第38話 暴走せし心は、肉体を(文字通り)拘束する
なんと言いますか……説明回?
エクセリナを成長させる……
……ぼく自身のチートはさすがに現状ではリスクが高すぎるのです。
ぼくの耳に装備されている勇気の源の耳あてには、余剰MPを理奈のBPに変換する機能が付随していたりします。
今なら、理奈をチート気味に成長させることができちゃうんじゃないかと思うのです。
……その分、ぼくが快感に溺れてしまいそうな気がものすごくするんですけど。
多分その予感については間違ってないよね。
ともかく、今なら少々無理なことをしても、既成事実化してしまえると思うのですよ。
だって、こんな部屋に放り込んで放置しているんだから、少々のことには目をつぶってもらえるんじゃないかって思うのです。
で、理奈のステータスはこんな感じ。
名前:エクセリナ=エレメンティア(理奈)
種族:精霊:勇気
…………
HP:2
MP:10
職業スキル:戦士4 精霊魔術師5 賢者1
ユニットレベル:3→6
(ストックMPが30から60に増えただけ)
現時点ではどうしても職業スキルが中途半端に見えてしまうのです。
通常成長のマックスは10。
5レベルでは十分にベテランの域に入るけども、強力なモンスターが現れると太刀打ちできない。
そういう風なルールになってるので、このままじゃ理奈が切り札にならない。
なので、職業スキルをもう少し上げておきたい所。
しかし、現状の成長アルゴリズムがデフォルトでBP獲得時の持越を行わず、使える項目に即座に使用する形になってる。
……確認はしてないけど、今までのことを考えると多分間違ってはいないよね?
で、これが問題。このままだと、成長と言ってもただひたすらに理奈のユニットレベルだけが上がっていくだけ。稼動限界が伸びたりとか、新たな固有技とかは増えるんだけど、戦闘の基準となる職業スキルが上がらないことには強敵に対して当たらないし通らない。その上、ユニットレベルが上がれば上がるほどどんどん成長が遅くなるんだよね。どうにか変更することって出来ないのかな?
<ミッションや戦闘経験値に基づくBPの取得に対してユニットレベルの補正はありません。従って、ユニットレベルの上昇に伴う成長鈍化は不適切な表現です>
<なお、理奈のアルゴリズムに関する改変に必要なポイントは以下の通りとなります>
・自動処理タスクの書き換え:1アクションに付き1ポイント
・タスクマネージャーの導入:8ポイント(書き換えは1日1回ま
で)
・BPリモート処理システム構築:30ポイント(BP自動処理解
除を含む)
・AI設定の変更:80ポイント~
えっと、間違ったこと言ってすみませんでした。
正確には、吸精システムを介したBP取得について、ユニットレベルの上昇により困難になる。でした。
……現在のところ、吸精システムを介した獲得以外でのBPの入手方法の目処が立っていないんですけど。なので、成長鈍化だ!って、言い張ってもおかしくはないと思うんですが、そうですか、このシステム自体がイレギュラーだっていうことですか、ほんとすみません。
さて、アルゴリズムについてはボーナスポイントを使えばどうにかなるんですよね?
……本当なら、今この瞬間にも理奈のBPリモート処理システムを導入しないといけないと思うんですけど、ぼくのBPが足りてないです。ぼくのBPって、24点しか残ってないのですよ。つまり、わざとなんですよね?物語の進行上の。
本当、BPの還元制度とかないのかなあ?
<すでに消費したBPの取り戻しは認められておりません。また、理奈が所持するBPの還流も認められておりません>
さすがに、それは駄目ってことなんですね。
それが出来てしまうと獲得した経験点を使用してのキャラクターのリセット再作成ができちゃう羽目になるから、……うん、確かにそれはゲームとしてはどうかしてる。
世界そのものが効率化と言う名のハイパーインフレに巻き込まれてしまって、手の打ちようがなくなって閉鎖に追い込まれる。
そんな未来が見えちゃうもの。
……欲しがりすぎるのよくないのです。
なので、どうするかはひとまず保留にして、その他の部分を埋めていくのですよ。
で、次の項目としては、今僕が装備している勇気の源の耳あての性能に関する部分。
勇気の源の耳あては、現状1時間当たり1点しかMPを吸収してくれない。
例外は、複数BP消費によるマルチMPブースト時のオーバーフロー時に生じる吸収のみ。
なのでですね、職業スキルを上げるためにマルチBP獲得を狙うためには………………き、危険だけれども、1時間当たり、1点以上吸収できるようにしちゃう?やっちゃう?
