23、新しい作戦
「ねえ、挟み撃ちしない? ルイスが中に入って、道のほうに追い立てて、出てきたところを私が仕留めるのは?」
「いいね」
今は私も武器があるので、別行動ができる。早速、ルイスはジャングルの中に入っていった。ルイスには申し訳ないが、まあ攻撃はされないだろう。
少し待つとモンキーの声がして、蔦を持って振り子のように森から出てきた。ちょっと出遅れたが、不意打ちで叩く。ポンッと消えて黄色の魔鉱石とバターを落とした。
「やった!」
キー!
「え?」
喜ぶ間もなく、もう一匹蔦を持って出てくる。
「わっ!」
慌てて叩く。次は茂みから音がしたので、四つん這いで出てきたところをハンマーを持ち換えて叩いた。あっという間に三個取れた。
「ルイス! 取れたよ!」
「分かった~」
ルイスに声をかけると、返事が聞こえた。良かった。それから魔鉱石とバターを拾い集めた。ルイスがジャングルから出てくる。
「ルイスは大丈夫だった?」
「うん。棘のある植物とかあったけど、切って進んだから大丈夫」
「え!? ごめんね!」
「いいよ。切る練習にもなったし」
「そっか。バターは三個手に入ったよ」
「モンキーは集団で行動するから、まとめて取れそうだね」
「そうだね。自分たちの分も取ろうよ」
「うん」
私たちはそのまま奥に進んだ。ホーン山猫は出て来なかった。鎮静効果のある薬草も採取した。
「じゃあまた、ここに入ってみるね」
「うん」
ルイスがジャングルに入って、また追い立て猟をする。私が出てきたモンキーたちを仕留めた。高い位置を飛んできたモンキーは届かないので、反対側のジャングルに消えていった。また三個取れたのでルイスに声をかけた。
「ルイス~、取れたよ」
「分かった~」
ルイスが出てくる。
「また三個取れた。これだと、メイアたちにも一個ずつ渡せるね」
「良かった」
「じゃあ、二階に行って合流しよう」
階段まで戻ると二階に行って、ミサたちを探した。
「こんにちは。どうしたの?」
「こんにちは。バターが取れたから持ってきた」
「わ! ありがとう! じゃあ、お昼にしようか」
「うん」
メイアが元気よく返事をした。二人にバターを渡すと、それぞれ魔法袋に入れた。三人で腰を下ろして昼ご飯を食べる。
「ジョンソンパンの依頼で、三層目でバターを取ってたんだよ」
「そうなんだ。ユミたちも依頼を受けるなんて、様になってきたわね」
えへへ。そう言われて、ちょっとうれしかった。
「ジョンソンパンはサンテスにあるパン屋ね。食べてみたいけど、アイテムバターのパンなら高いわよね」
「でも、バター一個につき、パン三個の物々交換だから、ちょっと高いぐらいの値段だと思うよ」
「パン三個!? もっと高いでしょ?」
「協会の買取も十ルトだから、同じぐらいかな」
「そっか。協会の買取は安いわよね。それなら、直接買い取れば安く提供できるわね」
それから、ルイスのアイドルのコンサートの話になった。ミサはおもしろがり、メイアは目を輝かせた。
「私たち人混みがダメだから、コンサートには行けないけど、アイ君はお店でもいいって言ってくれたんだ」
「今週は無理だったけど、来週の土曜日のランチの予約が取れたから行くことになったよ。空いてれば、平日のティータイムにも行こうかって話になった」
二人は楽しそうに話した。
「今日の帰りは協会に寄って、魔法袋があるか聞いてみるね。あったら買うつもり」
ミサとメイアが顔を見合わせてニッコリ笑った。
「私も聞いてみる」
昼ご飯を食べ終わると、二人と別れて六層目に向かった。
「ユミのドロップ率は百パーセントだね」
「そうだね」
最初は取れなかったけど、自分でも当たり前になってきたな……。ロバのマントのことを思い出した。
「そうだ、五層目に寄って、ロバを試してみようかな」
「いいね。行こう!」
五層目に寄ってみる。少し歩いたら、薄茶色のホーンロバに出くわした。ここは誰もいないから油断していたようだ。ロバは私を見て固まった。両前足を上げると、突然ポンッとマントを出した。
『!』
そしてそのまま後ずさりして、見えなくなった。ロバって、後ずさりするんだ……。
「嘘! マントだけ落としていなくなった!」
「ユミを見て怯えてたな……ホーンロバ界では、ユミは悪名高い冒険者なのかもしれない」
「え? なんか嫌だな。まあ、そうかもしれないけど……対決しなくて済んだからいっか」
この分だとマントは楽勝じゃない? 私はマントを拾った。ルイスの分が取れたな。
「ねえ、俺たちまだ普通ダンジョンには行かないから、おじさんたちにマントを先に渡したらどうかな」
「——そうだね! そうしよう! きっと喜ぶよ」
二人で笑った。私たちは六層目に降りた。ここも湿度が高くてジャングルみたいだ。中央の道を進む。鳴き声や音がしなくてとても静かだ。
「なんか変だね」
「そうだね」
しばらく歩くが何も出て来なかった。中央ゲートまで歩くと向こう側から二人組が現れた。昨日後ろにいた二人組だ。向こうも気がついた。
「あ! お前」
「ユミンスよ」
とりあえず自己紹介した。
「よお、ここは俺たちが全部狩ったからもう何もいないぜ」
『え!?』
私たちは驚いた。二人がすごいってことはないはず……。
「どういうこと?」
「ここは、四体しかいないんだ。ずっと回ってるけど、毎日四体しか出てこない」
「そうなんだ!」
「七層目が混んでるから、俺たち毎日最初にここに来るんだ。そうじゃないと収穫がないからな。まあ、お前らは残念だったな」
「じゃあ、七層目に行くしかないね」
ルイスは私を見て言った。二人はルイスを見て緊張していた。ひそひそと何か話している。
「聖剣の奴、やっぱり迫力あるよな」
「そうだな。ミサが言った通り、怒ると怖そうだ」
二人は私を見て口パクで話しかけてきた。
《お前、言ってないだろうな》
って言ってるようだ。私も口パクで答えた。
《言ってない。忘れてたから、今言うわ》
《やめろー!!》
《冗談よ》
二人が慌てたけど、私の返答にムッとしてルイスに言った。
「お前、こいつのことあまり信用しないほうがいいぞ」
「?」
ルイスは、何のことか分からないという顔をした。今日初めて会った人のことを、ルイスが信用するわけないでしょ。ルイスがふと何かに気がついた。




