第49話 とにかく、まずはひと山越えたってことでしょーか?
大幅に、遅れてしまいました。
さらさらと、紅い粒子を姿勢制御用に下方噴射しながらふわっと地面に降り立つ。
えっと、ランディングギアが邪魔……じゃないよーです。
そりゃ、離発着用なんだから邪魔になっちゃよくないよね。
こういう感じで角度付くんですね。
(ふみふみ。ほんとーはホバリングしながら対峙する方が雰囲気出るのですよ)
えっと、それじゃ目の前の人と目線が合わないじゃないですか。
ただでさえランディングユニット分目に見えて身長がかさ上げされてるって言うのに。
(ふみふみ。それでちょーどなのですよ。しょたさいきょーなのれふ)
たしかに、ぼく、エルフのにじゅっさい。
人間だと子供クラスのしょた具合だから仕方がない……って、ちょー気にしてるのに。
(ところで、いいのれふか?)
はい?
(理奈と漫才しててもいい状況なのれふか?)
目の前には、エルフの弓手さんがいます。
って、ぼく、この格好!!!
理奈だったらかっこかわいいフルアーマーバージョン。
もちろん、フルと言っても直に装備しているのは飛行補助を兼ねた脚部装甲と、ランディングギア。肩出しショルダーガードにリストガード、大きなリボン状のヘッドドレスギア。
うん、ネックガードがあるけど、胴回りは白すくなんだよね。
……って、この格好でルミフェナさんとなの!?
め、目立つよね?
***
紅い粒子を纏わせたまま、彼女に正対する。
どう考えても、ぼく、赤い顔してる。
その戦果に上気してるから?
たぶんそうじゃない。
こんな格好で人前に出なきゃいけないから。
どう考えてもかわいい女の子じゃないと似合わないような恰好なのにぼくなんだよぉ。
えっと……は、はずかしぃ。
「な、なんなんですか……これは……」
「……ぅぁ……だ、だいじょーぶ……でした、か?」
「あ、ありがとうございますー……って、その声……?」
少しでも敵の数を減らそうと使い慣れた感のあるコンポジットボウを番えたまま、呆然とした感じでぼくの方を向いてます。
って、矢がぼくに狙いを定めてますってば。ぼく敵じゃないっすよ?
と言うか、一瞬でばれちゃったの?
出会ったのって一瞬だったような気がするんだけど。
「あんりきゅん?」
「は、はうぅ……」
ルミフェナさんの問いかけに、まともに返答できない。
……というか、きゅんなの?ルミフェナさんまでぼくのこときゅん呼びしちゃうの?
あ、そもそもお姉ちゃんにアンリきゅんで紹介されちゃってたんだよ。
で、の、ノリノリだったような気が、うん、遠い記憶が……遠い記憶過ぎて思い出せなかったりもし……うん、スミマセン。
「す、すごい前衛的な、鎧?なんですねー?……って、浮いてるっ!?そ、それに、隠せてない……おっきくなってる……(ぽっ)」
や、やっぱりなんですね?
あんなことしちゃった後だもの、そりゃ、強制的に興奮もしてしまうわけで。
スーツの構造上、ぽろりしてないってことは判って(その衣擦れの感覚で確認できてる……って、すべすべ……あううっ)るけど、確かにその指摘、くりてぃかるデス。
「………………そ、その弓を……下ろして……くれません、か……?」
い、いのちのききで、それがでんじゃらすで、うああ、なにがなんだか、や、やばいんですってば!
こ、これ以上、……も、もっとなっちゃうの?もっとみせられなくなっちゃうの?
「え、ええ。……え?」
あ、ターゲッティング、外れた。
よかった。
どうにか彼女に弓を下してもらうことには成功したけども、
「この状況に、その格好……分かって、こちらにいらしてる……ってこと、なんですよねー?」
「は……はい。ぼくは、あなたと、王子を助けに、ここに来ました」
「え?せしるきゅんだと?……………………………………………………ナニ、イイマシタ?」
「あっ……」
おおう、これ、藪蛇だった?
というか、王子サマまで、きゅんなの?きゅん呼びなの?
さすがにお姉ちゃんに染まってることだけのことあるんだねー。
……確かに、それ相応の年ですけど。
って、そうじゃなくてですね、
うぐっ、もしかして、ルミフェナさんは管理組合の仕事として真っ先にここに駆け付けただけなの?
「どこに、いるんですか?」
「……」
「ど こ に い る ん で す か ? ? ? ? 」
「こ、コノサキデス」
「そうなんですね。王子様の悪運、ここに極まれり、ってこと、なんですね?」
あれれ?ルミフェナさんの物言いがちょっと想像してたものと違うんですけど。
そこで、すぐにテンション下がっちゃうんですね。
おーじさまのこと、助けなきゃじゃなくて、あきらめの方になっちゃうんですね。
つまり、ハメられたって、そう思ってるんですか。
ルミフェナさんがそう思っちゃうような境遇なんですね。
「…………」
「分かってます。分かってますよ。私には無理だってことぐらい。キミがこの瞬間、この場所に来てくれてなかったら、私はこうしてお話しできてなかったことぐらいは分かってます。あんなのに、弓一張で?……おかしいですよね。冷静に考えてみれば、無理にきまってます」
「…………」
えっと、確かにそーですね。
遊撃職一人って、さすがにどーしよーもないですって。
ボクデスカ?
しゅーたーなので、遊撃職っぽい?