だって、MPは5時間で完全回復するんだから、もう少したくさん吸われてもいいんじゃないかと思うのです。
『1ポイントを消費して、勇気の源の耳あての吸精能力を強化いたしますか?強化により、以下の機能が拡張されます。
・エニタイム吸精OKシステム
・吸精ブーストシステム
・プログラマブルシステム予約モード
Y/N』
おっ、こ、これは安い。
1ポイントで全部ついてくるんだもの。
まあ、作者にとってやりやすくなる方向だから、安くなってるんでしょーね。
なので、これはさっさと『はい』を選択しておくのです。
『ボーナスポイントを1点消費し、勇気の源の耳あての機能強化を実施いたしました』
と言うことで、機能説明お願いします。
<勇気の源の耳あて:オプション機能説明……以下の通り追加機能が実装されました>
・エニタイム吸精OKシステム
装着者もしくは吸精者が任意に吸精モードを発動できる。
・吸精ブーストシステム
装着者もしくは吸精者が1回当たりの吸精量を任意に設定できる。
ただし、装着者の現有MPを越えて吸精することはできない。
・プログラマブルシステム予約モード
規定時刻もしくは規定トリガー発動に対応して吸精モードの実行
を予約することができる。複数ステップの設定が可能。吸精ブー
ストの設定も可能。なお、予約モードに限り、装着者のみ設定可
能。
ん?
ちょっと待て。
この説明文、主語がおかしくはないですか?
この文面だと、理奈の意志で好き勝手出来るように読めるんですけど。
(うにゃ!……げへげへ。これってもしかして、理奈が好きなだけお兄ちゃんの耳をはむはむできると、合法的に、一方的に、ヤれると、お兄ちゃんに認めてもらったと言うことなのれふよ!)
さ、さすがに反応が早いのですね、我が妹君は。
(でも、理奈は理性的な妹なのれふ。獣ではないのれ、常にあるだけ吸うなんてそんな下品な真似はしないのれふよ)
ほ、本当に?
(た、多分なのれふ。十分にストックMPが貯まっていれば大丈夫なのれふよ)
……戦闘モード解除後の、ストックMPが枯渇している時は勇気の源の耳あてを装備しちゃいけないってことですね。
(理奈としてはどんな状況でもエニタイムばっちこいなのれふよ?)
