第4話
お待たせ致しました。
今回はアルタイルsideです。
〜side:アルタイル〜
(ああ、鬱陶しい・・・。)
アルタイルはどれほど素っ気なく接しても離れていかない貴族の子息令嬢たちに辟易していた。
(どうして、僕が鬱陶しがっていることに気づかないんだろう・・・。)
目の前でさほど年の変わらない子供たちが、まるで貴族の大人たちのように、自分に媚びへつらい、すり寄ってくる様は、鬱陶しいを通り越しておぞましい。将来的にこの中の誰かから自分の側近と婚約者を選ばなければならないだなんて、考えるだけでも嫌になる。
(結局、誰だって同じだろう・・・。)
そう思いながら、ふと視線をずらすと、何人か、挨拶だけし終わると自分の側から離れて、勝手に遊んでいる子供たちが見えた。
(そういえば、さっきの天使みたいな女の子は・・・?)
何気なく首を回すふりをして探すと、別の男の子と仲睦まじげに寄り添って本を読んでいるあの子がいた。見惚れるほど可愛らしい笑顔を、隣の見知らぬ男の子に惜しげも無く振りまいている彼女を見ていると、無性にムカムカしてきた。今まで経験したことのない自分の感情に戸惑いつつも、制御できない自分に苛立つ。
(なんであの子は僕じゃない男の子に笑いかけているの!なんで僕を見てくれないの!なんで!なんで!なんで!・・・っ!)
制御できない気持ちと苛立ちがすべて彼女に対する怒りに変わっていく。初めての感情はアルタイルのまともな思考回路を尽く奪っていった。彼には最早、隣の男の子と楽しそうに笑い合う彼女が、自分を嗤っているようにしか見えなくなっていた。
次々に湧いてくる彼女に対する負の感情。
それを制御するには、彼はまだ幼すぎた。
(あの子が僕の目の前にいるからいけないんだ。あの子さえいなければ、こんな気持ちはなくなるに違いない・・・っ!)
それはある意味正しかったが、同時に最も正解から遠い解答でもあった。そうとは知らず、アルタイルは自分の未だ嘗てない感情を何とかするために、座っていた椅子からゆらりと立ち上がった。
アルタイルの醸し出すあまりにも不穏な雰囲気に、周りを取り囲んでいた貴族の子息令嬢たちがさっと道をあける。いつもは常に気にしている周りの目をいっさい気にすることなく、アルタイルは未だに自分に気づかず、無邪気に笑い続けているクラウディアの下に近づいていった。
〜side:アルタイル 終了〜
次回、事件が起きます。