35、大量の狩り
「それと、コヨーテのグローブを取ってきたら、俺が買い取るぞ」
「え? そうなんですか? 冒険者の店のおじさんも六十ルトで買い取るって言ってました」
「なら俺は、八十ルト出す」
グローブ人気だな。ちょっと聞いてみた。
「何で高く買い取れるんですか?」
「依頼人に百ルトで売ることになってるんだ。でもそこまで手が回らない」
カシムさんにとっては、高くないもんな。
「分かりました。取ってきたら、カシムさんと店のほうに交互に持っていこうかな」
「ああ」
「協会も品薄なんです」
ダリアさんが涙を流して言った。ダリアさんは別に困らないと思うけど、……仕事熱心だな。
「みんな売ってくれないから、協会も注文分を職員が取りに行ってるんですよ~」
そうなんだ! 冒険者の職員か……、就職先としていいな。ローイさんなんか、体格いいから冒険者っぽいな。
カウンターで換金する。
「今日は四八二四ルトよ」
おお~、換金額が更新された。私たちは、二人に挨拶して協会を出た。
「みんながいないと、少し寂しくなった気がするね」
「そうだね」
私の言葉にルイスもちょっと苦笑した。予想外の心境になったな。ダンジョン症のことで、思っていたことをルイスに言ってみた。
「十層までのアイテムは、日用品とかが多いよね。ダンジョンはアイテムを使いながら攻略するようになっているから、食べ物を食べればダンジョン症にならないんじゃないかな? みんなはアイテムを売っちゃうけど……」
私はルイスがいるから装備品に頼らなくてもサクサク進めるけど、ルイスが勇者じゃなかったら、もっとゆっくり進んでたと思う。
「……そうだね。俺もそう思うよ。子供は成長途中だし、子供の脱落者は思ったより多いんじゃないかな。人によって合わない仕事ってあるから」
「そうだね……」
私もいろんな仕事をしてきたからな……。今になって思えば、私は早く見つかったほうだなと思った。……先のことは分からないけど。
「協会が言わないのは、ミサたちのように、アイテムを取らない人もいるからじゃないかな」
なるほど。それなら、自然と自分のタイミングで辞めたりしていくのかな。
翌日は、バターとついでにグローブを取ることにした。二人でダンジョンに着くと門番のおじさんが言った。
「ミサちゃんが二層目に来てくれって、言ってたよ」
「はい、分かりました。ありがとうございます」
中に入ると二人で顔を見合わせた。
「何だろうね?」
「うん」
二層目に降りて、ミサたちを探した。私たちが呼ぶとミサが手をふった。
「良かった、無事だね」
「どうしたの?」
ミサたちのほうに駆け寄った。
「うん、並んでるときに、なんか寮の人たちがユミたちの話してたのが聞こえて、心配になったんだ」
『あの聖剣の二人、大丈夫だったかな。イヒヒ』
多分意地悪そうで品のない、ぼさぼさヘアーの女の子だろう。
「ぼさぼさ頭の人でしょ」
「そう、ラザニーよ。一緒にいるのが、アイサ。最近、普通ダンジョンのパーティが二組ともこっちに来てるから、普通ダンジョンで何かあったのかもしれない」
「やっぱり! 見たことない人がいると思った」
「協会では何も言ってないよね」
ルイスが私を見て言った。
「そうだね」
「何でもないなら良かったけど。……地元の子たちも暗い顔をしていたよ」
「そうなんだ!」
ミサもなんだか釈然としない様子だ。私は袋から、麻酔草と火傷に効く薬草を出した。
「はい、これ。七層目と八層目の薬草だよ」
「ありがとう!」
ミサたちは大喜びした。薬草を二つに分けて、それぞれ袋にしまった。
「九層目と十層目はレンガ造りで、草は生えてなかった」
「そうなんだ! 分かった」
私たちは別れると三層目に降りた。先にホーンモンキーを探すことにした。森に入る前にルイスが言った。
「棘のある植物に注意して」
「うん。分かった」
左の森に入り、今日は少し離れて狩りをすることにした。
「三個取れたよ~」
「俺も~」
二人で合流する。
「大量だ!」
「慣れたものだね」
ルイスも笑った。
「じゃあコヨーテを探そう。手前の森にいるはずだから、追い込み猟をしようか」
「うん」
「多分森の奥に逃げると思うから、ユミは奥の獣道の脇にいて。移動したら、右と左で声をかけるよ」
「分かった」
中央の道に出ると手前と奥に別れて、右の森に入った。手前にいるルイスが木の間から見えるから大丈夫かな。私は身を低くしてルイスに合わせて移動した。獣道が見えたので脇で待った。
走ってくる音が聞こえる。ホーンコヨーテが低い位置だから、タイミングが難しいかな。ハンマーを先に振り上げておこう。
振り下ろすのが早いかなと思ったけど、走ってきたコヨーテに上手く当てた! ポンッと消えて、緑の魔鉱石とグローブが落ちた。やった! 素早く拾った。
「右」
ルイスの声が聞こえた。わあ! もうルイスを見失ってる! 声の通りに右に進んだ。草が低いのでコヨーテが走ってくるのが見える。今度も上手く叩けた。
「右」
声に合わせて進んだ先で、直接コヨーテに出くわした! コヨーテは私を見ると、低い唸り声を出して向かってきた。態度が全然違う……。怖い! でも倒した。全部で六体を倒した。
「ユミ~、どう?」
「六体倒したよ」
「あれ? 多い?」
ルイスが小走りにやってきて合流した。
「こっちにも二体いた」
「そうだったんだ」
「グローブも六個で大量だよ」
「やったね。早いけどお昼を食べようか」
「うん」
私はゲートまで行って、昼ご飯を食べた。
「午後は七層まで行ってフルーツを取ろうよ。ミサたちにもあげたいんだ」
「うん、いいよ」
「三層は本当、狩りがしやすいよね」
「そうだね」
七層はそうもいかないから気をつけないと。私たちは作戦を立てた。今度はルイスができるだけ取る。それは前と同じか。私は複数から攻撃されないように、森側の正面で待つことにした。
昼ご飯を終えて、鎮静効果のある薬草を採取してから、六層目に降りた。注意深く中をのぞいて、ルイスと顔を見合わせると中央の通路を奥の階段まで走った。ここは相変わらず静かで誰にも会わなかった。
七層目に降りて中に入る。ここも奥は静かだ。ルイスが少し笑って言った。
「親子ライオンも今頃、前の森でコーネルたちと対戦してるだろうね」
「そうだね」
右の森に入った。前と同じ場所にホーンシマウマの群れがいた。私たちも前回と同じ配置についた。
ルイスがシマウマに素早く駆け寄って、一頭ずつ切って倒していく。驚いたシマウマたちが、私のほうに走ってきたので、私も一頭ずつ首の下の急所を順番に叩いた。
しばらくすると、シマウマたちはいなくなった。私は四頭倒した。私は魔鉱石とフルーツを拾ってから開けた場所を見たら、魔鉱石がごろごろ転がっていた。おお~、ルイスすごい。
「ルイス、すごいね!」
「うん。七頭は倒したよ。フルーツは五個だな」
ルイスからフルーツを受け取った。全部で九個だ。すごい! やったー。