ばっちこいって、そう言う意味じゃないでしょうに。
と、ともかくですね。
何だかんだ1時間経てば、ぼくのMPは満タンの32点に戻ってるし、そのタイミングで、じゃないか、もうエニタイム吸精おっけーになっちゃったから、任意で吸えちゃうんだ……
と言うことでですね、アナウンスさん、よろしくお願いします。
『ボーナスポイントを1ポイント消費し、自動処理タスクを【BP獲得の度にBP処理シークエンスを実行する】から、【毎日午前6時にBP処理シークエンスを実行する】に変更しますか?Y/N』
『はい』を選択。
『ボーナスポイントを1ポイント消費し、理奈の自動処理タスクを変更いたしました。理奈のステータスウィンドウに現在の自動処理タスクに関する情報が追加されました』
これで第一段階終了。
で、次なんだけど、これにはちょっとだけ勇気がいる。
さっきも触れたけど、お姉ちゃんはぼくがチートするのを嫌う。
だから、本当はやっちゃいけない、やるとまた怖いことになるかもしれないって思う。
でも、以前もこれは許してもらえてた。
だから、今度も大丈夫だと、そう思いたい。
というか、今、お姉ちゃんいないし。
だから、大丈夫。
やっちゃえよ。
……うん、やっちゃう。
『ボーナスポイントを3点消費して、MPを+18しますか?Y/N』
…………『はい』を、選択、した。
『ボーナスポイントを3点消費して、MP最大値を+18し、50としました。同時に、MPを全回復しました。3回分の全回復のうち、2回分をインターセプトされました』
<エクセリナのストックMPはフルチャージされています>
<余剰MPがBPに変換されました>
<エクセリナはBPを12ポイント獲得しました>
<BP処理シークエンスは明朝6時に実行されます>
合計、72点の余剰MPが発生したんだけど、理奈のユニットレベルは6になっているので今回取得できたBPはたった12点。
でも、もう12点確保してしまった。
なので、後戻りはできない。
時刻は、19時を過ぎたぐらい。
……ちなみに、この部屋に時計なんて高級なものはありません。でも、時刻については情報ウィンドウを開けばいつでも確認出来たりするのですよ。
そこ、ご都合主義とか言うな。
……設定時刻までは、10時間以上も残ってる。
有効に利用したい、……したいんだけれども、一歩間違えると大変なことになる。
どうしようかと見回したら、温かみのある魔法の光に照らされて、壁に何かが書かれているを見つけてしまった。
何と書いてあるのかな……
げええ!
そんなこと壁に書いてるんじゃないよ……
……でも、そっか、そこまですれば、無茶なことをしたとしても、逆にぼくの命だけは絶対に守れるかもしれないですね。
ここまでやっちゃったんだし、これも踏まえて、いけるとこまで行かないとこの部屋にも失礼な気がする。
で、考えをまとめました。
何とも言えない震えに襲われる。
これからやろうとしてることは、だめなことだ。
肝となるのははむはむされる耳あての吸精プログラムの設定。
これを間違えるとやばいことになる。
そして、時刻も重要になる。
ウィンドウ画面で分単位で確認。
そろそろかなと、ゆらりと、歩いて、
X型の拘束台の前に、ぼくは立つ。
ああ、始めよう。
インモラルな、一度きりのBP稼ぎを。
両足を広げる。
一音、一音、はっきりと、間違えないようにしながらワードを紡ぐ。
「きゃすと、おふ、あっと、ふぁいぶ、ふぃふてぃー、……あ、あんくるばいんど」
両の踝を、磔台の下方から伸びた鎖が拘束する。
かちりと、足枷がはまる。
もう、足を閉じることはできない。
少し、弛みがあるけど、この後のためのもの。
両手を上げる。
「り、りすとばいんど」
両の手首を、磔台の上方から伸びた鎖が拘束する。
手枷から伸びた鎖がきりりきりりと巻き上げられる。
体全体が浮かび上がる。
「ぐ、ぐぅ……」
手枷……手首の部分に体重がかかる。
しょたえるふでいくら体重が軽いとは言え、ちぎれそうな痛みを感じてしまう。
「せ、せっと」
X型の交叉部分から金属製のベルト状のものが出てきて、ぼくの腹部をがっちりとホールド。
手首の負担は減り、完全にぼくは拘束された。
でも、まだ十分じゃない。
ウィンドウに表示された時刻表示を確認する。
……今だ。
最後に、一言。
「り、りっぷすぼーる……」
次の瞬間、強烈な何かを感じる間もなく、ぼくの意識は闇に墜ちた。
不安も、予感も、そう言ったものを全て道連れにして。
キャラクターステータス……
あんりきゅん
最大MP:32→50
ボーナスポイント:24→19
MP:0/50
理奈のステータスに関しては次回掲載します。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。ぺこり。
おかげさまで、この物語もどうにか2000ユニークに到達いたしました。
読んでいただけた皆様に感謝です。
ブクマ、評価いただける皆様には、もっと感謝です。
次回は、おまけ回の予定です。
頑張ってはいますが、時間がかかりそうです。
……ほんと、遅筆ですみません。