うん、どう考えても殲滅職ですよね、あくまでこのモードの時は。
……というか、どう反応していいか分からないんですけど。
「で、行ってくれるんですよね?あなたが、行ってくれるんですよね?」
「も、モチロンデス」
「ならお任せしてしまっていいですよね?私、少しつ……」
「そ、それ以上はいけない!フラグが立っちゃう!!!」
「え?……すでにたってます、よね……?」
それ言っちゃだめなやつ!
だって、さすがに、それはどう考えても死亡フラグ以外の何物でもないです。
……って、止めたつもりが違うこと言われちゃった?
「と、とりあえず、『体力回復』」
「ひゃんっ!」
「す、すみませんです?」
「もう、お嫁にいけないですー」
うん、精霊魔術の方の回復呪文は射程が接触なんですよ。
なので、触っちゃいました。
で、ひゃんなんて言われちまったのですよ。
と言うか、それだけでお嫁にいけないとか、そういうもんじゃないでしょーに。
***
「うにゃあああああ、いいとこ取られたにゃああ」
「「はい??」」
ルミフェナさんとハモっちゃいましたけど、え、このタイミングなの?
前触れも、兆しも、物音ひとつなかったんですけどっ!
どっから登場したのっ!
「ソルっち、ルミっちのピンチに華々しく登場にゃっ!って、すでにあんりきゅんに回復までされちゃってるんですけど、どういうことにゃああ。ヨ、ヨメが取られるにゃあああ」
「お姉ちゃん、スティスティリアじょおー様と一緒だったんじゃ……」
「あんにゃくそばばーなんぞ、近衛れんちゅーがいればどうってことないにゃよ」
「く、くそBBAですかー」
「森林王国だっちゅーのに、原理主義者どもをどうにもできない段階でどーしよーもないのにゃな」
真言魔術至上主義で、原理主義と言う話ですかね?
そっか、それが人間至上主義にもなるという。
うん、それで精霊魔術排斥運動をコントロールできてないと。
……えっと、この国の成り立ち的にはしょうがない問題だったよ―な気もするんですが、どうしてこのタイミングでお姉ちゃん持ち出してきたんでしょーね?
「それよりもなによりも、今はルミっちの方が一番心配なのにゃ。だから、ここに駆け付けたのにゃ!」
「それは分かりましたけど、どうしてそれでここが分かったんでしょーか」
「そんなの、あい、に決まってるのにゃああ」
「「……」」
「だからにゃ、ここはまかせて、さっさと前に進むのにゃよ。るみっちはそるに任せておくにゃね」
うーん、なんだか信頼できないんですけど。
でも、考えてみたら、おーじさまはこの先にいるんだし、すでにモンスタースタンピードはここまで到達してるんだから、おーじさまは飲み込まれてしまってるわけで。
えっと、ミッション失敗通知がやってきてないんで、まだ沈んではないわけなんだけど、いつどうなるかわかったもんじゃない。
「えっと、行ってしまっていいんでしょーか」
「イッちゃっていいのにゃよ。さっさといってしまわないと、大変なことになるにゃよ?」
「……まー、この国にとってはそーでもないと思いますけどねー」
ルミフェナさん、それ、黒いですから。
と言うか、ぼく、いってない!いってないったらいってないんですからねっ!
こ、怖くて下の方は確認できないんですけど。
うん、感覚的にたぶん収束してました。
◇◇◇◇◇◇
「ところでのぅ、今回の襲撃、どう見るべきか?」
「敵国からの妨害……にしては、あながち感が強い。と思われます」
「ここの作者が何かに触発されて、とかいう話ではないのか?」
「さすがに、それならば、この段階で南から敵本体がクリスタパラストに向かって侵攻するでしょう。そういった報告は受けてないのでは?」
「確かに、余のもとには来てないのじゃが……」
「…………本当にだいじょーぶなのかにゃー……だいじょーぶにゃら、そるもパーッと暴れておきたいところにゃが……」
「確かにの、先のヘンテコが正面、イリア殿が右翼となれば、残る左翼を誰かが埋めなければならぬ」
「我が国の兵がいるのでは……」
「即応できぬのじゃ。間に合わぬであろう。であれば、本体は最終防衛線で待ち構えていた方がまだ準備に時間が取れる分、確度が上がるじゃろ」
「その通りにゃから、とっとと向かっていいかにゃ?」
「その混乱に乗じて、我が国を見捨てるというようなことは……(じろり)」
「(・_・)ゞ……ぽりぽり、シュター」
「!!!逃げるでない!それに、おぬし、イリアに能力譲渡して弱体してるのでは……」
「……イリア殿は精霊です。ですから、彼女に譲渡できないものがあればそれで十分……」
「ぬかった!ぅぉぅっ……本当に飛んで行きおった」
「王の癒し手殿は、あれでいて宮廷魔術師としても文句なしの実力はあります」
「むきーーー、あれでは逃げられるのじゃあああああ」
「……最近、彼の殿はそういう雰囲気を醸し出されておりましたから。潮時と言うものでしょう?」
「仕方ないじゃろう!……柵と言うものがあるのじゃ」
◇◇しかくしかく◇◇
「では、参ろうか」
「「「「「「「「「「ぎゃわぎゃわぎゃわ」」」」」」」」」」
「ふんっ!」
「「「「「「「「「「ぎゃーーーーーー」」」」」」」」」」
「…………他愛無い」
あまりに久方ぶりの更新にもかかわらず、こんな感じになってしまいましたが、ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
とにもかくにも、生きてはいますです。はい。
イメージだけがあっても文章にならなかったら意味がないわけで。
いつになるかは分かりませんが、きりのいいところまではどうにかしたいと思っております。
(さすがに、こんな体たらくで本年もよろしくお願いしますとは言えませんです)




