第37話 そんな環境だから余計なことをしたくなっちゃうという病
いろいろ遅くなってすみません。
その上こんな内容になってしまってすみません。
さすがに8000字を超えてきたので2話に分ける形となりました。
ずり……ずり……ずり……
ぶちっ
ばさり
ふー。どうにか縄を着ることができました。
じゃないよ!
切ることができました。あんりでございます。
縄を着るなんて、ぼく、そんな変態さんじゃないんだからねっ!
うん、この部屋にいるだけで何だか変態になれそうな気はしてますけども。
まあ、どうやって縄を切ることができたかは、先程の音声で判断いただくとしまして、続いては晩ご飯をどうするかと言う話。
……じゃなくて、灯りどうしましょう?から始めないとだめですよ。
残照もすでに消えてまして、星明かりが瞬き始めております。
確かにこれも趣があるといいますか、きれいなんですよ?
これまで、ずっと森の中にいましたから、こう、ずばばばんと空を見上げることもできなかったですから。
木々の間から見上げる星空もきれいでしたけど、こう、遮るものなしに星空が迫ってくるとですね、迫力がすごいのです。
星降る夜なんてべたな表現がありますけど、すみません。そう言う表現しかできないですね。
…………
宵の口だというのに、満天の星空がぼくを包み込もうと躍起になっている。
瞬きの瞬間に表情が変わっていく。
示し合わせているわけでもないのに、めくるめくその表情全てが美しくて、ぼくの頬を涙が流れた。
感動で流したはずの涙が、ぼくを予感へと導く。
唐突に、不安になった。
…………
えっと、妙な表現になっちゃってますけど、天井はありますからね?
向こう側が1面、全開口なだけですから。
さすがに、これで天井がありませんでしたとか言ったら冗談以外の何物でもないんで。
<検索しました。1レベル真言魔法に光という魔法があります。効果時間は12時間持続となりますので、1度使用すれば原則として翌朝まで灯りは保持されます。なお、2レベル精霊魔法に光の小精霊召喚がありますが、効果時間は1時間となりますのでお勧めは致しません>
デスヨネー。この手の光の魔法って基本中の基本デスヨネー。
でも、ぼく、知らないんだから教えてもらわないことにはどうしようも出来ないのです。
……魔術書見ろって?
星明かりの下で細かい文字を読めとおっしゃるのか?
ともかくですね、教えてもらったので光っと。
ひゅーっとほんの少しだけMPが抜けていく感覚の後、
音もなく、ふよっと光の球が発現しました。
うん、なんか魔法の光なんだけど、安心できる明るさと言うか色合いと言うか、文明を感じられていいですね。青白い方じゃなくて、暖色系の方なのです。ほっとします。
ところで、気付けばヘルプさんが復活しておりましたね。
さっきまで、まったく出てこなかったんですけど、どうされました?
<時間経過によりこの部屋の干渉力場が緩和されました。そのため、各種機能が復旧されております。ただし、現在も一部機能は使用不能となっておりますのでご注意ください>
えっと、制限機能って?
<2レベル以上の魔法は使用できません。また、指定されたいくつかの2レベル以上の魔法の効果を発揮するマジックアイテム類も封印状態となります>
一部機能って、ほとんどの機能じゃないのかよう。
使える魔法は1レベルのみって、厳しくありませんか?
……と言うことは、脱走防止機能が生きてる、と言うか存在してるって解釈でいいのかな?
<その認識で問題ありません>
……飛ぼうとしたら墜落するんですね。
あー、じゃあ、やっぱりあの開口部分はそのまま外になってる上に、不可視の柵とかのセーフティーネットもないと考えとかないといけないのかあ。
でも、光の魔法と同じく基本中の基本、解錠の魔法って何レベルでしたっけ?
<解錠の魔法は、1レベル真言魔法に存在しています>
じゃあ、解錠の魔法は使えるんだから、その魔法でこの扉を開けることは可能……ってことで合ってますでしょーか?
<その通りです。ただし、お勧めは致しません>
そういう助言になるんですね。
でも、確かにここまで上がってくるのはひたすら螺旋階段でした。
途中で扉の類が何にも確認できなかった……ような気がする。
あんまり周り見えてなかったからなあ。
で、もし本当にこの扉を開けた向こうが一本道だったら、どこかで誰かと必ず会ってしまう。
会ってしまえば、ぼくが脱走しようとしたという事実が生じちゃう。
そしたら、ぼくは脱走すべき理由があるんだと認定されちゃう。
そして、本当に罪人になっちゃうんだね。
結局誰かが迎えに来るまで、ぼくはこの部屋でじっとしておかないとあらぬ疑いを掛けられてしまうんだ。
そして、かけられてしまえば疑いを晴らすことなんてできない。
うん、晩ご飯に逃避しよう。
ごそごそ
すちゃ
まぐまぐ
すちゃ
以上!
短い逃避だったよ。
だって、こんな所に食事が運ばれてくるなんて誰も思わないので、マジックポーチに大量にある出来合いのものから1食分出してきて、食べて、残った食器を元のマジックポーチに戻して、おしまい。になりました。
……って、本当に食事は運ばれてきませんでしたよ。
ぼくの立ち位置ってどうなんでしょうね。
罪人としての自滅待ちになっちゃってるのかな?
豪華なベッドがあるんですけど、やっぱり罠だったりしちゃう?
と言うことは、この部屋で安全に寝るためには、例えばベッドを縁にして石床で寝るとかと言った快適でない方法を取らないといけないような気がしてならないのです。
石の上って……痛そうだし冷たそうだなあ。
で、辺りにあるもので考えると……って、ねえ、
繋がれる……拘束されるんだから、そういうリスクは無くなるけど、別の問題が発生しないかな?
