第33話 精霊は命令を受けて (真言魔法の国の精霊使いな王子さま 後編)
いちよう、このお話で本章終了です。……デスヨネ
堂々巡りな会話と言うのは時間の無駄なんです。
つまり、今、こうして物語になっている時間はすべて無駄なのです。
た、タスケテー。
と言って事態が急展開する訳はないんです。
って、あれ?
こそこそっとお姉ちゃんの左手が動いてる。
王子様には見えないような位置で、うにゃらうにゃらとなんだが複雑な動きをしてますよ?
ちょっと、ぼくには真似のできない動きなんですが。
(えっと、なにかごようでございますか?)
お姉ちゃんの手の動きが一段落したように感じた瞬間に、それは突然現れた。
誰もいないはずのぼくの隣で、目には見えない何かが反応している。
(え?なんでしょう?……なになに、あ そ こ の お と こ の こ を す き に な っ て ほ し い ですか?それは、めいれいですか?)
可愛らしい、涼やかな声が復唱しているのは、それはそれは残酷な命令だった。
いきなり……というか、お姉ちゃんも処理に困ってたんだね、王子様のこと。
だから、押し付けようって魂胆なのかな?
どうやら、ぼくの隣の気配も迷いがあるようで、お姉ちゃんの左手が再び忙しなく動いていた。
(めいれいじゃない、おねがい、ですか?)
お願いとか言った所で、お姉ちゃんの精霊魔術師としてのスキルレベルを考えれば、もうこれは強制以外の何物でもないと思うんですが。
それでも、今後のことを考えて、お互いに着地点を探っているように見える。
(たしかに、きらりとひかるものはありますけど、なんだか、くもってもいて、あともうちょっとってところだとおもいます)
あー、お隣にいる見えない気配の主も王子様のことはそういう評価なんですね?
子供っぽい所もあるけど、微妙に鼻に着く所もあってアンバランスだと。
それは作者のびょーしゃ力のなさに起因してるだけのような気もするんですが、この感じが王子様の素だって言うのなら、大国の王子としての傲慢さって言うのも育ち始めてるような気もするところ。
うん、きゅん呼びしちゃえや!って思っちゃうぐらいには。
(しょーじきなかんそうをいっただけです。……えっと、じ ゃ あ 、 お と も だ ち か ら は じ め て く れ ま せ ん か ?うーん、そうですね?そこからなら、りょーかいです)
っと、契約は完了したみたい。
無難な着地点と言ったところですか。
……うん、裏側覗いているようで、切ないです。
っと、お姉ちゃんの左手の動きがさらにスピードを増した?
(なになに?へるぷみー、はやくしてほしい?もう、わがままなんだからー。じゃあ、おしごとおしごとーっと)
えっと、ちょっと聞いてもいいかな?
(なにー?そこのこわーいおねーちゃんからのしごとうけたまわっちゃってるからてみじかによろしくね!)
あなたのしょーたいと名前だけ、教えてくれるかな?
(わたし?……ん、んんっ……私はミルフェ。風の精霊よ。これから、そこの男の子の生涯のパートナーになるの……永い時を存在する精霊からすれば、ほんの一瞬。単なる気まぐれ。でも、請け負ったからには、最後まで演じて見せるから、何かあったら協力してね!)
はいはい。まあ何と言うか、理奈とか、イリアさんといった個性的な人たちが側にいるので特に違和感感じませんでしたけど、精霊って、結構個性豊かと言うか、腹の底では……って言うね、見た目に惑わされないようにしないと。
******
風が通り抜けた。
その風は、王子様の周りを舞い踊る。
服の裾がはためく。
「ち、ちょ、ま、まって、どうしたの?急に風が……僕の周りを踊って……」
「問いかけてみればよろしいかと」
「え?ソルフェリノ?な、何語で話しかければ……」
「気にすることはございません。思うがままになさればよろしいかと」
「じゃあ、えっと、キミは、誰なんだい?」
「私は、ミルフェよ。あなたは?」
「僕は、セシル、セシル=シュバルツヘルツだ」
セシル王子の呼び掛けに、全長40cmぐらいの妖精のような身なりの女の子が現れていた。
透き通るように透明で、あどけない表情を浮かべながらくるくる彼の周りを飛び回る。
うん、ソルお姉ちゃんのガッツポーズが見えるよ。
これですべてうやむやにできるって、面倒な王子様を通りがかりの風の精霊に押し付けることができたって、心の底からにた~ってしている表情がまざまざと浮かび上がってくる。
(にゃー!そういうのは想像しなくていいにゃー!確かにその通りだけれども!)
