、俺のスマホから通知音がした。取り出して画面を見ると―――――


『昼食を持って生徒会室に1人で来ること』


 茉梨奈さんからのメッセージだった。生徒会室なら周りが騒がしいこともないかと思い、了承の返事をする。


『わかりました。すぐに向かいます』


 生徒会室の場所は少し前に茉梨奈さんが案内してくれて知っていたので迷うことはない。待たせると怒られそうなので俺は弁当を取り出してすぐに教室を出ようとする。


「ゆーくん!」


 声がかかるのとブレザーの裾を引っ張られたのは同時だった。


「なに?サチ」

「どこ行くの」

「…ちょっと用事があるから、今日は一緒に食べれない」


 正直に伝えて断ろうとすると倖楓がものすごく不満そうな顔をした。


「橘さんでしょ」


 これはさすがに勘が良いとか関係なしにわかりやすかったか。ここで誤魔化しても意味ないだろうと考えて素直に言う。


「そうだよ。1人で来いって言われたからさ」

「…私も行く」

「いや、だから1人で来いって―――」

「私も行く!」


 意志が固そうだ。どうするか悩んでいるとスマホの通知が再び鳴った。俺がポッケを指すと、倖楓が無言で頷く。許可が下りたので画面を見ると、また茉梨奈さんからだった。


『どうせ、もう捕まっているんでしょう?おまけがいても許してあげる』


 なんとか解決したようだ。俺は安堵しながら倖楓にメッセージの内容を伝える。


「一緒でもいいってさ。生徒会室だけどいい?」

「うん」


 こうして2人で生徒会室に向かうことになった。




 ようやく生徒会室の前に着く。1年生の教室からは少し遠くて時間がかかってしまった。俺は中で待ってる人に到着したことを伝えるためにノックをする。すると、すぐに中から返事があった。


『開いてるから入りなさい』


 その言葉を聞いてから俺は扉を開けた。


「失礼します。遅くなってすみません」

「教室からここまでの距離はわかっているから気にしてないわ。あと道を塞がれて動けなくなるだろう時間も想定内だから。…遊佐さんもいらっしゃい」

「お邪魔します…」


 俺と倖楓は並んで茉梨奈さんと向かい合って座った。喫茶店の時と同じ配置だ。


「で、遊佐さんはなぜそんなに不機嫌そうな顔をしているのかしら」

「当たり前です!最近は何度も私とゆーくんのお昼に乱入されて、今日はついにゆーくんごと奪われそうになったんですから!」

「あら、いつの間に彼の所有権があなたの物になったのかしら?その権利、言い値で買ってあげる。いくら?」

「売りません!」


 人身売買をしようとするな。


「勝手に他人の所有権を持たないで。あと、茉梨奈さんがそう言うと冗談に聞こえないのでやめてください」

「そう、それなら仕方ないわね」

「…私のだもん」


 茉梨奈さんと倖楓が同時に喋ったが、倖楓の方は声が小さくて聞き取れなかった。


 とりあえず、頭に浮かんでた疑問を茉梨奈さんにぶつけてみる。


「なんで生徒会室を選んだんですか?」

「やっぱり、どこで食べてても落ち着かないからよ」


 俺がここに来るのに承諾した理由と同じだった。


「部外者の俺と倖楓がここで食べてもいいんですか?」

「平気よ。会長には伝えてあるし、教員にも許可を貰って鍵を借りてるもの」

「なるほど、首席と副会長の名は伊達じゃないってことですね」

「橘さん、首席なんですか?」

「そうよ、あなたと同じで入学式で答辞を読んだわ」


 つまり、この場には2世代の首席が揃っていることになる。そう考えるとすごい集まりのように感じてきた。


「そうなんですか。そこまで完璧だと、もうどこかのご令嬢だって言われても私驚きません」

「…あー」


 倖楓の言葉に俺はどう言えばいいか迷っていると、目の前に座る茉梨奈さんが頷いた。


「別に構わないわよ。隠しているつもりもないし」


 本人から許可も出たので、俺は倖楓に説明する。


「あのな、サチ。茉梨奈さんは実際に大企業のご令嬢なんだよ」

「ほんとに?」


 そう。茉梨奈さんは本当にとある世界的企業の会長の孫娘で、父親も同じ会社で役員をしている。会長の子供は数人いるらしく、茉梨奈さんの父親が跡を継ぐかはまだわからないらしいが。


