34、エイの無限水筒
エイはポンと音を立てて消えた。上から魔鉱石と水筒が落ちて来る。
「痛たた!」
私たちは頭を手で押さえた。魔鉱石五個と水筒が三個だ! ルイスも取れた!
「上手くいったね!」
「うん! やった!」
水筒は蓋つきの金属の筒で、マットな黒の塗装がしてある。カーキ色のホルダーに入っていた。ホルダーは持ち手付きで、便利! 二人で一個ずつ持った。余った一個はまた誰かにあげよう。魔鉱石はルイスの袋に入れた。
火傷に効く薬草を採取したので、ルイスに言った。
「じゃあ、九層に行こう」
「うん」
私たちが森から出ると、またライルたちは休憩していた。疲れているのかな?
「何か取れた?」
ぼさぼさヘアーの子が聞いてきた。私が答えた。
「エイがいたよ」
「あははは! 残念!」
その子は大きく笑った口に手を当てて喜んだ。私たちは入口を出た。中から声が聞こえる。
「頑張ってねー!」
私はルイスに言った。
「嫌味だよね」
「多分ね」
九層に降りると、ここも騒がしかった。みんな手前から進んで、午後に奥に行くからな……。通路を見ると三本とも埋まって対戦していた。右からホーンパンダ、ホーントラ、ホーンサイだ。ここは森がないから、三パーティしか挑戦できない。必ずモンスターを倒さないと、先に進めないようになっていた。ルイスが言った。
「仕方ない。十層に行こう」
「うん」
十層は初めて降りる。いきなりボス戦だ! 十層目は静かだった。
「誰もいないのかな?」
「どうだろう」
真ん中の道を歩くと、前からホーンブルが現れた。赤い雄牛だ。角は元々左右にあるけど、額にもモンスターの角がある。頭を下げて前足で地面をかいている。やる気満々だ。
「ユミは下がって」
「うん」
ここで二人並んで対戦するのは難しいな。二人とも武器が長いし。私は邪魔にならないように離れた。
ルイスは相手が攻撃する前に、相手の頭部に剣を刺した。牛はポンと消えて、赤い魔鉱石が落ちた。あっさり片付いた。さすが聖剣……。ルイスが魔鉱石を拾って、私たちは先を進んだ。
今度はホーンワニが現れた。敵が低い! ルイスはこれも難なく、口に剣を刺して倒した。青の魔鉱石が落ちた。ドロップアイテムはない。
「楽勝だね!」
「うん……」
私が言うと、ルイスは苦笑した。道を進むとゲートが見えた。通路の先は壁になっていて、ボス戦の部屋の扉が見える。手前のモンスターは二体だけだった。私たちは昼ご飯にした。
「モンスターはもういなさそうだね」
「そうだね」
昼ご飯を終えると、ボスの部屋まで来た。いよいよだ。九層は飛ばしちゃったけどまあいいか。ルイスが言った。
「よし、入るか」
「うん」
「ちょっと待った!!」
左から声がした。見ると男の子二人が走ってくる。
「俺たちが先だ!」
どう見ても私たちが先でしょ……。二人は私たちの前にくると、後ろの子は膝に手を置いて息を整えた。前の子が話す。
「アストロ寮の年長者パーティがやっと終わったんだ。——だからやっと番が回ってきたんだよ」
なるほど。ボスを倒すと、もうその日は扉が開かない。倒すのも一人一回だけで、アイテムはエクストラポーションが必ずドロップされる。
このポーションは体力を上げてくれる優れものだ。当然、買取値段も千ルトと跳ね上がる。
エクストラポーションの下が、マーメイがドロップするハイポーションで、アイテムポーションの二倍の効果があり、レベル二までの毒に効く。エクストラポーションはその一・五倍の効果だ。
ルイスが手の平を出して言った。
「分かった。俺たち急いでないから。二日後に来るよ。その時は、倒せてなくても譲らなくていいよな?」
「……ああ」
二人はちょっとテンションが下がったが、返事をした。私たちは奥も行ってみることにして、右に歩いていった。
「真ん中の通路は、年長者たちが使ってたのかな? そのパーティ、エイを追い払ってた人に、朝の先頭を取らせていたよ」
「そうなんだ……。さっきの二人も、慣れたルートのほうが良かったんだろうね」
突き当りで左に曲がった。しばらくするとホーンゴリラが現れた。ルイスが胸を突いて倒した。緑の魔鉱石と、ポーションを落とした。
「久しぶりのポーションだ!」
ルイスは、アイテムポーションを持っていなかったから良かった。ルイスは魔鉱石を袋に入れて、ポーションはリュックにしまった。
奥の階段に着いた。ルイスがぽつんと言った。
「一体しかいなかったね」
「うん。裏からのほうが距離が短いよね」
「そうだね。次は裏から来よう」
「うん、いいね! どうする? ゲートから帰る?」
「そうだな。倒した通路から、またモンスターが出てくるか見てみようか」
「うん」
私たちは来た道を戻った。モンスターは現れなかった。さっき倒してから時間が経ってないからかな? ゲートに入って塔に戻った。
協会に行くとカシムさんだけで、ローシャさんとレヴィさんのパーティはいなかった。
「あれ。みんないないね」
「ああ。あいつら、泊まり込みで入ってるんじゃないか?」
カシムさんが答えた。そっか、元気になったということだから良かった。ダリアさんも言った。
「なんだか、ガランとしましたね。まさかこうなるとは」
アイテム恐るべし。私は早速水筒を出した。ホルダーの持ち手を持って見せる。
「今日は、これを採ってきましたよ!」
「おっ!! これはエイの無限水筒!」
「さすがカシムさん、よくご存じで! 一個余分に取れたのであげます」
カシムさんは水筒を受け取った。
「ありがとう! ユミ。お前はすごいぞ」
「今日はルイスも取ったんですよ」
「お前たちはやっぱりすごい!」
私たちは褒められて、ニッコリ笑い合った。カシムさんが何かに気がついた。
「ユミ、かわいいグローブをしてるな」
「そうでしょ。ルイスにもらったんです」
「昨日、ユミの誕生日だったんですよ」
「えっ! そうなのか? いつももらってばかりだからな。——よし、なんかお前の喜びそうなものを、俺もプレゼントするよ」
え~! びっくりだけど、うれしい!
「あ、はい。楽しみにしてます」




