40、最強のパーティ 第一部終了
中央の通路から、職員が三人走ってくるのが見えた。職員はゲートを使って降りてくることができる。ローイさんとクレアさんと、もう一人、ローイさんと同じ年ぐらいの男性だ。
人が来たのに気がつくとピギーはパッと消えた。
「大丈夫か、お前たち!」
「はい、大丈夫です」
ローイさんの呼びかけに、私が手をふって答えた。職員三人が到着した。良かった! 三人は横になって寝ている強盗を見た。クレアさんが驚いて聞いてきた。
「あなたたちが捕まえたの!?」
「はい」
「……さすが勇者ね」
ルイスが答えると、クレアさんはルイスに感嘆した。
「眠り玉を使ったので、あと二十分ぐらいは寝てます」
「そうか。分かった。じゃあ先に所持品を調べよう」
私が説明すると、ローイさんが顎に手を当てて言った。
「この後兵士の応援が来るわ。あとは私たちがやるから、あなたたちはゲートから戻りなさい。後で話を聞くから、協会で休憩して待っていてちょうだい。時間になったら昼食を取っていいわよ。話は通してあるから」
『分かりました』
二人で返事をすると、ゲートに向かった。終わってほっとした。
協会に入ると、午前帰りの冒険者たちであふれていた。大人たちの異様な熱気がある……。
「おい、子供が来たぞ」
「早いな」
「子供ダンジョンで強盗が出たらしいぞ」
「なんだあ!?」
ダリアさんが私たちを呼んだ。
「聞いているわよ。二人ともこっちに来て」
右側のドアを開けて中に呼びかける。
「サンテスが来たわよ」
男性職員が出てきて、私たちをドアの中に入れてくれた。ドアが閉まると騒々しさから解放されてほっとした。
講習を受けた部屋の向こう側にある、小さい部屋に通された。多分、手前の部屋には地元の子たちがいるだろう。
この部屋も講習ができるようになっていた。前に黒板と教壇があって、長い机が三つ置いてあった。私たちは一番前の席に座った。私は椅子に座ると伸びをした。
「終わって良かった!」
「うん」
「お昼にはまだ早いかな」
部屋の時計は十一時半前だった。——私はピギーの話をした。
「ピギーはまたいなくなったね」
「そうだね。——ほこりは俊足で動いたり、隙間があればどこにでも行けるけど、ボスの間は隔離されているから隙間がないはずなんだ。だから、ピギーは他のほこりと違って、瞬間移動しているんだと思う」
「え!? それって、神業だよね」
「うん。ピギーの動きは、他のほこりとは違うから」
なるほど。光属性ならできるかも……。四元素属性は精霊の力だけど、その上が光属性だ。光魔法は聖女が使うけど、この国にはいない。
「この国は光属性が弱いから、それでピギーも不完全だったのかな?」
「そうかもしれないね。……ユミも光属性だと思うよ」
ルイスが私を見て言った。
「えっ? 魔法は使えないけど……」
「うん。ユミのエネルギーでピギーが魔法を使うんだ。
ユミは自分も楽しむけど、人に分け与えて喜びを感じるだろ。喜びが広がって自由になるのが光属性なんだ。反対に自分の利益だけを考えると、物や人が集まってしがらみができる。それが闇属性なんだ」
「へ~、ルイスは物知りだね」
アストールから教えてもらったのかな?
「聖剣も光属性だから、ルイスもそうだよね」
「うん。俺たち最強のパーティだね」
「そうだね!」
私たちは顔を見合わせて笑った。十二時になったので昼食を取った。多分聴取は十三時からだろう。
十三時過ぎに、ローイさんとクレアさんが来た。私たちは午前中の出来事や、先週のダンジョンの様子を話した。
「ありがとう。分かったわ」
「地元の子供たちを説得してくれて助かったよ。地元の人間とは揉めたくないからな。俺からも礼を言う」
そう言われてほっとしたけど、ちょっと聞いてみた。
「地元の子たちはどうなりますか?」
「とりあえず、連絡があるまで自宅待機になった。聞き取りは終わったから、ご飯を食べて帰ったわ」
「そうですか。私たちはどうなりますか?」
無謀なことをしたからな。まあ自宅待機でも、しばらくは暮らせるから大丈夫だ。職員二人は顔を見合わせた。
「あなたたちは言った通りに遂行した。ルイスが勇者だということを踏まえると、力量があったと考えているから、御咎めはないと思うわよ」
良かった! ルイスは勇者のことを言われても、すごく穏やかな顔をしていた……。私たちは顔を見合わせて安堵した。ローイさんが私に聞いてきた。
「ユミはどうして眠り玉を持っていたんだ?」
「カシムさんから誕生日プレゼントにもらったんです」
「へえ~、あのケチがね」
ローイさんはカシムさんをよく知っているのかな……?