じゃあ、跨るとか?……論外。あの鋭利さを見ればお股が裂けてジエンドになる未来しか浮かばないね。
そのおかげで縄が切れたんだし。
(ところで、一段落ついたように見えるのれふが、吸われまふか?)
っと、理奈からの再リクエストが来ましたよ。
うん、特に今すぐ何かやらないといけないこともないし、積み重なる方が怖いんで吸われちゃいますかね。
(じゃあ、スキップしてた分も含めて、5点頂くのれふよー)
え?あ?……うはっ
あ、そこ、み、みみのおくぅ……
はいってくるぅ……
へちょ……にゅるっ……
の、のうに、ひびくぅ……
「ん、んあーーーーー」
おまけで、もひとつれふよ!
「あ、ああっ、あー」
しょろろ……
迂闊でした。
無理でした。
我慢できませんでした。
通常の5倍は、やっぱり半端なかったです。
うん、すごく、きもち、いい……
だから、ひさびさに、出ちゃった。
誰もいなくてよかったよ。
お姉ちゃんとかいたら、襲われてたかもしんない。
めいどさん?……な、何が起こるか……ガクブル
ちなみに、やっぱり向こう側は全面開口なので、臭いが籠ることはありませんでしたよ。
(ふえー、これでやっと満タンなのれふよー)
って、え?これで満タン?
もしかして、さっきまでストックMPフルチャージじゃなかったの?
(そうれふよ?さっきまでストックは55点だったのれふ。今回5点チャージしたのれ、晴れて満量60点ストックになったのれふよ)
ん?フルストックは60点って、どゆこと?
この前確認した時って、フルストックは40点じゃなかったっけ?
(違うのれふ。今は60点なのれふ)
ち、ちょっと待て。
じゃあ、もしかして、理奈のユニットレベル、今、いくつだったりします?
(そんなの、6レベルに決まってるのれふ)
えっと、ぼく、理奈のレベルが上がったアナウンスは4までしか聞いてなかった気がするんですけど。
いつの間に上がっちゃったんですかね?
(5レベルに上がったのは昨日の夕方で、6レベルに上がったのは今朝方れふよ?)
あの、作者さん?その時間帯って描写してませんか?
なのに、どうしてそこでアナウンスさん発動しなかったんですか?
忘れてたのを必死で計算してたということなんですね?
でもって、ここでこういう話題を出してきたのには意味があるんじゃないですか?
……あー、答えるつもりはないんですね、自分で考えろと。
…………
考え込んでしまったから、なんだろう。
不安とばったり出会った。と言うか、再会した。
逃避してたんだけどな。
……違うか。
逃避しようとしていただけで、常にそれは在った。
焦燥感に支配される。
今、ぼく自身が出来ることをやらないと、駄目なんだ。
次の瞬間後悔するのだ。
だから、やるんだ。
この場で出来る、現実逃避を。
…………
ここは、魂癒の塔の最上階の天国部屋。
誰もいないし、こんな所まですぐに誰が来るかも分からない。
……考えてみれば、
夕方を過ぎて誰も食事を運んで来なかった。
結構な痴態を晒していても、それでも誰も来なかった。
つまり、誰も来ないし、監視もない。のだと思う。
逃げられないような、おそらく飛行系魔法に対する封印結界があるから、わざわざ監視のためにここまで登る必要はないって感じだろう。
だから、なにかするんだったら、今が一番じゃないのか?
……ぼく自身をチートしてしまうとさすがに角が立つ。
お姉ちゃんとかはチートに否定的だ。
下手にチートキャラになってしまうと、またお姉ちゃんの手で消されてリセットってことになりかねない。
それに、この世界を変えるためにも、今、この世界のシステムがどうなっていて、その枠内でどのような活動ができるのかを知らないといけない。
知ろうともせずにチートキャラになってしまったら、この世界を見る目が曇ってしまう。
この世界の不便さを実感できなくなってしまうから、まだ時期尚早なんだ。
お姉ちゃんは勇気の源の耳あての余剰成長システムですら、ただユニットレベルが上がるだけならいいかなと言う感じで受け止めていたから、裏技的に理奈を成長させようとしたら文句の一つも言ってくると思う。
さすがに、理奈は精霊という枠組みなので消そうという所まではいかないだろうけどね。
あれでいて、お姉ちゃんはこの世界のありように対して結構保守的なんだ。
心の底では、この世界の神が望んでいるようなトラディショナルからの脱皮を肯定的には受け入れてないんじゃないかって感じる。
だって、今のこの世界のルールの中でお姉ちゃんは最強に近いステータスを有している。
既得権益は守りたいよね。
<あくまで、上記見解はアンリの勝手な思い込みによる一つの仮説であり、その真偽については保証致しませんのでご承知おきください>
って、なにヘルプさん逃げを打ってるんだよ。
まるで、さっきのぼくの見立ては完全に間違っていて、お姉ちゃんをただディスってるだけだって言ってるようなものじゃないのかよう。
<……>
…………
理奈を成長させて、いざという時の火力を上げる。
恐怖と、不安と、予感と、焦燥感を天秤にかけた着地点。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
微妙によくある物語っぽい感じが入り込んできて大丈夫なのかよとも思ったりしますが、そもそも同一世界の物語デスヨネーってことで。
理奈のユニットレベルに関しては、アナウンスの入れ忘れでございます……うん。あんりきゅんが興味を持ってなかったので忖度されて省略されてたんですよ……って、やっぱり苦しいなあ。
次回は連載40回目ではありますが、本話の続き。
折角、諸条件揃ってるんだから、有効活用しないとね☆ということで。
次回は2週間待たせることはないかと思います。
多分、7/14(土)か7/15(日)あたりです。