お姉ちゃんに怒られている間も、王子様とミルフェの会話が進んでいく。
「はじめまして。セシルさまと言うのね?私は見ての通り、風の精霊よ。貴方は、私のことが見えるんだね?」
「うん。キミのことが見える。かわいい姿してるんだね」
「ありがと。キミは私の姿が見えて、そして私を喚んでくれた。セシルさまは、ミルフェに何を求めるの?」
「僕は、さみしかったんだ。だから、キミのことを求めたんだ」
「…………じゃあ、私はこれからいつでもここで待ってるよ。ここでなら、セシルさまにはもうさみしい思いをさせないよ」
「ミルフェが、僕の話相手になってくれるの?」
「私はこんな形だから、一緒にお部屋まではついて行くことはできないの。でも、セシルさまがここにやってくれば、私は必ずあなたの前に現れるから、その時はいろんなお話を聞かせてね?」
つまり、現状ではセシル王子がミルフェをコンスピした訳じゃないんですね?
<セシル王子のスキルレベルでは、コントロールスピリットを使用できません>
確か、コンスピしちゃうと、いつでもどこでも、ずっと契約した術者と行動を共にする……イリアさんとか、理奈とかはどういう扱いになって……イリアさんも理奈も、それぞれソルお姉ちゃんや僕と繋がってるから問題ないと。普通の精霊の場合も、何か象徴となるものの中に封じて携行するのも一般的だから、と。
ふ、ふにゃあ……なんか吸われた?
り、理奈じゃないよね。
これは体全体から何か、えむぴーのようなものが抜けていった感覚ら……
……えっと、話し戻しまして……にしては、ミルフェが王子様の話相手になるって断言しておりますけど、それってどういう理屈?
<ソルフェリノによるエレメンタルオーダーの効力によるものです>
そっか。だから、ミルフェ曰くお仕事なんですね。納得です。
そのうち、ソルお姉ちゃんの命令による関係性から、彼と彼女自身の信頼関係による絆になればいいよね。
<もちろん、そうなりますけど何か?>
こういう抒情のないヘルプさんをどうしたものか……。
<ならば、雰囲気を重視して嘘、大袈裟、紛らわしい、ヘルプもどきモードを用意いたしますが、いかがいたしましょうか?>
す、すとっぷ!それは駄目。
じゃろに電話しないといけなくなっちゃうから。
だって、ヘルプさんの情報は正しいと言うのが大前提なんだから、そうなっちゃうとぼく、この世界の荒波を越えること出来なくなっちゃうから。勘弁して?
<ならば、ヘルプ機能をディスるようなことを考えないように願います>
はいはい、もうやだ。ぼくに味方はいないのか……
<はいは1回で結構です>
はーい。
こんな所でもテンプレしちゃったよ。
<テンプレがあって初めて、この物語が少しは読めるような作品になっているのです。先達の偉大な知恵の結晶なのですから、尊重して頂きたい>
うん。ごめんなさい。
でも、どうにかこれで、理奈のことを王子様の脳裡からひきはがすことに成功したのかな?
「分かったよ。確かに、ミルフェを僕の部屋に連れていくことは今は無理そうだね」
「セシルさまが成長すれば、私も貴方と共に歩むこともできるだろうけど、今は私は待つ番だから。ずっとここで待ってるから、たまにはお話聞かせに来てね」
「ああ、僕はミルフェを退屈にはさせないよ。だから、今度、一緒に遊ぼう!」
「分かったよ!」
王子様の周りを風の精霊がくるりくるりと舞い回る。
「じゃあ、今日はもう時間だから、また明日!」
「ええ…………(また明日って、早くない???)」
最後、ミルフェの本音が聞こえてきたような気もしたけど、涼やかな声にはなってなかったから大丈夫かな?
で、そのまま王子様はぼくたちの姿がまるで見えていないかの様にミルフェに挨拶をして、僕達が進もうとしていた道をたどって帰って行った。
って、え?ぼくたち見えてないの?
