27、誕生会の予定
ユミたちの席では、ナンシーが話を切り出した。
「今度の水曜日、ユミの誕生日なんだよ」
「そうなんだ!」
「うん!」
ルイスはびっくりしていた。ナンシーはルイスに聞いた。
「それで来週の夕食会は、ユミの誕生会をしようと思うの。ルイスの部屋の番だからどうかな?」
「いいよ」
「私も手伝うね」
主役だけど、準備は大変だから。ナンシーも同意した。
「うん。みんなでやろうね。飾りの準備は午前中にやろう。ケーキも作るね」
「うん」
ルイスも笑顔で返事をした。そこへハオ君が戻ってきた。
「何の話をしてたの?」
「来週の日曜日に、ユミの誕生会をやる話をしてたんだ」
「へえ……! ——俺も参加していい? ちょうど次の日曜は休みだから」
「え!?」
私は驚いたけど、ナンシーは喜んだ!
「もちろんだよ。準備はこっちでするから、ハオ君は手ぶらで来てね。ちょうどルイスの部屋でやるから良かった! 十八時開始で二十時終わりね」
おお~、ハオ君が来る? ハオ君はアイドル寮で暮らしてるけど、門限が二十時半なのだ。
アイドルが家に来るなんてびっくりだけど。他の子が聞いてないといいと思ってちらりと横を見たら、ひそひそと女の子たちが話していた。ルイスがいるからいっか。
男の子が、男性アイドルカフェにいるのは珍しいので、ルイスは注目を集めている。ハオ君もそれに気がついている様子だった。
「オーナーが多分、君と契約したがってると思うんだけど」
「……俺、ダンジョンの仕事以外興味ないから、断ってください。それに、聖剣がすごいだけで、俺は強くないので」
「ああ、そうなんだ。分かった」(はっきりしてる子だな。謙虚なのか本当にそうなのか……?)
ハオ君はルイスを観察していた。ナンシーがハオ君に話しかけた。
「今度、ジョンソンパンでアイテムバターのパンを出すのよ。ユミたちが取ってきてくれるの」
「へえ~。アイテムバターって希少で高級品だよね」
「うん。少し高めになるから、買いやすいように試食も用意するよ」
「バターは割と取りやすいと思う。でも低層階だから、冒険者が関心ないんだと思う」
ルイスが説明した。最初はルイスがたくさん取ってたもんね。
「おいしいし、バター買わなくて済むのにね」
「食べてみたいな」
私の言葉に、ハオ君がぽつんと言った。
「え、じゃあ今度、日曜に渡せるように取ってくるよ」
「え? いいの?」
「ありがとう!」
ハオ君は驚き、ナンシーが先にお礼を言った。
「うん、ついでだもんね。ナンシーもバターが無くなったら言ってね」
「うん!」
「ありがとう」
ハオ君もお礼を言った。
「そうだ、ハムとソーセージも日曜の材料で取ってこようよ」
「そうだね」
私が言うと、ルイスもうなずいた。私は本で見た他のアイテムを思い出した。
「ホーンシマウマがいるはずなんだけど、見つけたら果物も取れるな……」
「果物があったらケーキに入れられるね。メインはユミの好きなパングラタンを作るけど……」
ナンシーはケーキも得意だ。ライオンもいたらシマウマもいるはずだから、取ってこなくちゃ! グラタンにはジョンソンパンのハード系のパンを入れる。普段は硬いパンは食べないけどグラタンに入れるとちょうどいい。
「ソーセージなら、ホットドッグもいいな。一本だとちょっと量が多いかな?」
「カットしたら? 人数が多いから大丈夫だよ」
「そうだね。ハムもカットして一口ステーキにしよう」
「じゃあ、あとはサラダだね。これでメニューが決まり!」
簡単なものだけど、アイテム食材がおいしいから、それで十分だと思う。今からランチを食べるけど、誕生会のご飯のほうも楽しみだ!
ハオ君は壁にかかった時計を見ていた。
「初めて食べるから、アイテム料理楽しみだな。——じゃあ、時間だから戻るね。日曜はよろしく」
「うん!」
ナンシーがニコニコで返事をした。ハオ君は、さわやかな笑顔を投げかけて戻っていった。
「ハオ君が誕生会に来てくれるなんて、うれしい!」
ナンシーの喜んだ顔を見て、私たちもほほえんだ。その後、運ばれてきたランチをおいしく食べた。
ランチの後は夕食の食材を買いに行って、それぞれ部屋に戻ったら、またナンシーの部屋で夕食会の準備をした。
月曜になりダンジョンの廊下を歩いていた。ルイスに今日の予定を聞く。
「今日はどうする?」
「バターを取ろうか。それが済んだら、五層目に降りて誕生会の食材を手に入れよう。午後からまた六層目に行こう」
「ああ、あの二人に会うの楽しみだな」
「そうなの?」
「生存確認。いたらほっとするよね……」
私がぽつんと言うと、ルイスは笑った。
「協会から何も話がなかったから、大丈夫じゃない?」
三層目で素早くバターを三個確保した。今度は、モンキーが逃げることもなかったので楽だった。前回ルイスが仕留めなかったからかもしれない。
五層目に降りた。
「すっかり忘れていたけど、ロバのマントも手に入れなきゃ」
「そうだったね」
猪と豚には会って、見事ソーセージとハムを手に入れた。私は相変わらず、ハンマーを当てるだけだけど……。ルイスは喜んだ。
「これで誕生会の食材がそろったね!」
「うん」
早々に揃えられて良かった! 魔法袋で保存しておけばいいもんね。——でもロバには会わなかった。いつも呑気に歩いているのに……?
「ロバに会わないね」
「もしかして、ユミを警戒して移動したのかも。ちょっと探してみる?」
ルイスが少しおもしろそうに言った。毎日はかわいそうだな……。
「うんん、今日はいいや。六層目に行こう」
「分かった。昼ご飯を早めに食べてから降りない?」
「そうだね。静かに食べたいもんね」
六層目にはコーネルたちがいるからだな……。時計を見るとまだ十二時前だった。私たちは入口まで戻ると、入口の近くで昼ご飯を食べた。その後、六層目まで降りた。
「コーネルとロブを先に探そう。位置を把握しておいた方がいいから」
「うん。分かった」
私たちは、コーネルとロブの名前を呼んだ。少し離れたところで声がした。
「ここだ!」
行ってみると道の途中で昼ご飯を食べていた。——私はほっとした。




