28、ミミズクの時計
「無事だったんだね」
「当たり前だ」
「あの後どうしたの?」
「逃げたよ」
コーネルは不機嫌そうに答えた。ルイスが聞いた。
「お前たち、七層目では狩りに成功したのか?」
「まだだよ。一回も成功してない。だからルイスに頼んだんだよ」
「そうなのか。他の奴らはどうしてるんだ?」
「逃走しながら、相手の体力を削って、またチャレンジする感じだよ」
「なるほど。でも、それだと倒す数が少なくないか?」
「一人二百ルトぐらいにはなるんじゃないか?」
「二百ルト!?」
私が思わず声に出した。二百ルトでも派遣に比べれば八倍だけど……。
「少なくない? それなら低層階で多く倒したほうがいいのに」
「みんな先に進みたいんだよ」
「弱いやつを倒しても強くなれないだろ。呑気なお前とは違うんだよ」
二人が私に次々と言った。悪かったわね……でも、そういうことか……。ルイスがまた質問した。
「それで、ここはまた全部倒したのか?」
「そうだよ」
私はモンスターの種類を聞いた。
「ここには何がいるの?」
「牛だよ」
「牛か~。ハンバーグが取れるよね。食べてる?」
「食べるわけないだろ。少しでもお金が欲しいから換金するよ」
もったいないな。私はルイスに言った。
「ハンバーグは当分食べられそうもないね」
「そうだね」
残念。ハンバーグがあったら、夕食は最高なのに……。二人は昼ご飯を終えた。
「俺たち下に降りるけど、ルイスも来る?」
ちょっと、私は?
「いや、俺たち六層目を見て回るよ」
「あっそ。じゃあな」
二人とも行ってしまった。私はルイスに聞いた。
「見て回るの?」
「うん。思ったんだけど、俺たちが見てないだけで、もっといるんじゃないかな。ライオンの親子が森の中にいただろ。だから隠れてると思う」
「なるほど!」
「あいつらは、道だけを歩いてたと思う。ここだけ少ないなのは、おかしいからな」
「そうだね!」
それなら楽しみだ!
「森にも牛がいるかもしれない!」
「そうだね」
ルイスは苦笑した。
「静かに森に入ろう」
「うん」
私たちはゆっくり森に入った。すぐにルイスが小さい声で言った。
「やっぱりいる」
「え? どこ!?」
「この木の、ユミの目線の高さを叩いて」
「うん」
私は言われた通り、木の幹をハンマーで叩いた。すると、一瞬ホーンミミズクが見えてポンと消えた。目の色と同じ明るいオレンジの魔鉱石と、金色の懐中時計が落ちた。
「ホーンミミズクがいた!」
木に擬態して張りついていたのだ。魔法で引っ付いてるのかな? 私は急いで魔鉱石と時計を拾った。ルイスに時計を見せて説明した。
「この時計は、幻の魔法の時計なんだよ。普通の時計は巻かないといけないし、魔法石が入った時計は魔力が切れると魔法石を交換しないといけないけど、この時計はその必要がないの。
時間の狂いもないし、ずっと動き続けるから最高級の時計なんだよ。売値は金貨十枚からだって」
「すごい!」
ルイスは値段に驚いた。今までで一番高いアイテムだと思う。でも、毛生え薬といい勝負かな……?
時計には継ぎ目がないので、中を開けて見ることはできない。多分、壊れたら消えちゃうんだと思う。
後ろには真ん中にミミズクと、その周りに葉っぱの彫りがしてあった。
「ミミズクは見つからないから幻なんだと思う。分かるなんてルイスはすごいね」
「森に慣れてるからかな?」
そっか……。私は感心した。それから、ルイスがミミズクを見つけては叩いて、おもしろいように時計が取れた。
「すごい! 四個取れた。これで、みんなのパーティ分取れたね。つい夢中になっちゃったね」
「うん」
「夜行性だから寝てたんだよね。きっと」
寝てるところを不意に叩かれてびっくりしただろうな。なんか申し訳ない気もする。でもこれがあれば、時間も正確だからダンジョン探索に役に立つ。ルイスが言った。
「この層には、もっとモンスターがいるだろうね」
「じゃあ、他にも隠れているものがいるんだね。
——思ったんだけど、モンスターは驚いたり、衝撃に弱いのかな? 私はあんまり力を入れずに叩いてるんだけど」
「それもあるかもしれないけど……ユミは、モンスターにストレスを与えてないんじゃないかな。普通の狩りでも、獲物にストレスを与えないと肉がおいしいって話だから」
「そうなんだ」
その話は知らなかったな。ルイスは森の近くで暮らしてたから詳しいな。ルイスは話を続けた。
「それと薬局の店長さんが、魔力は気持ちに敏感だって言ってただろ。
ピギーもユミからエネルギーを欲しがって、他の人からは取らなかった。ユミには、他の人にないものがあるんだよきっと」
「え~。そうなのか」
これはもしかしたら、天職ということ!? そうならうれしいな……。私はとてもウキウキした。
「時間だから帰ろう」
「うん!」
私たちは階段を上って協会に向かった。
協会の中に入ると、カシムさんとローシャさんたちだけで、レヴィさんとダンさんはいなかった。
「こんにちは」
「こんにちは、ユミちゃん」
『こんにちは』
ローシャさんたちが挨拶する。三人とも今日も顔色がいい。良かった。
「今日は、レヴィさんたちはいませんね」
「ああ。あいつら、金曜から泊まり込みでダンジョンに入ったみたいだよ」
「そうなんだ!」
ジットさんが言った。大丈夫かな?
「今日は、ロバのマントよりも、すごいものを持ってきましたよ」
「なんだ?」
カシムさんが身を乗り出した。私は魔法袋から時計を取り出した。
「じゃーん。魔法の時計です」
「あの、ミミズクの!?」
「さすが詳しいですね」
「お前のほうが詳しいのが、びっくりだよ」
「ユミは、ダンジョンオタクなんですよ」
ルイスが補足する。
「なるほど、そういうことか」
「パーティに一個ずつ取ってきたんです。どうぞ」
ローシャさんとカシムさんに渡した。
「くれるのかい……?」
「はい」
「ありがとう」
ローシャさんは、目を見開いたまま泣いた。二人がなだめながらお礼を言った。
『ユミちゃん、ありがとう』
「たいしたもんだ。ミミズクは見つからないので有名なのに」
「ルイスが見つけたんです。木に擬態して背中で張りついてたんです」
「でも、ユミじゃないと取れないと思います。ユミはモンスターにストレスを与えないんじゃないかって、話してたんです」
「ほお~……そうなのか。欲しいものはユミに頼むしかないな。
お前らは、アイテムの最強パーティだな!」
カシムさんに褒められて、二人で顔を見合わせて照れた。二人が認められてうれしかった。