 信じられないという倖楓の耳元で会社名を言うと、大声を出しそうになった口を自分の手で塞いで驚いていた。


「全然知らなかった…」

「そうみたいね」

「倖楓は昔から噂話とかから遠いところで過ごしてるからな…」


 そんな会話をしていると茉梨奈さんが話を切り変えた。


「ほら、時間が無くなってしまうわよ。早く食べてしまいましょう」

「ですね」

「うん」


 そう言って俺は包みを解いて弁当を出すと、あることに気が付く。


「あれ?サチ、箸は?」

「あれー?入ってないー?おっかしーなー」


 俺は確信した。こいつ、やりやがった。


「どうして遊佐さんに箸の有無を聞くのかしら?」


 もっともな疑問だ。俺が答えようとすると、倖楓が先に答えた。


「私がゆーくんのお弁当の用意をしたからです」

「悠斗君、あなた遊佐さんにお弁当の面倒を見させてるの?」


 とんでもない疑惑を掛けられたので、俺はすぐに否定する。


「違います!サチが俺の弁当箱を持ち出して勝手に用意したんですよ!」

「なるほど。…やるわね」

「いや、感心するところじゃないですからね?」


 普通呆れるところだろう。俺が茉梨奈さんにツッコんでいると、倖楓がこっちに席を寄せてきた。


「これは仕方ないから、私が食べさせてあげないとだよね?」

「仕方ないっていうのは事故の場合だからな?」

「もー、恥ずかしがらなくていいでしょ?もう何回もしたんだから!」

「悠斗君、あなた…」


 さすがに少し頭にきたが理性で抑え込み、俺は席を立った。


「購買で割り箸ないか聞いてくる…」


 すると茉梨奈さんが俺に救いの手を差し伸べてくれた。


「後ろの棚の引き出しに割り箸があったはずよ。ビニールにまとまって入ってたはずだから使えると思うわ」


 俺は茉梨奈さんの言った棚の引き出しを順番に開ける。すると、2つ目を開けたところで割り箸が見つかった。


「ありがとうございました。助かりました」


 俺は、お礼を言ってから椅子に座り直す。倖楓が隣で不満そうな顔をしていることに、俺はカチンときたので叱るように忠告する。


「サチ。本当に次こういうことしたら本気で怒るからな」


 俺がそう言うと、倖楓がムッとした顔で抗議してくる。


「どうして私ばっかり怒るの!橘さんにはやさしくして、お願いされたら全然文句も言わずに引き受けるし!」

「は?今そんなこと関係ないだろ。それにサチに怒ってるのは、サチが小さい子の悪戯みたいなことばっかりしてるからだ」

「小さい子って何!?私、もうゆーくんと一緒にいた小学生の時のままじゃない!」


 もう売り言葉に買い言葉だ。普段なら癇に障らないことも、今は俺を苛立たせる。


「そんなことわかってるよ」

「わかってない!」

「じゃあ、そんなことしなければいい」

「嫌だ!」

「なんで」

「そんなの、言わなくてもわかってよ!」

「…わかるわけないだろ!」


 倖楓の大声につられて俺も声を荒げてしまった。お互いの一瞬の苛立ちが、完全に別のスイッチを押した。


「…バカ」

「…サチ、なんて言った?聞き間違えかもしれないから、もう1回言ってくれる?」

「バカって言ったの!耳までおバカなの!?バカ!ゆーくんのバーカ!」

「何回バカって言うんだよ!ボキャブラリーまでお子様なのか!?」

「また子ども扱いした!ゆーくんなんて、もう知らない!」

「あー、そうですか!こっちも静かになって助かるよ!」

「泣いて謝ったって許してあげないんだからね!」


 倖楓がそう言って自分の弁当を持って生徒会室から出て行く。足音が遠くに行って、室内が静かになる。すると、ずっと黙っていた茉梨奈さんがやっと口を開いた。


「私からすれば、どっちもお子様よ」

「…自覚してますよ」


 ため息交じりにそう言い返すことしか出来なかった。

ついにケンカしちゃいましたけど、あまり心配しなくて大丈夫だと思います。

ケンカするのかよって思った方がいたらごめんなさい。

ケンカするほどって言いますし、見守ってくださると嬉しいです。


22時頃に更新があると思います、よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんか雲行きが怪しくなってきたと思ったけど徐々にケンカのレベルが下がって来て最後の方はなんか小学生のケンカになって来てるのがなんか微笑ましい。
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