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隣りの勇者とパーティを組むことになりました  作者: 雲乃琳雨


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22/28

22、バター問題

 奥さんは店の奥に戻っていった。ミサの話では、


「店の奥で薬草を作ったり、仕分け作業をしているのよ」

「金貨を払うよ」

「ありがとうございます」


 笑顔の店長さんから金貨を受け取った。ミサとメイアに一枚ずつ分けた。


『ありがとう、ユミ』

「うん」


 二人にお礼を言われる。店長さんが驚いて不思議そうな顔をする。


「あれ?」

「今日はミサたちとダンジョンに入ったんです。私たち、このお金で中古の魔法袋を買うことにしたんです」

「そうだったの」


 店長さんはニッコリした。それから缶を指さした。


「これ、また売ってほしいね」

「まて、俺が先だ」


 横からカシムさんが、片手を店長さんに向けて(せい)した。


「そうなの?」

「……えっと、じゃあ取れたときに、交互に持ってきます。私も自分の髪の毛が大事なんで……」

「カロットは髪をむしり取るのよ」


 ミサが補足(ほそく)すると、店長さんは驚愕(きょうがく)した。


「なんて恐ろしいモンスターなんだ……」


 カシムさんは(しぶ)い顔をした。


「このことは、内緒にしてくれ。ユミが危ない目に遭うかもしれないからな」

「あ! そうだね。口コミだけにするよ」

「あと、転売防止も」

「それなら、はげてる本人にだけ売るよ。身分証も提示してもらって、二回目は売らないことにする」


 カシムさんと店長さんで話をまとめていたので、私もちょっと発言した。


「あの、薬局ではお金をたくさん持ってない人でも、買えるようにしてほしいです。買取価格を変えてもいいので」

「そうなの? じゃあ、住んでるところで料金を変えるよ。——君は本当に優しいね。

 効果が高い薬草は病院に回しているんだよ。患者(かんじゃ)さんが待ってるからまた取ってきてね」

「……はい!」


 そっか、ミサとメイアの役に立つだけじゃなくて、薬局の人や、病院、そして患者さんの役に立っているんだ。そう思うと、仕事をしてる実感が()いてくる!

 私たちは店を出た。カシムさんが私を見ている。


「ユミ、お前は本物だな」

「あははは……」


 褒められてちょっと照れ臭かった。ミサが言った。


「じゃあ、私たちはもう一軒納品に行くから」

「俺は協会に戻るよ」


 私はカシムさんにお願いした。


「じゃあ、ダリアさんに中古の魔法袋を三つ注文しておいてください」

「分かった」


 カシムさんは片手を上げて戻っていった。ミサとメイアに手をふって別れた。久しぶりに一人で家に向かう。今日も楽しかったな。ルイスに話すことがたくさんあるよ。



 翌日、ルイスとドアの前で会う。平日会わないと、すごく久しぶりな気がするな……。


『おはよう!』

「昨日はどうだった? ユミが怪我をしてないか、すごく心配だった」


 ルイスが心配そうに聞いてきた。やっぱり保護者だ……あはは……。


「大丈夫だったよ! 上手くいって、一人でも慣れたと思う」

「そうなんだ。良かった!」


 それから、昨日の毛生え薬のことを話しながらダンジョンに向かった。


「え~!! すごい! やっぱりユミはすごいよ」

「あはは」


 照れながら笑った。おじさんたちの名前も教えておいた。


「ルイスはどうだった!? すごく話を楽しみにしてたんだ」

「うん、おもしろかったよ。みんなすごく熱心に応援してた。でも、もう次はいいって、レイたちに断っておいた」

「そうなんだ」


 やっぱり! ルイスらしいな。


「そういえば、冒険者で人気だって言う、男の子を見たよ」

「え~、ライルのことかな?」

「あ~、そんな名前だった。アイドルの護衛の仕事をしていたよ。劇場主と契約していて、ブロマイドも売ってるってレイが言ってた」


 なんだ、休んでる人いるじゃん……。でも、普通ダンジョンで余裕がある人はいいのかな?


「そうなんだね。契約してるのは知らなかった。そういう仕事もあるんだ」

「うん。——コンサートは一時間交代で、いろんなグループが入れ替わりでやっていた。終わった後に交流会があって、見に行ったティアラのナンバーワンの女の子と歩いて現れたから、みんな嫉妬していた。その子は、レイたちの推しとは違うけど……」

「あははは」


 なんだか思わず笑っちっゃた。


「アイドルは男女交際禁止だから。二人は友達までだよね」

「そうなんだ」


 この国の法律で、素行(そこう)の悪い者を舞台に出してはならない。みんながマネをするからだ。

 ルールを守らない子は脱退させられるし、劇場主もルールを守らないと廃業になる。——結局ルールは、自分のためなんだと思うけどな。


「交流会を端で立って見てたら、フルールってグループの子たちから名刺(めいし)をもらったんだ」

「おお~、さすがルイス」

「いや、多分客引きだと思う……。カフェの名前とか書いてあるから。ユミに見せようと思って持ってきた」


 やっぱりルイスは冷静だ……。ルイスが、ポケットから名刺を二枚取り出した。かわいい女の子の写真とグループ名と名前と番号、出ているカフェの名前と住所が書いてある。裏には劇場の名前と住所が書いてあった。


「私もハオ君の名刺持ってるよ。ルイスも今度もらえると思う」

「なんかコレクションできそうだよね」


 ルイスは笑うと、突然真顔になった。


「ユミがアイドルになったら、コンサートには行くよ」


 親馬鹿だよ……もう! 私は恥ずかしくて、ただ笑った。

 ダンジョンに近づくと、ルイスが今日の予定を言った。


「今日はルラさんのために先にバターを取って、午後から六層目に行こうか」

「うん」


 お仕事の依頼だもんね。そうだ、


「余分に取れたら、ミサたちに持って行こうよ」

「うん、いいよ」


 よし、今日はモンキーに挑戦だ!

 ダンジョンに着くと、もちろん誰もいない。門番のおじさんに挨拶をして、三層目に降りた。

 中央の道を進むと、ホーンコヨーテが現れた。でも、近づかずにすぐに逃げた。


「あ、逃げられた。私も、フィンガーレスグローブ欲しかったのに」


 ルイスが苦笑した。また進むと、ホーンモンキーが草むらから顔を出した。でもすぐに顔をひっこめて、いなくなった。


「あれ? モンキーもだ。……このままだとバターが取れないから、まずいね」


 二人で立ち止まって考えた。普通モンスターは、人のエネルギーを取るために寄ってくるし、縄張り意識が強いので好戦的だ。


「ルイスを覚えているのかな? 聖剣と関係がありそう」

「そうみたいだね……」


 聖剣は神聖力なので、魔力とは違う。それが嫌なのかな? 困ったもんだ。


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