31、モンスターの狩り
私たちは協会に行った。今日もレヴィさんたちはいなかった。あとはいつものメンバーだ。ソーセージをローシャさんたちとダリアさん、カシムさんに渡した。
「お、ありがとう」
「ありがとう。前のも、とってもおいしかったよ!」
カシムさんとダリアさんは喜んだ。
「ローシャさんのところは、家族がいるから三本どうぞ」
「ありがとう! かみさんも喜ぶよ」
「こないだのハムを食べてから調子がいいよ」
ハキムさんが言った。良かった! やっぱりハムのおかげなんだ。おっと忘れるところだった。私はロバのマントを四枚出した。
「ロバのマントが取れました」
「え!? 嘘だろ」
カシムさんが驚いた。
「それが、群れを見つけてお願いしたら、くれました。アハハ……。でも、次は見つかるか分からないです」
「分かった」
カシムさんは、目を押さえて上を向きながら答えた。これから暑くなるから、冒険者以外はマントはいらないし、当分大丈夫だろう……。
「色はどうします?」
「俺は、チャコールグレーをもらう。——ありがとう、ユミ」
珍しくカシムさんが最初に選んだ。残りをローシャさんたちに持っていく。
『ありがとう! ユミちゃん!』
「これで、野営も楽になるな」
「うん、また泊まり込みで入ろう!」
ローシャさんがグレーを取って、二人が茶色のマントを受け取った。やる気が出たようで良かった。
ダリアさんに今日の換金をお願いする。
「今日は三九六九ルトよ」
「お、すごいな」
カシムさんが初めて褒めた。ルイスが説明した。
「今日は十一体だけど、九体はユミが倒したんです」
「すごいな!」
「えへへ」
叩いただけだけど。やっぱりハンマーのおかげだよね。
寮に帰ると、ララさんとナンシーにハンバーグとソーセージを渡した。ナンシーには生クリームも渡した。二人とも大喜びだった。
ソーセージの残り一本と、誕生会の分から自分たちで一本ずつ分けた。やっぱり明日誕生日だから、ハンバーグは明日の夕飯にしようっと。今日はソーセージを食べることにした。
翌朝、廊下でルイスに会うと、
「誕生日おめでとう!」
「ありがとう!」
今日はルイスが最初に祝ってくれた。すごくうれしい!
ララさんに挨拶して寮を出た。
「ハンバーグ食べた?」
「食べたよ。すごくおいしかった」
「私は今日食べることにしたんだ」
「あはは、そうなんだ。誕生日だもんね」
「うん。今日はどうする?」
「今日は午前中から七層目に行って、シマウマを探そう」
「分かった。その前にミサたちに薬草を渡していい?」
「いいよ」
私たちはダンジョンに着くと二層目に降りて、ミサたちに痛み止めと眠り草を渡した。ミサたちは眠り草に驚いて、すごく喜んでくれた。
ミサたちと別れると六層目に入った。できればコーネルたちは会いたくないけど、中央の道を急ぎ足で通り抜けた。大丈夫だった。ホーン牛とも出会わなかった!
「よしっ」
ルイスが満足そうに言ったので、ちょっと笑った。階段から七層目に降りた。奥はすごく静かだ。
「誰もいないね」
「うん。用心して森に入ろう」
「うん」
ここからは、大きくて強そうなモンスターが出てくるから気をつけないと。右側の森に入った。しばらくすると開けた場所で、ホーンシマウマの群れが草を食べていた。私は小声で言った。
「いた!」
こんなにたくさん! もう果物にしか見えない……よだれが……。
「横にけもの道があるから、そこでユミが待ち伏せして叩いてみて。俺が先のほうに回り込んで追い立ててみる」
「分かった」
目の前に、森から中央に出る道が横切っている。私はその向こう側で待つことにした。左側から来たほうが多分打ちやすい。
ルイスは先に回り込んでそこからシマウマの前に姿を現した。聖剣が赤い光をまとっている。シマウマたちは驚いて、数頭がこちら側へ逃げてきた。
よし! 私は逃げてきたシマウマを横から叩いた。でもシマウマは消えなかった。七層からはDランクのモンスターだ。ちょっと力が足りなかったみたい。シマウマは驚いて立ち止まると、私をギロリと見た。歯をむき出しにして立ち向かってくる。
うわっ! 態度が全然違うんですけど! シマウマは前足を振り上げた。どうしたらいいの!? 私はシマウマの胸の上を叩いた。すると、ポンと消えた。
急所だったみたい。半分白と黒の魔鉱石とダンジョンフルーツを落とした。やったー!!
