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始まりの聖女 ─彼女が呼ばれたわけ─   作者: はたの


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若そうな、女性だ。


調理場から戻ってきたらしい。


まだぼーっとする頭でその人を眺めていると、女性がこちらに気付いた。


慌てたように近寄って来る。



そのまま私の体を起こして、水差しを口に運んでくれる。


ふぅ、と一息ついて、女性を見上げる。



想像よりも、ずっと若そうだ。

颯馬と同じか、それより少し上か。


「紗和様のお世話をさせて頂くことになりました。アンネと申します」


緊張を滲ませた面持ちで、アンネさんは頭を下げた。


お世話って、どういうこと?




「まずはお食事をお持ちしますね」


運ばれて来たのは、お粥と少しの果物だった。



湯気の立つお粥を見た途端、急にお腹が空いていることを思い出した。


グゥ、と情けない音が鳴る。



アンネさんが少しだけ目を丸くする。


「食べられそうで安心しました」


「熱いですから、冷ましながらお持ちしますね」


そう言って、アンネさんは匙でお粥をかき混ぜた。


ふう、と小さく息を吹きかける。



断ったはずなのに、結局食べさせてもらっている。


お母さんにも、今はやってもらってないのに。




少し残してしまったことを申し訳なく思いながら、薬まで飲ませてもらった。


「ごゆっくりお休みください」


満腹になっていた私は、すぐに眠ってしまった。





次に目を開けた時には、窓の外が赤く染まっていた。


身じろぐと、体がパキッと鳴った。



「お目覚めですか」



「っ!」


視界の外から声を掛けられる。


もしかして、ずっと部屋にいたんだろうか。


そんな事を考えているうちに、アンネさんが部屋の隅の椅子から立ち上がる。



「お加減はいかがですか」


「……だいぶ、楽です」


声も朝よりは出る。


少し迷ってから、尋ねた。


「あの」


「はい」


「誰か来ましたか……?」


アンネさんは一瞬だけ目を伏せた。



「誰もお見えになっておりません」





そうなんだ。


アルヴェインさんは、来なかったんだ。


なんだか少し、寂しい気がした。




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