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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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33/40

33、アイドルの事件

 寮に帰るとララさんにフルーツを渡した。


「まあ! 初めて見るわ! きっとおいしいわね。ありがとう」


 ララさんも喜んだ。ララさんと別れて階段を上り、ルイスにもフルーツを渡した。


「はい、これルイスの分」

「ユミの分がないよね。これはユミが食べて」


 ルイスはちゃんと分かってるな。


「じゃあ、半分こしよう。あとで、ケーキも持っていくね」

「うん。分かった」


 家に帰って、フルーツとケーキを切り分けてルイスに持って行った。ナンシーが帰ってきたので、自分の分のケーキも一緒に持って、ナンシーの部屋を訪ねた。


「ありがとう! ルラさんのケーキ食べたかったんだよね」

「ルラさんが作ったんだ!」


 上手だな。ジョンソンパンには、ルラさんが作った焼き菓子やプリンも置いてある。二人でお茶をしてケーキを食べた。おいしかった!


「そういえば談話室が騒がしかったんだけど、アイドルが襲撃(しゅうげき)されたんだって! レイが言ってた」

「え!?」


 私は驚いた。


「狙われたのは、ライルだったらしいよ」

「どういうこと?」


 ナンシーが聞いた話では、

 水曜のコンサートが終わった後にティアラたちがホールを歩いていたら、ファンの十三歳の男の子がライルめがけて走ってきた。男の子は手に持った薬品を、ライルめがけてかけた。


『ライル! 逃げて!』


 女の子たちの中から声がしてライルはとっさに避けたので、薬品が人気ナンバーワンのソレイユの顔にかかってしまった。薬品のせいで顔の一部が溶けたそうだ。——なんて恐ろしい……!


 男の子は人気ナンバースリーのディアナのファンで、最近ライルとディアナが話しているのを見て嫉妬していたそうだ。


「ひどいね」

「うん。その後の公演は中止になったって」


 怖い話を聞いて、ちょっと心が沈んだ。怪我をしたアイドルの子がかわいそうだな……。その日の夕飯はハンバーグなので、ちょっと気分が回復した。



 ユメイナ劇場のオーナーの部屋。アントニオは怒っていた。部屋にはアントニオの秘書のテオもいた。


「ライルの奴、避けやがって!」

「ライルも子供ですから……」

「……そうだな」


 アントニオはテオの言葉に冷静になった。


「あいつには、しばらくこなくていいと言っておけ」

「分かりました」


 テオは部屋を出て行く。


「とんだ、損失だ!」


 アントニオは苦々しく言った。午後の公演もなくなった。ソレイユはソルボンヌ侯爵から養女の申し出も出ていた。貴族と懇意(こんい)になれるところだったが、これでなしになったなと思った。



 翌日、ユミはルイスからもらったピンクのグローブをはめて部屋を出た。

 ダンジョンに行くときに、ルイスに事件の話をしてみた。


「昨日、談話室で俺もレイから聞いたよ。ひどいよね」

「うん」


 ダンジョンに着くと八層目まで降りた。でも、階段にいるときから騒がしい声が聞こえた。中に入ると、人が多くて本当に騒々しかった。当てが外れた……。私が言った。


「なんか多くない?」

「そうだね。——あ、ライルがいる」

「本当だ」


 ひときわ目立つ金髪の男の子がいた。私は寮の子が持っていた写真でしか見たことがなかったけど、派手だな。

 ライルはパーティの最年少だけどリーダーだ。私はライルの装備に目がいった。すねにサイのスネークゲイターをしている。蛇避けだ。付けていると防御力が一上がる。私も欲しいな。


 向こうは一戦して休憩しているようだ。岩壁にもたれたり、座ったりしている。こちらに気がついて、ライルが声をかけてきた。


「やあ、コンサートに来ていた勇者だよね」

「パーティ二人とも、アイドルカフェにいるのを見たわよ」

「なに? あの二人オタクなの? ウケる~。ピンクの装備もウケるよね」


 美人で薄オレンジ色のペタンコロングヘアーの女の子が言うと、もう一人のぼさぼさヘアーの女の子が、ケタケタ笑った。見られてたんだ。ていうか、自分もカフェに来てたんじゃん。なんか嫌な感じ……。みんな顔色が悪かった。デジャヴだ……。


 でも普通ダンジョンにいるはずなのに、なぜここにいるんだろう? 昨日の事件とは関係ないだろうけど……。

 ライルはあんなことがあったけど、涼しい顔をしていた。ルイスが聞いた。


「普通ダンジョンにいるんじゃないの?」

「……」


 みんな目線をそらして黙った。何だろう……。正面の通路を見ると、最年長の子がいるパーティがマーメイと対戦していた。順番取りしていた子が、ホーンエイを追い払っている。私がぽつんと言った。


「エイは倒さないんだ」

「エイは毒針を持っていて危険なんだ。アイテムもドロップしないし、捨てモンスターだよ」


 ライルのパーティにいる、年上で少し小太りの男の子が教えてくれた。


「なんで言うのよ。刺されたらおもしろいのに!」


 ぼさぼさヘアーの子がおもしろそうに言った。美人の子もニヤニヤ笑う。——エイのことは知ってますけど……。ルイスが言った。


「ここは混んでるみたいだね。九層はどうだろ」

「九層は地元の子たちが行ってるよ。そっちのほうが空いてるから行きなよ」


 ぼさぼさの子がニヤニヤしながら言った。ライルも言った。


「ここの通路はみんな使ってるからな」

「じゃあ、後でそうします」


 ルイスはそう答えるとこっちを見た。


「右を見に行ってから、森に入ろうか」

「うん」


 私たちは右に歩いて行った。右の通路では年上の女の子二人がホーンナマズと対戦していた。昨日八層で見たパーティのメンバーだ。この二人は先週の朝は見なかった。先を見ると、三人の年長者らしき男の子がホーンタコと対戦していた。もしかして、


「ルイス、このパーティも先週の朝見てないから、普通ダンジョンにいるパーティじゃないかな」

「え? ……何か変だね」

「うん」


 子供が全員ここに来ているのは変だった。私たちは右の森に入った。ルイスが言った。


「ライルたちは、嫌な感じだったね」

「本当! ダンジョン症なのかな?」

「そうかもしれない。——ユミはエイを気にしていたよね。エイは何を持ってるの?」

「エイはね、幻のアイテム、無限(むげん)水筒(すいとう)を持っているの! 絶対手に入れなきゃ!」


 みんな知らないということは、超絶レアだ。多分、カシムさんは知っているだろうけど……。


「何それ?」

「魔力がなくなるまで、半永久的に水が出てくる水筒だよ」

「すごい!」

「急所は多分お腹側だと思う。毒針は尾の付け根の上にあるよ。

 自分たちの分を取ったら、薬草を取ってここを出よう」

「うん!」


 エイの群れが五匹、肩ぐらいの高さを泳いできたので、私たちは下にしゃがんでエイの腹を突いた。エイは多分、わざと低い位置を泳いでるんだな。


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