24、モンスターと契約
「あれ、手に持ってるの、ほこりじゃないか?」
「ああ。こいつ、ひょろひょろ飛んでたから捕まえたんだよ」
もう一人の子が、ほこりのしっぽを掴んでブンブンと振り回した。わっ! かわいそう!!
「こいつ珍しい色だろ。高く売れるんじゃないかと思って」
「モンスターの持ち出しはダメだろ?」
ルイスが眉をひそめて言った。よく見ると、あの白っぽいほこりだった。また背中が欠けて、像がジリジリとしている。振り回したことで、ピーピー、ギーギーと悲しそうに鳴いたり怒ったりして、逃げようと動き回っていた。……なんだか、かわいそうだ……。
「それにその子、前にユミのエネルギーを吸い取ったんだ」
「え!? じゃあ危険じゃん! 倒さなきゃ」
「待って! それはやめて!」
私は思わず声を出した。男の子たちは顔を見合わせた。
「でもな……」
二人の気がそれた瞬間に、ほこりが手から逃れてこっちに来た。
「あ! 逃げた」
「おい! お前のせいだぞ、せっかくの獲物が」
二人は取り分がなくなって悔しそうだ。
「じゃあ、半ポーションを三個あげるよ」
ルイスはそう言うと、リュックから半ポーションを三個取り出した。二人に全部渡す。
「え!? こんなに?」
「うん。これで見逃してよ」
「もちろんだよ! ほこりの魔鉱石より、半ポーション一個のほうが高いんじゃないか?」
「お前、いいやつだな」
もう一人が、ルイスの腕を軽くポンポンと叩いた。薄い黄色い髪の男の子が自己紹介をする。
「俺は、コーネル」
「俺は、ロブ」
明るい茶色の髪の男の子も名前を言った。コーネルが言う。
「俺たちもう友達だから」
「ああ……俺はルイス」
「じゃあな」
二人はルイスに無理やり友達を押し付けると、手をふって行ってしまった。多分、怒られないようにだな……。
ほこりの視線を感じた。また突進してきたので、さっと避けた。ほこりは地面に落ちた。ピギー……と悲しそうに、よろよろと浮いた。
「また、エネルギーを取ろうとした」
「……ユミ、そいつと契約したらどうだろう」
「え? 契約って、精霊と魔法使いがするものでしょ?」
魔法は精霊の力を借りてるという。契約しなくても魔法は使えるけど、精霊と契約もできるのだ。でも、モンスターと契約する話は聞いたことがないな……。
「どうすればいいの?」
聖剣が仄かに赤い光を出した。ルイスは聖剣のほうを見ている。
「名前を付ければいいって」
「名前か……」
ルイスは聖剣と話ができるんだ。——う~ん。
「じゃあ、ピーピーギーギー鳴くから、ピギーにする。
——あなたはピギーよ」
私がほこりに言うと、ほこりは小さく光った。光が収まると体が完全体になった。
「あ、治った」
「ユミとつながったんだ」
「え、じゃあエネルギーが吸い取られてるってこと?」
「大丈夫じゃないかな」
「そうなんだ」
聖剣とルイスのようなものかな? ピギーは私の周りを回って喜んでいた。うれしそうだからいっか。次にピギーは聖剣のほうに向かうと、強気な顔でちょっかいを出し始めた。間合いを詰めたり離れたり。
「ちょっとやめなさいよ。アストールが怒るわよ」
強くなった気なんだろうか? 私がそう言うとピギーは強気に笑って消えた。実際は「俊足で動いているので、人の目には見えない」と本に書いてあった。
「あ、いなくなっちゃった」
「ほこりは、他の層にもいるからまた会えると思う」
「そっか」
ずっと一緒にいるわけじゃないんだ。
「じゃあ、俺たちも七層目に行こう」
「うん」
七層目は曇り空のような天井と深い森だった。手前のほうで人の声とモンスターの唸り声がする。正面の道の先では、パーティがホーンライオンとホーンハイエナを相手にしていた。
「ここからは、複数相手にするんだね。危険が増すね」
「本当だ。声も近くから聞こえるから、みんなまだ、手前で狩りをしているみたいだね」
ほこりも複数でいたからな。右の道を行ってみると、同じようにホーンヒヒと対戦しているパーティがいたので、今度は左の道を行ってみたら、また別のパーティがホーンライオンと対戦していた。あの二人はいない。
「あいつら、どこにいるんだろう」
「森の中かも」
「そうだな、ちょっとのぞいてみるか」
「うん」
左の森に入ってみると、すぐに二人の声が聞こえた。
「ホーンライオン強いな」
「おーい。大丈夫か?」
「あ、ルイス! ちょうどいいところへ。手伝ってくれ。ホーンライオンのメスの子連れだ」
見ると、母ライオンがすごい顔で威嚇している。その後ろに子ライオンが二匹いた。私は狩りをする気にはなれなかった……。
「子連れのモンスターを相手にするなんてかわいそうだし、無謀だよ。逃げたほうがいいよ」
「はあ!?」
「そうだな」
ルイスも同意した。二人とも驚いていた。コーネルが焦ってこっちを見た。
「相手はモンスターだぞ。子ライオンも襲ってくるぞ」
そうなのかな? 私は子ライオンを見た。二匹は、状況が分かっていないようなつぶらな瞳でこちらを見ている。
「違うと思う」
「お前、あのつぶらな瞳に騙されるな!」
「危ないから、目をそらさないほうがいいよ」
二人は本当、危なっかしいな。ロブが見ているからいっか。ルイスが落ち着いて言った。
「もうそろそろ時間だから帰ろう」
「うん。寄るところがあるし」
「そうなの?」
ルイスが聞き返したが、ここでは言わなかった。コーネルが言った。
「おーい、お前ら友達じゃないのか」
「明日元気なら話を聞いてあげる」
「縁起でもないこと言うな!」
「危なくなったら、撤退するんだぞ。じゃあな」
「薄情者が!」
私たちは二人を置いて森を出た。ここは他の層と比べて騒々しかった。私たちは階段を上り、喧騒から遠ざかった。