***
王子様の姿が見えなくなってから、たっぷりと時間を取ってようやくお姉ちゃんが口を開いた。
「にゃにょにゃ。作戦成功にゃよ」
「え?何したんですか?」
「精霊魔法の不可視をこそっと発動しておいたのにゃ。あんりきゅんの分も一緒に発動しておいたにゃから、最後、せしるきゅんそのまま帰ってくれたのにゃよ」
「……それだけで、あの王子様が帰ってくれるんですか?」
絶対に違うと思う。
さっき、急激にえむぴーっぽいものが抜けていったけど、
<不可視 精霊魔法レベル3>
・透明化する。消費精神点は12
・有効範囲は術者。有効時間は集中の限り
じゃないような気がするんだよねー。
感覚的にはもっと抜けていったし、例えば、
<気配消し 複合精霊魔法レベル5>
・気配を少しずつ消し、対象の意識から存在を外す。消費精神点は30
・対象が抵抗すると失敗し発動しない
と言った方が正しいような気がするんだよ。
抜けた量を考えてもこっちじゃないのかな?
って、複合精霊魔法って何なのよ?
<複合精霊魔法は複数種の精霊の力を借りて行使する精霊魔法となります。ロストマジック扱いですが、ソルフェリノはまあ、ソルフェリノですのでこのような魔法も行使できます>
ふうーん、精霊魔法にもロスト扱いってあったんだ。
てっきり真言魔法だけかと思ってたんですけど。
<一般に知られていない魔法については、原則としてすべて遺失魔法扱いとなります。ですので、遺失信仰魔法と言うものも存在します>
そうですか。何と言うか、遺失魔法の定義がものすごく広いですね。
つまり、作者が適当にでっちあげる魔法の類はすべてロストマジックにして、今まで知られていなかったんだよーってしちゃうんですね。
★★★★★★
で、でっち上げとか言うなーーー
★★★★★★
「にゃーーー、そこはソルを褒めるべき所じゃにゃいのかにゃ!にゃに、なんか別の方向に興味を持っちゃってるのかにゃ!それに、ソルが使用したのは不可視にゃからして、気配消しと言うような物騒な魔法じゃにゃいにゃからして」
「……お姉ちゃんを褒めるべきとか言いながら、使った魔法は不可視とか言い張るんですね。でも、『気配消しなんて知らにゃいにゃ!』とか言わなかったんですよね。つまり、その魔法を使ってましたよね。不可視ぐらいだったら、あの王子様だったら絶対に気付きますよね?」
「む、むぎゅ……し、しまったにゃ」
「確かにお姉ちゃんじゃないと打開できないような、と言うかお姉ちゃんらしいずるっこい展開でしたけど、……ずるっこいですからね?だから、お姉ちゃんのことは褒められないんですからね」
「なんであんりきゅんに非難されないといけにゃいのか」
「枠内でどうにかしてくださいよ」
「そんなこと言って、なら、あんりきゅんならどうやって打開したと言うのかにゃ?」
「ううー」
確かに、作者が思いつかないのに、ぼくが思いつけるわけないよね。
「ごめんなさい。何も思いつけませんでした」
「なら、ソルのやった方法に文句を言わないでほしいにゃ!反対する時は、必ず対案を出すにゃよ。ただ単に反対したいがための反対は生産性がにゃいにゃ。むしろマイナスなのにゃ!」
「うーうーうー」
にしてもですよ?どうも最近、ソルお姉ちゃんが迂闊な確率が高い気がするんですけど、気のせいなんでしょーか?
わざとなの?
それとも作者の天然なの?
「とにかくにゃ!これで脅威は去ったにゃからして、ようやくあんりきゅんを連れてクリスタパラストに入城できるにゃよ」
「本当に行っちゃうの?」
「当たり前にゃ。ソルは本気にゃ」
「裏口で王子様と鉢合わせしちゃったりしない?」
「大丈夫にゃ。さっきせしるきゅん本人が、もう時間だからと言ってたにゃ。にゃから、この後は王子様としてのお仕事の時間にゃから、変な所にはもういないのにゃ」
「ところで、つかぬことをお尋ねしたいのですが?」
「何なのにゃ?」
「ぼくがあんりきゅんなのはまだいいですけど、王子様にきゅんはだいじょーぶなんですか?」
「年下のかわいい男の子にきゅん呼びは正義にゃ。たとえそれが王子様だとしても、目覚めてしまったものは仕方ないにゃ……ばれてにゃいにゃにょね?」
「……やっぱり後ろめたかったんじゃないですか……」
「にゃーーー!さっさと先に進むにゃよ!!!」
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
今週は普段行かない出張なるものを体験したりしたため、体調が崩れております。
……予想は出来ていたのですが、次話のネタ出しができないまま体調が崩れてしまいました。
(体調不良度合いは、後書きにおけるおちゃらけのなさでお察しいただければと)
次話投稿はいちよう未定とさせてください。次は6月になってしまうかもです。
すみませんが、よろしくお願いします。




