36、魔法アイテム
「じゃあ、今日はもう帰ろうか」
「うん。今日は最高数だね」
「そうだね」
私たちは麻酔草を採取してから、六層目まで戻ってゲートで塔に戻った。階段を降りると、ミサたちが廊下を歩いてるのが見えた。良かった!
「ミサ! メイア! 渡すものがあるよ」
二人に手をふった。テーブルの上で渡すものを取り出すと、二人が寄ってきた。
「ダンジョンフルーツが取れたよ。一個ずつね」
『ありがとう!』
「すごい! 初めて見た!」
メイアは感動していた。
「今日の鎮静効果のある薬草と、麻酔草ね。あと、バターも一個渡しておくね」
「わあ! ありがとう!」
バターはメイアが受け取って、薬草は二人で分けて袋にしまった。二人とは塔の外で手をふって別れた。
私たちは協会に入った。今日もカシムさんだけだった。
「カシムさん、こんにちは。今日はダンジョンフルーツを持ってきたよ。ダリアさんもどうぞ」
袋から二個取り出した。
「ありがとう!!」
「お~、すまないな。これもおいしいよな。
今日は俺も、ユミにプレゼントを持ってきたぞ」
おっ! なんだろう。カシムさんは隣に置いたリュックから小さい紙袋を取り出した。
「魔法使いが作った眠り玉だ」
「眠り玉?」
魔法アイテムは高価だ! カシムさんは袋を開けて玉を一つ取り出した。
「これを人に当てると、はじけて粉が出る。粉を吸い込むと三十分は眠ったままだ。モンスターには効かない。人間の護身用だ」
「ありがとうございます!!」
やった! 私が喜んだのでカシムさんは満足そうだった。おっと、また忘れるところだった。
「グローブ取ってきましたよ。六個取れたから、冒険者の店と三個ずつどうかなと思って」
「ユミ、全部譲ってくれ!」
「え?」
カシムさんが顔を下げて、拝んできた。
「依頼人から十個頼まれてるんだ」
「そうですか……分かりました」
店は後だな……。カシムさんから四八〇ルトもらって、私が一六〇ルト取って、あとはルイスに渡した。カシムさんにグローブを六個渡す。
ダリアさんに魔鉱石を換金してもらう。
「今日は七〇三八ルトよ! どうしちゃったの? すごいわね」
本当だ!! びっくり。ルイスと顔を見合わせた。最高数だったからそうなるか。
「群れを狩ったから……」
と言っておいた。みんなは森の中に、あまり入らないからな……。
私たちはお金を受け取ると、協会を出てバターの納品に向かった。
ジョンソンパンに入る。
『こんにちは』
「こんにちは。いらっしゃい」
ルラさんが明るく迎えてくれた。
「バターの納品に来ました。フルーツもありますよ。パンに使うかなと思って」
「ありがとう!! お疲れ様! 昨日高級パンの販売だったけど、二回目も即完売だったわよ!」
「すごい!」
袋からバターとフルーツを二個ずつ取り出した。
「良かった! フルーツも本当においしかったから、フルーツパンも出したいねって言ってたのよ! ユミちゃんたちのほうから言ってくれて助かるわ!」
「じゃあ、フルーツもバターと同じでパン三個でいいよね」
ルイスに聞いてみた。ルイスも笑顔で答えた。
「いいよ」
「えっ!? いいの!? フルーツの売値は銅貨一枚からなのに!」
高っ! ポーションと同じ値段!?
「はい、みんなに安く食べてもらえるから」
「ありがとう! それと、言いにくいんだけど~、なぜかユメイナホテルからバターを売ってほしいって言われてるのよ~」
「えっ!?」
どこで話が……? 高級パンが評判になったからかな? ルイスと顔を見合わせた。ルイスがうなずいたので、ルラさんに答えた。
「いいですよ。ちょうど、余分に持ってるから、バター二個を置いていきます。フルーツも置いていこうかな」
「えっ!? いいの?」
「はい、多分ホテルでも出したいだろうなと思うので」
「ありがとう。一緒に聞いてみるね。あとバターは三十ルトで、フルーツは六十ルトで売っていいかしら」
ルラさんが申し訳なさそうに言う。
「いいですよ」
「ありがとう! 二人とも本当にいい子ね。助かるわ!
これでローンが、思ったより早く返せそうね!」
店のローンがあるんだ! お店は大変だな……。
「ユミちゃんたちが食べたいと思って、今日は高級パンを取っておいたのよ。ララさんに持っていくと思ったから、クロワッサンは三個、食パンは一斤ね」
「え~、いいんですか! 思ってました! やったー」
「もちろんよ。ナンシーは試食してるから、あげなくても大丈夫よ。
食パンも三等分に切り分けるわね。パンを選んどいてね。一個十ルトで、八十ルト分ね。端数はプラス一個でいいわよ」
「は~い」
ルラさんは厨房に、高級パンを取りに行った。楽しみだ~、よだれが出そう。
「まさかこんなに早く食べれるとは! 良かったね」
「うん」
私たちは、高級パンの分を引いてパンを選んだ。
高級クロワッサンは普通のパンの二倍で六ルト。三個だと十八ルト。高級食パンも普通の食パンの二倍なので十二ルトで、高級パンの合計は三十ルト。
残り五十ルトで、選ぶパンは十七個分だ。
「え~と、私の分が五個で、ルイスの分が十二個だね」
「分かった」
私たちがパンをトレーに乗せると、店頭のパンはだいぶ減った。ルラさんが戻ってきて、選んだパンと一緒に袋に入れてくれた。
普通のパンだと二七個と大量になるので、ホテルの分は注文が入ってからのほうがいいかな? ジョンソンパンの注文分だけだと報酬のパンは十四個だ。
ルラさんと新しく取り決めをした。アイテムが三個以上の納品から、一個十ルトで計算することになった。ジョンソンパンはプリンや焼き菓子も置いてあるので、それも選べる。焼き菓子は日持ちするので残っていることが多い。
交換品がないときは、欲しいパンを注文して翌日取りに行くことになった。お店がフードバンクに渡す分が減るから、自分でたまに持って行こうかな……。
ルラさんはご機嫌だった。
「在庫が一掃されて回転が良くなるから、助かるわ~」
「物々交換の収入も、記録しておかないとね」
私がルイスに言うと、ルイスもうなずいた。ルラさんも在庫を記録しているだろう。今日のカシムさんとの取引も記録しておかないとな。
私たちはパンを大量に持って帰った。ララさんに高級パンを渡すと、とても喜んでくれた。私たちもニッコリした。
今日の夜はクロワッサンを食べることにした。明日は食パンでサンドイッチを作ろう。楽しみだ!