次のシマウマは私を見ると後ろを向いた。?と思ったら、後ろ足で蹴り上げてきた! 私はとっさに脇の草むらに避けた。
ウォ!
抑えめのうなり声がした。見ると後ろからホーンメスライオンが、シマウマの後ろ左太ももに噛みついた!
うわ! 私は驚いた。次に子ライオン二匹が右太ももに噛みつく。子供も怖い……。
シマウマの体にしわが寄り、みるみる厚みがなくなって紙のようにペタンコになった。そして、粉のように飛散して消えた。魔鉱石もアイテムも出ない。消え方も違うな。
親子ライオンはシマウマのエネルギーを吸い取ったようで、満腹になって元来たほう向へ戻っていった。
すごいものを見た……。
「ユミ、大丈夫だった?」
ルイスがこちらに駆け寄って来た。
「うん、なんとか胸の上を叩いて一体だけ倒せた。急所だったかもしれない」
「そうなんだ。じゃあ次はそこもやってみる」
「あとは親子ライオンが来て、食べたのかな? シマウマのエネルギーを吸い取ってたよ」
「え!?」
ルイスはそれを聞いてギョッとしていた。
「ルイスは?」
「ユミに向かってくのが見えたから、できるだけ倒したほうがいいと思ってかなり倒したよ」
開けた場所には、魔鉱石とフルーツが転がっていた。
「うわ! すごい」
私たちは魔鉱石とフルーツを拾った。魔鉱石は六個、フルーツは四個あった。プラス、私が倒した分一個ずつ。私がフルーツ、ルイスが魔鉱石を袋に入れた。
「あの親子ライオン、手前の森にいた奴だよねきっと」
「そうじゃないかな」
モンスターはああやって捕食してるんだな。七層目には、病院で使う麻酔草があるので採取した。私たちは目的を果たしたので、階段の近くで早めの昼ご飯を食べた。
「午後は八層目を見に行こうよ」
「うん。そういえば私たちD級になれたね」
「そうだね!」
「やった! ということは私たちコーネルたちを追い抜いたことになる?」
「あはは、そうだ。悔しがるだろうから、あいつらに会わないようにしよう」
ルイスは笑った。昼ご飯が終わると階段を降りた。
八層目は幻想的な世界だった。水の円柱がいくつも天井まで伸びている。下は低い木の森だ。宙を水中生物のホーンエイが漂っている。ここはちょっと涼しいというか寒い。
「わあ、不思議なところ」
「ここは他と違うね」
「水属性の世界だね」
怪魚のマーメイがいた。頭は髪のようにオレンジピンクのふさふさのひれが付いたタツノオトシゴで、体が魚だ。うろこは青く、七色の触手のようなものがいくつも出ていて、先がクルクルと巻いている。尾も上にカーブして体は縦向きだ。緑がかった黄色の顔に、長いまつ毛の大きな目が怪しくこちらを見ていた。
「マーメイがいたぞ!」
声がしたので、私たちはとっさに近くの茂みに隠れた。見ると女子が二人いる五人パーティがやってきて、さっき見たマーメイと対戦していた。
マーメイは水を吐いて攻撃している。水がかかると前が見えにくくて、攻撃しづらいな。触手も伸ばして当てていた。あと高さもあるから、マーメイのほうが有利だった。
ダンジョン内は、人に当たると危ないから弓は禁止されている。何かを投げるしかない。
「奥まで人がいるね」
「うん」
「九層目に行ってみようか」
「うん」
私たちはこっそり階段まで戻ると、九層目まで降りた。




