17
若そうな、女性だ。
調理場から戻ってきたらしい。
まだぼーっとする頭でその人を眺めていると、女性がこちらに気付いた。
慌てたように近寄って来る。
そのまま私の体を起こして、水差しを口に運んでくれる。
ふぅ、と一息ついて、女性を見上げる。
想像よりも、ずっと若そうだ。
颯馬と同じか、それより少し上か。
「紗和様のお世話をさせて頂くことになりました。アンネと申します」
緊張を滲ませた面持ちで、アンネさんは頭を下げた。
お世話って、どういうこと?
「まずはお食事をお持ちしますね」
運ばれて来たのは、お粥と少しの果物だった。
湯気の立つお粥を見た途端、急にお腹が空いていることを思い出した。
グゥ、と情けない音が鳴る。
アンネさんが少しだけ目を丸くする。
「食べられそうで安心しました」
「熱いですから、冷ましながらお持ちしますね」
そう言って、アンネさんは匙でお粥をかき混ぜた。
ふう、と小さく息を吹きかける。
断ったはずなのに、結局食べさせてもらっている。
お母さんにも、今はやってもらってないのに。
少し残してしまったことを申し訳なく思いながら、薬まで飲ませてもらった。
「ごゆっくりお休みください」
満腹になっていた私は、すぐに眠ってしまった。
次に目を開けた時には、窓の外が赤く染まっていた。
身じろぐと、体がパキッと鳴った。
「お目覚めですか」
「っ!」
視界の外から声を掛けられる。
もしかして、ずっと部屋にいたんだろうか。
そんな事を考えているうちに、アンネさんが部屋の隅の椅子から立ち上がる。
「お加減はいかがですか」
「……だいぶ、楽です」
声も朝よりは出る。
少し迷ってから、尋ねた。
「あの」
「はい」
「誰か来ましたか……?」
アンネさんは一瞬だけ目を伏せた。
「誰もお見えになっておりません」
そうなんだ。
アルヴェインさんは、来なかったんだ。
なんだか少し、寂しい気がした。