「カシムさんは、換金の時も口出ししてたから、お金に厳しいところがありますよね」
「あいつは、土地が痩せた貧しい村の出身なんだ。今はあいつが、村を支援している」
「そうなんだ!」
だから、お金にうるさいんだな……。やっぱりいい人なんだ。——気になっていた、ダンジョン症のことも聞いてみた。
「ダンジョンのアイテムを食べることで、ダンジョン症が防げると思うのですが、どうなんでしょうか?」
「それは一理あるな。ただ、おいしいものは中毒になりやすいんだ。だから協会では推奨することはしていない」
なるほど! それもあるか……。おいしいものはたくさん食べたくなるよね……。
「お前たちみたいに、分けてる奴は心配ないだろうがな。ダリアがたまに食べ物をこそこそとカバンにしまっていたな」
ローイさんが顎を撫でてニヤリと笑った。クレアさんが言った。
「あなたたちが捕まえたことは、あなたたちのために当分発表しないことになった。ダンジョンは、八層目から封鎖して点検することになったから、しばらくは入れないわ。
アトロス寮の子たちも今事情を聴いている。二人はもう帰っていいわよ」
「分かりました」
「はい」
ルイスと私は返事をすると部屋を出た。時間は十四時前だった。表に出るといつものメンバーがいた。
「ユミちゃん! 聞いたよ。強盗が出たんだって!」
「大丈夫か、ユミ」
「はい、大丈夫です」
ローシャさんとカシムさんが心配してこちらに来た。ローシャさんとレヴィさんのパーティを久しぶりに見た。
「みんなさん、お久しぶりです」
「二人が捕まえたって聞いたわよ」
「主にルイスですけど……」
「さすが勇者ね」
レヴィさんが褒めると、すぐにダリアさんが釘を刺した。
「その話はここだけにしてくださいね」
「もちろんだ。ルイス君たちの秘密は俺たちが守る」
ローシャさんが胸を叩いて言った。君……。
「カシムさん、眠り玉が役に立ちましたよ」
「そうか! あげて正解だったな!」
カシムさんの顔が明るくなった。私たちは魔鉱石二個を換金した。
「二人ともボス戦を制したのよね! どっち?」
私たちは顔を見合わせて言った。
『二人ともです!』
私たちはエクストラポーションをそれぞれ取り出した。
「まあ! 本当ね。たまにあるのよ」
「魔鉱石は一個だけど、もう挑戦できないのかな?」
「できるわよ。上手くいけばまたアイテムがもらえるわよ。でも片方だけがやっつけるとアイテムはないわね」
「え!? なるほど……」
「それならできそう」
私が驚くと、ルイスは涼しい顔で言った。またピギーが来るからってことだな。……やった。二人とも冒険者証を渡した。戻ってきた冒険者証は、Cランクの刻印がされていた。
「C級だ!」
「うん」
「二人とも早かったな。さすがだ」
カシムさんが褒めてくれた。
「今日は、一五二三ルトよ。……ポーションは売らないわよね」
『はい!』
「トホホ……」
ダリアさんは残念そうだった。私たちはお金を受け取って協会を出た。
「またボス戦に挑戦できるのは良かったね!」
「うん」
「今度は九層目に行ってからにしようよ。欲しいものがあるんだ」
「何?」
「ホーンサイのアイテム、スネークゲイターだよ。毒蛇避けにもなるし、防御力が一上がるの」
「さすがユミだね」
いつものメンバーも全員付ていた。冒険者に人気のアイテムだ。色は黒、茶色、グレー、カーキなど様々ある。私は茶色が欲しいな。
「しばらくは無理そうだから、明日はバターやグローブを取ろうか」
「うん。またフルーツを取って、ローシャさんたちにも配りたいな」
「うん。そうしよう」
私たちは意気揚々と寮に帰った。
お読みいただきありがとうございました。ここで、第一部~子供ダンジョン編~、終了です。
ユミとルイスのダンジョンライフはまだ続きます。
次回はだいぶ先になりますので、気長にお待ちください。




