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体だけでも、スッキリできて、よかった。
そう思いながら広間に入ると、昨日見た顔がいくつかあった。
目が合いそうになって、すぐに逸らされる。
昨日と同じ。少しだけ、距離がある。
「……おはよう」
誰かが言うと、それに続いてぽつぽつと挨拶された。
「おはようございます……」
それ以上、会話はなかった。
男の子達が、アルヴェインさんを見遣る。
短い視線のやり取り。
「……また来ます」
一人が言うと、他の人も頭を下げた。
急がず、なのに足早に、背中が遠ざかる。
扉が閉まり、静けさが二人を包んだ。
「たまに、顔を出すって言ってたよ」
アルヴェインさんの言葉に、そうなんだ、と頷く。
でも。
さっきの背中は、もう来ない人のそれに見えた。
……広間が、さっきよりも少しだけ広く感じた。




