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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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25/33

25、銀行に行く

「あの二人、毎回あんな感じなのかな?」

「そうかも……」


 階段を上りながら二人で笑った。ルイスが聞いてきた。


「寄るところはどこなの?」

「ミサたちが貯金してるって聞いたから、私も銀行に口座を作ろうと思って。ルイスは銀行口座を持ってる?」

「持ってない。必要だと思ってた」

「じゃあ、一緒に銀行に行って口座を作らない?」

「うん、いいよ」

「じゃあ決まり。銀行は三時までだから間に合うと思う」


 この街には銀行が三(こう)あって、三行とも離れたところにある。東にある貴族の区画にある銀行と、北にある平民の区画の中心地ユメイナにある銀行、それから協会に近い南にあるアトロス銀行だ。協会からは十分で行けるけど、私たちの寮からは二五分だ。ユメイナは十分で行ける。


「家から近いところがいいよね」

「そうだね。ユメイナ銀行の方が近いよね」

「うん。じゃあ帰りにユメイナ銀行に行こう」

「うん」


 私たちは協会に寄った。今日はいつものメンバー六人だけだった。良かった。みんなと挨拶を(かわ)わすと、私はロバのマントを二枚取り出した。カシムさんだけ反応して、椅子から腰を浮かした。


「今日も取れたんです。私たちまだ必要ないから、先にレヴィさんのパーティに渡そうってことになって」

『え!?』


 レヴィさんのパーティは驚いた。私は二人にマントを差し出した。


「どうぞ」


 二人は戸惑(とまど)っていたけど、すぐに喜んだ。レヴィさんがグレーのマントを掴んだ。


「私がグレーね。素敵だわ。ありがとう!」

「ありがとう」


 ダンさんが茶色のマントを受け取った。カシムさんが言った。


「どういうことだ?」

「別のロバがいて……私を見たら落として逃げたんです。この分だとすぐに集まりそう……」

「マジか……」


 カシムさんが目を押さえて黙った。静かになったので放っておこう……。


「ユミちゃんすごいね」


 ローシャさんが、目を見開いた驚きの顔のまま固まって褒めてくれた。レヴィさんはマントを広げて見ていた。


「これで四十層に挑戦できるわ。これでも私たち、A級なのよ。ねえ、さっそく帰って明日の準備をしましょうよ」

「ああ」

「ありがとうユミ」


 レヴィさんが私のほほにキスをした。私は驚いた! 初めて祝福のキスをされた。二人は手をふって協会を出ていった。あの二人はA級だったんだ……意外とすごいかも。


 四十層からはA級しか入れない。普通ダンジョンは層ごとに入れるランクが決まっている。そのランクがパーティに一人でもいればOKだ。

 今日の魔鉱石を受付で出す。


「今日は一〇二〇ルトね。魔法袋の残りの代金は、昨日カシムさんが払ってくれたからもういいわよ」

『え!?』


 私たちは驚いてカシムさんを見た。カシムさんは少し恥ずかしそうに言った。


「マントをもらうから、そのお礼だ」

『……ありがとうございます!』


 私たちは喜んでお礼を言った。


「ユミは中古の魔法袋を買うのよね。在庫があったから、メイアたちもさっき買ったわよ」

「そうなんだ!」

「色はチャコールグレーとエンジがあるけど、どうする?」


 ダリアさんが二枚出してくれた。どっちも渋くていい色だよね。


「エンジにします」


 赤系がかわいいかな。私は巾着から金貨一枚を取り出して、ダリアさんに渡した。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 魔法袋と保証書兼使用書をもらった。ルイスが私を見て言った。


「良かったね」

「うん! 紺色のほうは中身を出したら、ルイスに渡すね」

「うん」


 私たちは換金を終えると協会をあとにした。さっそくユメイナの銀行に向かった。ここからも十分ぐらいだ。

 銀行に着いた。銀行は白っぽいレンガ(づく)りでなかなかの大きさだ。中に入ると、窓口が並ぶ。行員さんが来て要件を(たず)ねてくれた。


「今日はどうされました?」

「二人で口座を作ろうと思って」

「そうですか! ではこちらへどうぞ」


 右側にある、椅子が置いてある窓口に案内された。


「どうぞおかけください」

「入金金額は、いくらでもいいですか?」

「はい、いいですよ。一ルトからでも構いません」


 聞いてほっとした。まだそんなにお金を持ってないから……。


「ご職業は何ですか?」

「二人ともダンジョンの冒険者です」

「そうですか。今十八歳未満の方が口座を作ると、粗品(そしな)をお渡しするキャンペーンをやっています。こちらからお選びください。口座の開設書を持ってきますね」


 店員さんがチラシを貼った卓上看板を指して言うと、その場を離れた。商品の写真が載っている。食べ物から日用品まで五個ある。


「どれにしようかな。あ、ユメイナの高級ホテルのクッキーがある! 食べてみたいから、私はこれにする。ルイスは?」

「ん-、洗剤かな。一人暮らしだとあまり減らないけど」

「そうだね」


 ルイスは堅実(けんじつ)だな……。ちょっと笑った。

 寮は共同の洗濯場があって、容量の小さい手回し式の洗濯機から、大物が洗える下に排水口の付いた(ひざ)ぐらいの高さの(おけ)が使える。上から、丸い板が付いた洗濯棒で押し洗いする。すすぎが終わったら、桶の底より小さい板を置いて、上から乗って脱水するのだ。


 他にあるのは、ティッシュ五箱、トイレのちり紙一パック、紅茶一箱だ。


「クッキーは五枚しかないけど」

「これは、値段(そろ)えてるよね。ティッシュもちょっといいのじゃないかな」


 店員さんが開設書を持ってきて渡してくれた。私たちは必要事項を書き込んだ。


「身分証はありますか? 冒険者証でもいいですよ」

「はい」


 二人で首に下げた冒険者証を外して渡した。行員さんはそれを見て書いた内容を確認すると、身分証のチェック項目にレ点を打った。

 この国では偽名でも口座を作れるので、身分証はなくてもいいのだ。


「では、最初に預けるお金をお渡しください」

「いくらにしようか?」


 ルイスに聞いてみた。


「じゃあ、銅貨一枚にしよう」

「うん」


 私たちはそれぞれ巾着から銅貨一枚を出して、行員さんに渡した。


「粗品は何にしますか?」

「私はクッキー」

「俺は、洗剤で」

「分かりました。では、登録してきますので、しばらくお待ちくださいね」

「はい」


 何となく銀行は静かで緊張するな。これからどのぐらいお金が必要になるか分からないから、あまり預けられないけど……。私の武器を買って、あっという間に使ったこともあったし。あと考えていることがある。


「カシムさんとの取引は、それなりにもらうつもりなんだ。そのときはルイスと山分けね」

「え? いいの?」

「だって、ルイスがいなければ取れないよ。それに、税金が多くなるから分けたほうがいいかなって。毛生え薬のほうは、ミサたちに紹介料を払うつもり。

 私の分は、寮のみんなに魔法袋を買おうと思ってるの。魔法袋は便利だからみんなも欲しいと思うんだよね」

「それなら、俺の分も使ってよ」

「え? いいの?」


 今度は私のほうが聞いた。


「うん。それに、物々交換にすれば一部非課税(ひかぜい)になるよ。俺の枠も使ってよ」

「そうなんだ」


 ルイスはニッコリ笑った。よし、税金のことを調べなきゃ。


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