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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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30/37

30、疲れている子供たち

 正面の通路の端まできた。昼になったので階段の近くで昼ご飯を食べた。ルイスが言った。


「今日は、こっちの階段から六層目に降りて、隠れているモンスターを探そう。あいつらにも会わなくて済むからな」

「そうだね」


 私たちはちょっと笑った。コーネルたちのことは気になるけど、午後は一時間しかないからな。


「奥に行きたいときは、六層目を突っ切れば時間はかからないな」

「いいルートができたね」

「うん。シマウマも奥にいるよきっと」


 ルイスはそう言うとほほえんだ。奥は手強いかもしれないけど、ルイスがいれば大丈夫だろう。


「ダンジョンフルーツ楽しみだな!」

「ダンジョンフルーツ?」

「うん、前言ってた果物のこと。ダンジョンにしかないフルーツだから、ダンジョンフルーツって言うの。桃ぐらいの大きさで、マンゴーより少し固め、しっかりした果肉で甘いって。ケーキには最適だよ」

「へ~。楽しみだな」


 私たちは昼ご飯が済むと、六層目に降りた。森に入って、隠れているモンスターを探した。


「あ、ホーンカメレオンがいる!」


 私が静かに言った。私も目が慣れてきたみたい。枝の上にいたカメレオンを叩くと、七色の魔鉱石と三角の穴あきチーズが落ちた。


「チーズだ! うわ、これでグラタンを作ったら絶対おいしいよ! 魔鉱石もきれい」

「そうだね」


 でもこの状態で持っていたらモンスター化するので、必ず魔法使いが無効化して()魔鉱石にしないといけない。半魔鉱石になれば普通の宝石としても使える。ただ、魔法使いに加工を頼むと高いのだ。

 庶民には必要ないからやっぱり換金だなと思う。


 途中で、薬草を見つけた。


「眠り草だ」

「え?」

「睡眠薬に使う薬草だよ。通称、眠り草」


 ルイスは語呂(ごろ)に笑った。私は採取する。また歩き出すと、ルイスが静かな声で言う。


「あそこ見て」


 見ると、ホーン山羊が四匹寝ていた。私はそっと近づいて全部叩いた。ポンと音を立てて、それぞれいろんな色の魔鉱石と生クリームの入った瓶を落とした。


「生クリームだ! わあ、ケーキのクリームが手に入った! 最高!」

「生クリーム……。アイテムって不思議だよね……」

「なんでもありだね」


 ルイスが微妙な顔をしたので、私はちょっと笑った。少し大きめの瓶に貼ってあるラベルには、モンスターと書いてあり、その下に大きい文字で生クリームと書いてあった。モンスターの会社でもあるのだろうか?

 中央の道を挟んで隣の森にも入ると、ホーン牛が四頭、草を食べていた。


「やっぱりいた!」


 ハンバーグだ! ゆっくり後ろに回り込んで、私が叩いてみた。ポンッと牛が消えた。もう一匹も驚いている隙に叩いた。牛は大きいから隠れながら動ける。残りの二頭も叩いて全部消えた。四頭とも油紙の袋に入ったハンバーグを落とした。どういう仕組みなんだ……。


「これで今日はハンバーグだね!」

「うん」

「やっぱり、大人しいモンスターは驚いて消えたみたいだね」

「そうだね。好戦的なモンスターとは違うみたいだね」


 ルイスも顎に手を当てて考えていた。今日は簡単に十体も倒せた。ルイスが提案した。


「ちょっと時間もあるから、下の様子を見に行こうか」

「うん、いいよ」


 私たちは中央の道を突っ切って、手前の階段から七層目に降りた。


 相変わらず騒々しかった。三方の道をそれぞれ見ると、また同じようにモンスターと対戦していた。モンスターも同じだから、縄張りがあるのだろう……。


 左の森にこっそり入って見ていると、コーネルたちはまたライオンの親子連れと向き合っていた。私たちは茂みに隠れて見ている。


「あいつら、また同じだ」

「本当だ!? ……あれ? どういうこと?」


 同じことを()り返してる? 昨日は撤退したって言ってたけど……親子連れを()けたらいいんじゃない?


「もしかして、ダンジョン症? 同じことを繰り返しているのに気がついてないとか?」

「ありえるかもね。聞いてみないと分からないけど。戻ろう」

「うん」


 私たちは見つからないように、身を低くしてゆっくり森を出た。


「分かっててやってるのかな? そのうち、倒せるとか?」

「コーネルたちも一か月かかったって言ってたから、そのうちループから抜け出せるのかも」


 変化がないと、なんだかよく分からなくなるよね……。階段に向かうと、女の子たちが休憩していた。


「あれ、聖剣の子じゃない?」

「声かけてみようよ。あの~」


 女の子二人がルイスを見ながらやってきた。前見た、おしゃれな服装の女の子たちだ。スカートの女の子が話しかけてきた。


「私たちのパーティを手伝ってくれませんか?」


 中央の道で対戦していたパーティだ。男の子たちは道の途中で話していた。モンスターは縄張りから離れると、追ってこないみたいだな。


「俺たちもう帰るんだ」

「え!? まだ、十四時前ですよ!?」


 ルイスは黙った。短パンの女の子が、私を見ながらボソッとスカートの子に話す。


「多分、あの変なハンマーの子に合わせてるんだよ」

「そっか。あの子なんか邪魔だよね」


 普通に聞こえている。当然ルイスも耳がいいから聞こえている。……あれ? 私は小さめの声で話しかけてみた。


「あの……」


 二人は聞いていなかった。ルイスにこっそり話した。


「あの二人、耳が悪いのかも」

「そうみたいだね」


 ルイスは二人に聞いてみた。


「君たちのパーティは、いつも二体倒してるの?」

「そうです。それで一日が終わるの」


 五人で二体だと効率(こうりつ)悪いよな。短パンの子が答えた。二人とも声がデカい。ここが騒がしいからかな? 目の下にクマがあって、顔色も悪いな。ローシャさんたちの、以前の状態と似ていた……。


「私たち、七層目であのパーティに誘われて後方支援(しえん)しているの。でもずっと、進めないの」

「そうなのか。ありがとう。じゃあ、頑張って」


 ルイスは手をふり、私たちはその場を後にした。二人も名残惜(なごりお)しそうにルイスに手をふる。私のことは見ていないな……。私も手はふらずに、いないものとして振る舞った。

 階段を上ってからルイスが申し訳なさそうに言った。


「あの二人、ユミの悪口を言ってたね……」

「うん。前も言われたけど、もう気にしてないよ。だって、このハンマーはすごいから」

「そうだね」


 私がハンマーを前に出して言うと、ルイスもちょっとニッコリした。


「あの階にいる子たちも、ダンジョン症になっているのかもしれないね。顔色が悪かった」

「そうだね。コーネルたちも顔色がよくなかったから、そうかもしれない」


 コーネルたちは分からなかったな。——でも、言ってもしょうがないだろうなと思う。みんな、自分のやりたいようにしたいからな……。


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