37、誕生会!
土曜日は、午後から三人で誕生会の買い出しに行く。部屋の前で待ち合わせして、外に出た。私がパンの感想をナンシーに伝えた。
「高級パンおいしかったよ!」
「俺も食べたよ。おいしかった」
「そうでしょ! いつも食べらないのが残念だよね」
ナンシーは笑った。
「一回に作る量が、クロワッサンが二十個で、食パンが十個なんだよ。まだ二回だけどすぐ売り切れちゃうからね。フルーツパンは火曜に出そうって話になってるよ」
「そっか、楽しみ!」
初めに部屋の飾りつけ用のガーランドとクラッカー、ケーキのロウソクを、パーティグッズの店に買いに行った。代金は全部、私とルイスが払う。
次に大きめの食器と、テーブルクロスを買いに行く。寮には一人用の食器が二つずつ備品として用意されているが、大きいものはない。
少し大きめのグラタン皿をナンシーが、サラダボウルをルイス、楕円の皿を私が担当して保管することになった。
ハムを乗せるのは、備品のメイン皿にする。取り皿は、私はルイスのサラダボウルと深皿と平皿を借りて、ナンシーがハオ君と自分の分を部屋から持ってくることになった。
赤と白のチェック柄のテーブルクロスはナンシーが選んだので、ナンシーにあげる。
次に食材を買いに行く。野菜とドレッシング、ケーキ用の苺と砂糖、小麦粉だ。これで全部買った。
ナンシーは私のプレゼントを買うので、私とルイスが荷物を持って先に帰った。備品類はルイスに任せて、食材は半分にして二人で保管する。今日はこれで解散だ。
翌日午前十時からルイスの家に集合して、私とルイスで飾り付けをし、ナンシーがケーキ作りに取りかかった。
飾りはあっという間に終わったので、ケーキ作りを手伝う。スポンジをオーブンで焼いて、生クリームを泡立て、フルーツをカットする。ルイスも包丁の扱いに慣れてきた。
「ルイスはだいぶ上手になったね」
「うん。料理も自分で作るようになったよ」
スポンジを冷ますので、一旦昼休憩で解散し、また午後から集まった。
最初にケーキの飾りつけをする。スポンジを半分に切って、中にクリームと苺、ダンジョンフルーツを乗せた。
ナンシーが細長いヘラで、器用にスポンジ全体にクリームを塗った。飾りにまたフルーツを乗せて完成だ。魔法石の保冷庫で冷やす。保冷庫も寮の備品だ。
次にパングラタンを作る。焼くのは始まる前なので、これも保冷庫に保管する。次にサラダとホッとドッグ用の野菜をカットする。それから、ハムをカットして、ソーセージに切り込みを入れておく。こっちも焼くのは始まる前なので、これで準備は完成だ。十七時半まで解散した。
私とナンシーは着替えて、また十七時半にルイスの家に来た。料理を焼き始める。
「いい匂いだね」
ルイスが匂いをかいで、ニッコリした。十八時になると、ドアからノックが聞こえた。
「こんばんはー。ハオです」
ハオ君の声がして、ナンシーが飛んで行った。その様子を見て、私たちはほほえんだ。
料理が焼けたので、テーブルに並べる。テーブル二台と椅子三脚は、私とナンシーの部屋から持ってきた。机をつなげてテーブルクロスをかけてある。
私が端の席に座り、右にルイスとハオ君、左にナンシーが座った。クラッカーを鳴らして、誕生会が始まった。
『ユミ、誕生日おめでとう!』
「ありがとう!」
なんか恥ずかしいけど、うれしい! みんなで食事を始めた。
「うわ、すごくおいしい!」
「チーズもアイテム食材だよ」
ハオ君が絶賛すると、ナンシーが説明した。少し食事を楽しむと、
「ユミ、おめでとう。はい、プレゼント」
「ありがとう!」
ナンシーからプレゼントを受け取った。早速包みを開けると、赤いステッチがアクセントで入っている、白いブラウスだ。
「かわいい」
「ユミの赤いスカートに合うと思って」
「うん。ありがとう」
私はあまりおしゃれなことはよく分からないけど、ナンシーはおしゃれだから参考になる。
ハオ君から三人に、四角い包みが渡された。
「招待してもらったから、三人に持ってきたんだ」
『ありがとう』
粋な計らいだ。開けてみると、三角錐の形の木と「水辺の香り」のオイル、陶器のお皿だった。
「ルームフレグランスだよ。それぞれのイメージで選んだんだ」
「ありがとう」
おしゃれだな。ルイスは四角い木を持って眺めていた。オイルは「森の香り」。ナンシーは丸い木で、ころがらないように底が平らになっていた。オイルは「花の香り」だ。目がキラキラして、めちゃくちゃ喜んでる。それから、ハオ君はシチューの缶を三個出して全員に配った。
「これは、オーナーからなんだ。バターの話をしたら、欲しいって言ってたんだけど、頼めるかな?」
「え? あ、うん、いいよ」
シチューの缶は、ユメイナホテルのものだ! 三人とも感動して缶をしげしげと眺めた。あれ? ——もしや、ハオ君から話が漏れた?
「ホテルのシチュー楽しみだね! ハオ君のバターとダンジョンフルーツもあるから、帰りに渡すね」
「ダンジョンフルーツ?」
「ダンジョンだけで取れるフルーツだよ。今日のケーキにも入ってるから」
「ありがとう!」
「私、まだバターを使ってないから持ってくるね!」
ナンシーは席を立つと部屋を出た。ハオ君が話をした。
「ここはパン食が多いけど、俺が住んでいた東では米を食べていたよ」
「東はそうだよね。米もおいしいよね。私の家は北の小麦農家なんだよ」
「そうなんだ!」
ハオ君はちょっと驚いていた。ルイスも自分のことを話した。
「俺は森のある西の農村から来た」
「ナンシーは南が暑いから、ここに来たって言ってたな」
みんな違う方角から来ていた。ナンシーが戻ってきて、バターをルイスの保冷庫にしまった。
「何の話をしていたの?」
「みんなの出身地の話だよ」
私がナンシーに言った。私は自分がここに来た理由をハオ君に話した。ルイスも聖剣のことと、パーティを組んだいきさつを話した。
「そうだったんだね。二人とも出て行かないといけなかったのか……」
「でも、私はここに来て良かったよ。友達にも会えたし、パーティも組めて、誕生日も祝ってもらったから」
みんなは私を見てほほえんだ。




