4.情
「はぁはぁはぁ、ぁっ……………」
「強情ですねぇ、教えてくれたっていいとは、思いませんか?」
短髪の男は、鎖を軽々しく扱う。その鎖は、手足を壁に固定された女へと向かった。
「っ、答えないわ。なにされたってねぇ?」
鎖の先の片手に収まる鉄球は、動きを止めない。顔、腹、太腿、と当てられていく。
…………いくら魔人が丈夫と言っても、これ以上は……。このまま聞き出せずに殺すのは……。
男は悩んでいた。ちらと女の顔をみると、疲弊しているようだ。が、それでも残る瞳の気力が目に付く。消えない未来。その様のなにかが引っ掛かる。観察をすれば気づく。耳飾りだ。立体の菱形の耳飾り。いつでも、身に付けていたそれ。それがひとつ、女の耳から消えている。
いつだ、いつから、この部屋では……ないはずだが__女の得意なものには、幻覚、幻術がある。だが、器具も部屋そのものも拷問用に合わせてあるのだ。万が一は……と思うのが普通。
だが、耳飾り。あれを気にしないはずはない。見逃していた、それはつまり__。
それでも、粗は探せない。空間も女も現実にしか感じられない。見えないのだ。だが、それは拭いきれない齟齬。男は淡々と告げる
「お前、裏切ったな」
「今更なに?」
瞳の闘志は、馬鹿にしてに揺れる。見知った色を瞳に映し合って。
「はぁ、お前、手はないぞ」
「……」
女は黙して動かず、「もとより承知か、なら、こちらも仕事だ」と続ける。
「仕事で戦争をするの?」
男はわずかに眉根を寄せた。
「いいじゃない、最後の雑談よ__?」
武器を握る男は女を見つめ、僅かに腕を動かして握る姿を整える。
「つれないわね」
「どちらがだ」
寂寞が漠漠と広がり、哀愁がささやかにその場を揺らす。のは、一時だけ。




